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リベンジ・ザ・ウィメンズ  作者: 主道 学


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第一章 SEA HOIE(海の穴)

 満点の星の夜空の日だった。

 

 だが、天空が突然仄かに青白くなりつつある。

 空を見上げていた人々は知っていた。こんな空には、遥か彼方の宇宙からぶよぶよとした青白い生命体。SFTSが星のように飛来してくるのだと……。


 それは人を喰い。

 融合する。

 

 誰かが言った。

 この星を吸収したいのだろうか?

 

 また、誰かが言った。

 SFTSはカロンでは生命が維持できず襲来してくるんだ。何故なら人間そっくりの姿になって、この星ごと乗っ取るつもりなんだよ。


 そして、誰かはこう言った。


 SFTSはただ人間になりたいんだ……。




「ハッ! 遅いぞ!」


 二刀流の使い手のリーエは鼻で笑って、動物型SFTSを瞬時に四つに分断した。

 続いて、間合いを取って少し遠くの生命体にプラズマカートリッジのショットガンを撃ち放つ。


 周囲の空気がビリビリとしてくる。

 SFTSに霧散し放たれたプラズマ弾は無数に貫通していった。


「でやっ! ハッ! トウッ!」


 リーエは次々と二刀を振り下ろし緑色の液体。それはSFTSの血液だ。をまき散らしていく。

 

 ここはノース・クリスタルという特別危険エリア。アベンジャーズ・ザ・ウィメンズの本部からは、かなり北へ行ったところにある。


 大量の緑色の血液が舞っては、瞬時に凍る。次第に極寒の北風と共に粉雪でできた白い空間が覆っていく。ノース・クリスタルは世界中で初のSFTSが発見された超極寒の地でもあった。


「リーエー! 後ろよー! 来たわよー!」

 クリスは自動車で素早いリーエを本部から追ってきたのだ。

「そんなにスピードを出さないで下さい」

 凄まじい北風が吹き荒れる中で、どこからか男の声がした。

「あら? そう? でも、何度聞いても良い声ねー。開発者のエデルは車の声をわざわざイケメンタイプにしたのね。前衛へのサービス精神って受け取るわ」

 クリスは乗っていた新車のハンドルを撫でた。


 クリスの乗る車はAI。人工知能を搭載した自動車だった。

 AIの名前はソニアル。

 エデルがアベンジャーズ・ザ・ウィメンズの研究所で男性タイプの自由思考型自動車を造ったのだ。


「ほんと懐かしい声色ね……」

 クリスはリーエのバックアップを好きでしている。そのため戦場を走り回るリーエをいつも車で追いかけているのだ。


「はっ! とっ! どうした! ノロマめーーー! 遅すぎるぞーーー! 寝ているのかーーーー!!」


 戦闘中は数々の勲章がある軍服姿のリーエは、高圧的で高慢な態度に豹変する。そして、常人離れした集中力で、ソニアルの存在のこともクリスのことも知ることもなく。非常に凶暴な動物型SFTSを次々と両断していった。


―――――


「今日でちょうど。か……」

 リーエは神妙な顔をして少し俯いた。


「そうかしら……? もうそんなに経っているの? それなら今日で……ここへ配属されてから2年目になるわねえ。あなたもだいぶ組織には慣れたようね。リーエ……最初はあなたはまるで狂犬だったわ。誰も手が付けられないほどの……。あ! そっちのことよね……そんなに焦らないの。理想的な男性はまだこの星に必ず生き残っているから……」

 クリスは苦笑いする。


 ここアベンジャーズ・ザ・ウィメンズという本部内で、リーエとクリスは同期だった。アクリル板の床を二人は歩いていた。これから、ここの司令部へと向かう途中だ。


 なんでも、南西部の砂漠地帯に新種のSFTSが見つかったので、帰って早々に呼び出されたのだ。


 リーエは元々、恋人がいなかった。最愛の男性を探しているうちにスカウトされ。リーエとクリスはお互い高い戦闘能力に恵まれ相性も良いので、二人は同じ任務に就くことが多かった。


 通路を行き交う人々は、赤と黒のシックなマントを羽織る軍服姿の女性ばかりだ。

 男は一人もいない。


「そういえば、南西部の砂漠地帯……危険レベルの高いSFTSが度々出るって話よ。あそこでは負傷者が絶えないようね。……こちらの数が減るのは気をつけた方がいいかも知れないわね」

「あら、そうなの」

 リーエはそれを聞いてニッと笑ってやった。


「確か、エデルはまた待機のようだけど、もう一人来るそうよ」

「う! 私。共同作戦は、苦手なのよ……」

 リーエはクリスの発言が冗談だと思いたかった。

「仕方ないでしょう。それに、リーエは突っ走るのが得意でも、力が暴走する薬を使い過ぎよ……アドレナリン超加薬。あまり使わない方がいいわよ」


 エデルはアカデミーを主席で卒業した後、その秀才ぶりを買われ、あらゆる分野の情報収集と機械の専門家の参謀将校からの出だった。いつも研究室内にいるので、みんなからはもう研究室の所長になってもいいのではと噂されている。


「ねえ、リーエ……あなたはどう見ても切り込み隊長よね。昔、デススラッシャーと呼ばれていたんでしょ」

「ああ……」


 リーエは強力な放射型電流で斬るソードエネルギーの二刀流と、プラズマカートリッジのショットガンを扱う。超一流のスラッシャーともデストロイヤーとも呼ばれ、合わせてデススラッシャーの異名を持つ頃があった。クリスは操縦や銃器のプロフェッショナルでリーエのサポート役をいつも買ってでているが、その戦闘能力は非常に高い。


 アベンジャーズ・ザ・ウィメンズの司令部は、明滅する機材に囲まれていた。不思議と機械音はしない。女性だけが所狭しと忙しなく端末を操作している。ここがアベンジャー・ザ・ウィメンズの心臓部だ。その中央の大椅子に華奢な女性がちょこんと座っていた。


 フラングレー司令官だ。


 二人が敬礼をすると、「よく来てくれましたね」とにこやかに敬礼をした。なんでも、フラングレー司令官はフランス人の両親を持つ生粋のフランス人だ。


 リーエとクリスと同じ切れ長な目をした端正な顔立ちだった。滝のように長い赤髪のリーエに比べ、ショートカットのフラングレー。クリスは黒のオールバックだ。

 

 三人で、司令部は今日も凛としているがどこか華やかさがあった。


「来て早々で悪いな……早速、南西部の危険エリアの砂漠地帯へ向かってほしい。場所はサソリの砂粒の谷だ。一人はもう行ったぞ。……リーエ……これを……」

「?」

 フラングレーはリーエにアドレナリン超加薬を5本も渡した。

「フラングレー司令官! そんなに渡してしまっては! 全部使ったらリーエの身体が確実にもたないわ!!」


 クリスが心配して叫ぶ。

 だが……。


「サソリの砂粒の谷で、未確認のSFTSを確認した。我々はそれをSEA HOIE(海の穴)略してSHと呼んだ。一体で大勢のSFTSを産み出すんだ。非常に強力な戦闘能力を持つSFTSだから……二人とも死ぬなよ……これは命令ではなくて……お願いだ」

「SHか」

 リーエは首を鳴らした。


 サソリの砂粒の谷までクリスの運転するオープン・カーでリーエはウトウトとしていた。クリスはそんなリーエを気遣った。度重なる戦闘で疲れているはずだ。それとアドレナリン超加薬は、様々なドーピングの中でも特に人体に負担が多かった。


「ハッ!!」

 リーエは突然起きだし「クリス!! スピードを上げて!!」ソードエネルギーの一刀を抜いた。

 空から超巨大な恐竜型SFTSの首が忍び寄っていた。

「フン!!」

 その首に円を描くようにソードエネルギーを振った。SFTSの血液が高速の車の後方へと大雨のように降りしきる。

「そのまま走って!」


 ソードエネルギーをもう一本抜いたリーエは、オープン・カーから飛び降りた。


「な、何事です?!」

 車のソニエルはさすがに驚いて叫んだ。

「いいのよ、リーエに何もかも任せましょう!」


「多分、あれがSHね」


 クリスは真っ青になってハンドルを操り恐竜型のSHの追跡を逃れようとした。

 だが、恐竜型SHは猛スピードで追ってくる。

 SHの走ることで発生する衝撃振動でクリスの車は上下に激しく弾む。


 リーエはプラズマショットガンでSHの胸や腹へ散弾を撃ちまくるが、プラズマ弾は貫通することなく弾かていった。


「ふん!! 上等だ!! ならば肉弾戦だ!!」


 リーエはアドレナリン超加薬を同時に三本飲んだ。

 爆発的なアドレナリンがリーエの身体に荒れ狂う。猛スピードの車から飛び降りズンッと地面に着地すると。

 SH向かって、二本のソードエネルギーを振りかざした。


「ほらっ! 死ね!」

 

 人間離れした速さで、SHの一本の足を二刀で斬り飛ばした。

 恐竜型SHはバランスを失い頭から地面に突っ込んだ。


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