第二十四話 『海物語 (下)』
――ああ、メンドクセエ。封印とか面倒くせえ。
どうせ原因を根本から断たないと繰り返しになるだけだ。
俺はポキポキと指を鳴らしながら準備体操を始める。
「この子供は何を言っておるのじゃ?」
「アンリちゃんはこういう子なんです」
シルは精霊に向かってヤレヤレという感じで手のひらをひらひらした。
「何かシュールな光景にござるな」
まあ、俺達には見えていないので、まるで彼女がパントマイムをしている様にしか見えない。
「確認します。 ここの地下に古竜が封印されているんでしたね?」
「いやいやいや、古より封印されてきた邪竜ぞ?」
「だから?」
「それに倒すと言っても其方は丸腰じゃろうに」
「それで?」
「其方らは水中で息が出来ぬであろう? もし、ここが壊れるような事があれば窒息死してしまうぞ?」
「大丈夫です。 これがあります」
そう言って水中呼吸のリングのはまった指を見せる。これは念の為にギルドが貸与してくれたものだ。
「はい、論破! ドーーーン!」
そう言って俺は破邪の術を床に放った。
「何が起こっておる。 まさか、こんな子供が結界そのものを破壊したと申すか?」
床が割れ俺が放った光は地下へと伸びていった。その直後、それに応えるかの如く地の底からは甲高い絶叫がビリビリと水を震わせながら伝わってきた。
「もう、どうなっても知らんぞ」
「お姉ちゃんたち、わたしの肩を掴んでいてね」
精霊の投げやりな言葉を無視して俺は二人に警告をする。
そして、地下から吹き上がる物凄い水流に俺たちは流されながら、そいつの到着を待った。
――面白いな。
俺が考えていたのは『どう戦おうか?』ではなく初めての水中戦における感覚であった。これではまともに動けないではないか!
地の底より巨大な水竜が体をくねらせながら俺達に迫る。そして、大きく口を開けると渦を巻いた激しい水流を吐き出す。
「『テレポート』」
転移してそれを避ける。それでも渦によって変化した水の流れの影響でゆらゆらと俺たちは流されてしまうのだ。
やべえな、舐めるとダメージを受けちまいそうだ。
なら……。
「『フォース・ジャベリン』」
俺が四つの巨大な光の槍を生成すると奴に向けて放つと、それらは奴の頭を串刺しにした。
「倒しましたよ」
俺は水竜が腹を見せて海流に流されていくのを確認すると振り向きながらそう言った。
「え? 中級魔法一発で古竜を倒した?」
「私のアンリちゃんは特別なのです」
唖然とする精霊に何故かシルが胸を張ってそう言った。
「フォオオオオオオ、アンリちゃん。 お兄ちゃんですよぉぉぉ」
主の反応を見てセバスチャンはホッと肩を撫でおろした。
ドワーフから送られてきたアンリ人形は彼の目から見ても素晴らしい出来だったのだ。正直、こんな技術力があるなら最初からやっとけよ、なんて彼が思う程であった。
「爺や、この神匠に国民栄誉賞を下賜せよ」
しばらくの間、頬を緩ませながら人形を鑑賞していた皇帝は真顔に戻るとそう命じるのだ。
「お言葉ですが、彼らは皇国民ではございませぬ」
「お前の仕事って俺のこの晴れやかな気分に水を差す事だっけ?」
「大勲位皇華章頸飾にございますな」
「分かってるならいいんだよ。 そうだよ、それ。 兎に角それを与えてやれ」
「直ちに手配いたします。 所で陛下はアンリ嬢の人形をどう使うおつもりですか?」
ユリアノスは彼の問いに答えなかった。答えないと言うよりは絶句していた様にも思えた。
あれ?そういうつもりで作らせたんじゃねーの? なんて彼が思っていると皇帝がガチギレるのだ。
「は? 何それ、お前? もしかして、俺が卑猥な意図で作らせたとでも思っているの?」
「いや、その様な事は……」
「いや、思っているね。 お前の目が雄弁に語っていたね! お前はエロだと語っていたね!」
そう言ってセバスチャンに手袋を投げつける。
「あのな、このアンリちゃん人形をよく見てみろ?」
「はあ……」
「純真無垢そのものだろ? それを何? エロ? この神作品をダッチ〇イフみたいに使うとか……」
ユリアノスはヤレヤレと呆れながらため息を吐くと続けた。
「俺って皇帝じゃん? 皇帝って言ったらあれだよ。 一番、偉いんだよ。 俺の一存で法律作れちゃったりするわけさ。 それがさ、犯罪まがいの事は……、できないよな?」
「それにな。 幼女ってのは邪な目で見るものじゃないんだよ。 愛でるものなんだよ……」
YESロリコン。 NOタッチ。 ユリアノスは確実に紳士であったのだ。
登場人物
アンリ……本編主人公の十一歳の幼女。一人称視点では前世の男のまんまなのだがしゃべる時は猫を被る。全盛期の時の五分の一程度の強さらしいが、それでも規格外に強い。
シル……金髪サラサラロングの巨乳のエルフ。見た目は十六歳程度。頭が少し弱い。メインの仕事は解説役。
カスミ……黒髪ポニテの美乳。刀を使い。最強を目指しているらしい。戦闘狂で『狂犬』の二つ名を持つ。




