女神様の生誕祭 ①
トリツィアの所属するドーマ大神殿で、一番まつられているのはいつも彼女が話している女神様ソーニミアである。
力の強い女神であるソーニミアを信仰している信者の数は多い。
トリツィアは、そんなソーニミアとよく会話を交わし、時にはその存在をその身に降ろすという馬鹿げた存在である。
さて、そんなソーニミアの生誕祭というのが神殿では行われる。
この生誕祭に関しては、以前トリツィアが参加していた神への感謝を祝う感謝祭とはまた別である。
屋台などが出るわけではなく、祈りをささげて女神様へのお祝いを告げるといった大人しめのイベントである。
ちなみにトリツィアの誕生日も女神様の生誕祭と近いので、トリツィアは十五歳を迎える。
(女神様、おはようございまーす)
『おはよう、トリツィア。今日も朝から元気ね』
(元気ですよ! 今日は女神様の生誕祭ですからね、沢山お祈りします! おめでとうございます!)
『ふふっ、ありがとう。トリツィアも十五歳ね。おめでとう』
(ありがとうございます!! 今年も女神様は忙しいですか?)
その日もトリツィアは、楽しそうに女神様と話をしていた。
互いの誕生日をお祝いするとなんだか嬉しい気持ちにトリツィアはなる。
『そうねぇ。他の神たちがお祝いしにくるわ。別にそこまでお祝いしなくてもいいのだけど……』
(女神様は人気者なんですねー)
『私はただ力が強いだけよ。神の世界では力が強い存在にはきちんとするものだもの』
(それは地上でもそうですよー。でも女神様へのお祝いは女神様が力が強いからだけではないと思います。女神様は綺麗ですし、優しいですし、私は女神様のことが好きです。皆そういう気持ちを抱いているのかなって思います)
『ありがとう。トリツィア。トリツィアは良い子ね』
今日も今日とて、トリツィアと女神様は仲良さそうである。
(女神様、忙しいの終わってお時間あったらでいいですけど、今年も一緒に女子会しましょうよ)
『もちろんよ! 毎年そんな風に遠慮しなくていいのよ? 私はトリツィアのためなら時間を割くわ』
(クドン様との時間とか作らなくて大丈夫ですか?)
『ええ。クドンには今年もトリツィアとの時間は作るって言ってあるもの』
トリツィアと女神様はそんな会話を交わす。
女神様は忙しい立場である。神界の中でも力が強く、何かあった時に頼られたりもする。
元々異世界の人間だった女神様は、この世界で神になり、それはもう面倒見がよく、周りから慕われているようだ。……という話をトリツィアは女神様の夫のクドン様から聞いている。
生誕祭という特別な日にもトリツィアと一緒に居ようとする女神様は本当にトリツィアを気に入っていた。
尤もこうして女神様がトリツィアと過ごそうとするのは、トリツィアが寿命の短い人間だからかもしれない。
幾ら力の強い巫女であろうとも、どんな存在にも負けないような強さがあろうともトリツィアはただの人間である。
順当に考えれば、その寿命は女神様からしてみればあっという間に過ぎていく。だからこそ、女神様はトリツィアに構っていると言える。
女神様にとってはあっという間の、トリツィアの人間としての一生。
その間女神様はトリツィアと仲良くして行きたいと思っているのだ。
(女神様との女子会、楽しみです)
『オノファノを呼んでもいいわよ』
(流石に出先でもないのに理由もなしにオノファノを自室に連れ込むと色々言われそうですから却下です。それにオノファノを呼んだら、女神様を私に降ろさなきゃならないじゃないですか。私は女神様本人にお祝いしたいです)
『トリツィアは本当に可愛いこねぇ。オノファノに関しては自室に連れ込んでも問題がない関係になればいいのよ』
(女神様、何を言っているんですか……?)
『本当に不思議そうね。トリツィアらしいわ』
女神様としてみれば、トリツィアとオノファノがくっつかないかなと度々こういう発言をしているが今の所その成果は出ていない。
(私も女神様が来るまでに色々すませます!)
『私の生誕祭は、神殿も忙しいわよね』
(そうですよ。女神様を信仰している信者は多いですからね。聖職者以外でも、皆お祝いとか寄付しにきたりしますから、その対応もありますし。あとは炊き出しとかちょっとしたイベントもありますしね)
女神様の生誕祭というのは、神殿にとっては大イベントなので巫女は結構忙しい。下級巫女のトリツィアは雑用などもどんどんこなしていく予定である。あと女神様へのお祈りもいつも以上に力を入れるのが毎年の恒例である。
『お仕事頑張ってね。トリツィア』
(はい。頑張りますよー。女神様、ではまた)
『ええ。またね』
そんな感じで会話は終わった。
トリツィアは女神様との女子会を楽しみにしながら、その日を過ごすことになる。




