SH エピソード4
「に、二体も人型SHがいるわ……それに様子を窺っているの……? SHの知能はほとんど人類と同じようね……」
リーエは気にするような素振りがない。
未だ大量のSFTSと交戦中だった。
クリスは大型コルトを腰のホルスターから抜いた。
建造物の上から、正確にはSHから、様々なSFTSが産み出され、地上へと降り注いでいる。
それは……まだ、様子見といった感じだった。
クリスは、大型コルトで狙いを定める。
「リーエの戦闘能力を知りたいようね……でも、こちらは……二人いるのよね」
大型コルトが火を吹いた。
一体のSHが建造物の上で、頭部が破裂した。
もう一体のSHが屋上の奥へと逃げ隠れた。
「まだSHが一体いるわよ!! リーエ!!」
「了解!! クリス頼んだ!!」
次から次へとSFTSを両断しているリーエ。後方ではジェリーが戦っていた。
その中でクリスは大型コルトとサブマシンガンをソニアルから取り出すと、一人。SHがいる建造物の上へと駆け出した。
階段を探すと同時に、SFTSを片付け。
13階建ての建造物の屋上を目指した。
「フハハハハハ! どうした! やはりこんなものか! それとも、貴様らまだ寝ているようだな!!」
リーエは建造物の上のSHの方へ向かったクリスの方をちらと見ると、迫り来るSTFEをソードエネルギーで両断しては、珍しくクリスのバックアップをすることにした。
「トッ! ハァ――――!!」
アドレナリン超加薬はもうない。
リーエはそれでも果敢に地上を埋め尽くすSFTSを両断していった。
クリスはSFTSで溢れた階段を勇猛に駆け上る。
一階、二階、三階とそれぞれ動物型SFTSが咆哮を上げて、襲ってきた。それらをサブマシンガンで蜂の巣にしつつ。サブマシンガンの弾が尽きると、クリスは大型コルトの弾倉を確認した。
大型コルト。コルト・キングコブラは、回転式拳銃で357マグナムを使う。非常に強力な銃だ。だが、SHに果たして通用するのかとクリスは考えた。
弾倉は後、二つしかなかった。
屋上へのドアが見えた。
緑色のSFTSの血液が大量に流れる階段から、外へ出るとSHが腕組をして待っていた。
「嘘! ほとんど、人間のようね……人語は話せるのかしら?」
「BBBBBBBBU」
まったくわからない言葉をSHが言った。
クリスは冷や汗を掻いた。
何故なら、人語のような言葉を話せるということは、考えることができるということだ。
「冥王星の「カロン」は、ほんとにやっかいね!」
クリスはしゃがんで横に右膝に体の体重を預け、そのまま頭から地面に向かって回転をした。元の態勢に戻ると、SHにはいつの間にか幾つもの弾痕が付いていた。
それは、目にも止まらない早打ちだった。
戦場では、大型コルトもいとも簡単に扱うプロフェッショナルだった。
クリスの胸に光る勲章はそれらを物語っていた。
―――――
「相変わらず美味しいわねー。ねえ、リーエって、どこでこんな美味しい鍋料理を習ったの?」
「我流よ。昔の頃、長期戦になった戦場にスーパーがあって、そこで覚えたの。それで、前線と食事当番をやっていたわ」
今日のテーブルの上の鍋料理は白菜ミルフィーユ鍋だ。
「……そう……」
ヘルシーな鍋には満足したがクリスの呆れた声に、エプロン姿のリーエはニッと笑ってやった。
ここはリーエの家。
エデルとジェリーもいる。
リーエを除いて、しばらくの沈黙の後でみんな口を開けようとしたが……。
結局、何も言わなかった。
今日もリーエの家には暖かい鍋料理の湯気が昇っていた。