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下級巫女です!!  作者: 池中織奈


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楽しく散歩しながら、遠征です④

 近隣の街の騎士に盗賊たちを引き渡したトリツィアは、ほくほく顔である。

 彼らにかけられていた懸賞金も手に入り、何を食べようかとそればかり考えている。


 巫女姫の助言で街まで盗賊たちを引っ張っていくではなく、彼らの引き渡しは街の外で行われた。

 その街の騎士たちは「大神殿の騎士や巫女は凄い」と感心していたが、盗賊たちを捕まえたのはトリツィアたちなので巫女姫に同行するものたちはなんとも言えない顔をしていた。




「巫女姫様、食べ歩きしてきますねー」

「はい。いってらっしゃい」

「いってきます」


 街に辿り着いたトリツィアは相変わらずの能天気さを見せており、もらったお金で何か買いたいのか外に飛び出してしまった。その後ろを護衛騎士であるオノファノがついていく。


 ……ちなみにマオに関しては預けている馬車の中で大人しくしている。トリツィアとオノファノから「暴れたりしないように」と厳しくしつけられて馬車の中でのんびり寛いでいるわけだ。





(トリツィアさんも、オノファノさんもこんな風に魔神への対応のための旅に出ているのに相変わらずの様子。それでいて魔王であるはずのマオはトリツィアさんとオノファノさんのことをよく聞いている。魔神が現れたことをどうでもいいとさえ思っている様子で、大人しくペット生活をしているなんてびっくりする真実だわ)



 巫女姫は大人しく椅子に腰かけている。

 その周りには巫女姫の世話をするためについてきた女性神官たちが控えている。



 巫女姫という立場は、自由とは程遠く、重圧も多い。

 今回の旅だって「もし、魔神をどうにも出来なかったら――」という気持ちが巫女姫には少なからずある。だけれども巫女姫は落ち着いている。



 旅に同行している者たちはそれを見て「流石巫女姫様だ」と騒いでいるが、何のことない。巫女姫がこれだけ落ち着いているのは他でもないトリツィアが居るからである。




(トリツィアさんは目の前で何が起こっても変わらない。どんなものがあってもきっとトリツィアさんの自由を妨げることは出来ない。それこそ魔神だってそうだろう。トリツィアさんにとって私の頭を悩ませている魔神のことなんてどうでもいいこと……そのことを気にしていたら今みたいに能天気ではいられないから。今回私に同行している者たちだって魔神をどうにかしなければという使命感でいっぱいで、誰一人街で何かを楽しもうなんてしない。あのどこまでも明るくて、無邪気な様子を見ているとなんだかとても気が抜ける)




 ――トリツィアという少女は何があっても動じない。それでいていつだってあの調子で、周りから悪感情を向けられたとしても無邪気である。





(トリツィアさんは、ああいう性格だからこそ女神様に気に入られているのかもしれない。一緒に過ごしていると自分が悩んでいることも全て些細なことだとそれを実感させられるから)




 魔神が復活するということは一大事である。それでもトリツィアと接していると、きっとそこまで深く考えなくていいものなのだとそう思う。


 ――そして魔神への対応は自分の仕事なのだから。深く考えずに、だけど真剣に向き合おうとそういう気持ちである。





「巫女姫様、ご夕食はどうしますか? 外に食べに行くこともできますが」

「そうですね。折角なので外に行きましょう」



 そして同行している者たちも、おそらく少なからずトリツィアたちの影響を受けている。

 あの無邪気さにあてられて、リラックスが出来ている。そうでなければ気を張りすぎて、彼らは巫女姫に外に夕食に向かう提案などしなかっただろう。



 騎士たちが調べた上で治安に問題のないエリアを通り、評判の良い飲食店に向かった。





「ここのごはん、美味しいですよ!!」



 そこにはまさかのほくほく顔のトリツィアの姿もあった。

 美味しいものを食べることが好きなトリツィアは、街の住民たちから話を聞いてこの場に辿り着いた模様である。隣にはオノファノの姿もある。二人ともよく食べている。


 目の前に並べられている皿の数は多く、巫女姫は思わず笑ってしまった。



 巫女姫たちはトリツィアたちのすぐ隣の席を案内された。

 お忍びで此処にきているはずなのに、視線を向けられているようで巫女姫は驚いた。しかしすぐに気づいた。



 ――視線を向けられているのは自分ではなく、すぐ隣の席で満面の笑みで食事を取っているトリツィアであると。





「トリツィアさん、視線を向けられていますが何かしましたか?」

「んー? 特に何も特別なことはしてませんよー」

「ひったくりを見つけて捕まえたことが噂になっているからそれでかと」



 巫女姫の問いかけに、トリツィアが答え、それを補足するようにオノファノが口を開く。



 目の前でひったくりが行われ、トリツィアが軽い調子で捕まえたことがちょっとした噂になっていた。

 あとはその少女が楽しそうに街で食べ歩きをしているのも目立つ光景だったため、これだけ視線を向けられているのだろう。




「美味しいー」


 当の本人はそれだけ人から視線を向けられていても全く気にした様子も見せずに、嬉しそうに食事をとっている。



 その様子を見ながら巫女姫も自然と笑みがこぼれてくる。




(やっぱりトリツィアさんについてきてもらえてよかった。トリツィアさんが居なかったら私はこんな風に笑えなかった。食事を楽しむだけの余裕なんて手に入らなかった。きっとトリツィアさんが居なかったら私は旅の間、ずっとこわばった顔をしていて、食事の味も感じずに、暗い雰囲気だったと思うから)



 そんな風に巫女姫はトリツィアがついてきてくれてよかったと思って仕方がないのであった。




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