魔王の復活。巫女を攫いにきた魔王の運命は……④
「我が……此処にいるのに無視をするとは……」
「うるさいなぁ。不法侵入者がぐたぐた言うのは駄目だよ? そもそも貴方が不法侵入するのが悪いんだからね?」
トリツィアは、朝から魔王の相手をするのが面倒そうである。
魔王の心は既に折れかけているがますますその態度に傷ついた様子である。
魔王はトリツィアがすやすやと眠っている夜の間に結界を壊そうと必死だった。だけど、壊すことは出来なかった。
その時点でもう魔王は、疲れていた。
「貴様は……何者だ」
「私はトリツィア。貴方は、魔王だよね?」
「そうだ……。この我をこうして捕まえておいて……、お前は何を望む? 負けたのだから、お前の望みを叶えてやろう」
プライドの高い魔王だが、トリツィアのことを自分よりも力のあるものであると認めていた。
そしてこの結界を壊すことも出来ず、蔑ろにされていることからも――トリツィアには勝てなそうだと認識している。
疲れ、心も折れかけているが……トリツィアという強大な力を持つ存在に興奮していた。
これだけの力がある者と一緒ならばこの世界の征服だって簡単に出来るのではないか……などとそんな風に思っている様子である。
だからこそ、魔王を捕まえたトリツィアの望みはなんだろうと期待したようにトリツィアを見る。
「望み? ないよ、そんなの」
「なっ……何の望みもなく、我を捕らえたと?」
「不法侵入者だから捕らえただけで、特に他意はない」
「……我の力を使えば、なんだって出来るのだぞ? それこそ、我とお前が強力すればこの世界の全てを手に入れることだって」
「要らない。あと、お前呼びは不愉快だからやめて」
トリツィアは本当に魔王に叶えて欲しい望みなどは全くないのでばっさりとそういう。
何の欲もないというわけではなく、トリツィアは自分自身の力で望みを叶えるような人間であるというただそれだけである。他人の力を借りることなく、自分の力だけでトリツィアはどうにでも出来るのである。
「で、では我をどうする気だ」
「どうもしない。でも貴方、野に放したら好き勝手するでしょ? 好き勝手して、人を不幸にするみたいなことをするのはちょっと嫌。だからずっと閉じ込めておく!」
トリツィア、さらりと朝から魔王のことをずっと監禁しておくことを宣言した。
魔王は外に出ればこのまま、世界を征服しようとするだろう。トリツィアは嫌だと思うので、このまま外に出す気はなかった。
トリツィアの力は強いので、魔王は一生この結界から出れない可能性が高かった。
「なっ……じょ、冗談だろう?」
「私は冗談は言わないよ」
「わ、我は役に立てるぞ?」
「ずっと閉じ込めておくなら声出されるのも面倒だよね。声も聞こえないようにして、邪神と一緒のところに放り込んでおくのもいいかも」
「まま、待て!!」
トリツィアが独り言ように言った言葉に、思わず魔王は叫んだ。
邪神と一緒の所に放り込んでおく、などという気になることを言っていたがそんなことを確認する余裕は魔王にはなかった。
「何?」
特に魔王に興味がなさそうに、トリツィアは魔王を見ている。
その無関心な瞳に、魔王はトリツィアがこのまま魔王を本当に閉じ込めてしまおうとしていることが分かった。
「我は役に立つぞ! おま……トリツィアに下っても良い!」
「んー? 悪いことはしない?」
「……しない!!」
魔王はこの世界を征服しようと思っていたわけだが、そもそもの話、このまま閉じ込めれたままではどうしようもない。
一旦、トリツィアに下る。そして油断させたところをどうにかして、魔王としての本望を叶えようと決意したわけである。
(女神様、魔王を私預かりにしていい? 悪いことしたら私がどうにかする)
『ふふっ、トリツィアは本当に面白いわね。そして慈悲があるわ。いいでしょう。その代わり本当に手に負えなくなったら私に言いなさい』
(はい。女神様)
トリツィアは女神様とそんな会話を交わした。
「じゃあ、魔王。貴方は私預かりってことで」
トリツィアはそう言って、一旦結界を解く。
「でもその姿は、ちょっと大神殿に居るのは困るかな。もうちょっと可愛い姿になろ? そのくらい出来るよね?」
「……ああ」
トリツィアの言葉に魔王は何とも言えない様子で、姿を変える。
ここでトリツィアに反抗するのはまずいと思ったのだろう。そして魔王が変化した姿は、小さな犬のような姿である。
「うん、それならいいよ。魔王呼びもあれだよね。名前つける」
「なっ、ま、待て」
「――ええっと、じゃあ、マオでいいね」
「あ」
……トリツィアが名前を付けると同時に、魔王は縛り付けられた。
力の強いトリツィアが、名付けたこと。そして女神様が魔王を縛った方がいいと決めたこと。
そういうことが重なって、魔王はトリツィアの力によって縛りつけられた。
魔王は縛り付けられると同時に、トリツィアの力の大きさをより一層実感した。
そうして、魔王はトリツィアのペットになった。




