女神様は、割と気軽に訪れる。②
ソーニミアは、美しい女性である。
その艶のある金色の髪は、太陽を思わせる。そして瞳の色は黒である。
ソーニミアは、創世神話にも出てくる女神様である。本来ならば、そう簡単に会える存在ではない。聖職者の中には、生涯をかけて女神の声を聞きたい、女神の姿を一目みたいと思っているものもいる。
そんな存在からしてみれば、こうしてソーニミアが部屋に訪れるという状況に目を見張ることだろう。
「女神様、相変わらず綺麗ですねー」
「ふふ、ありがとう。トリツィアも可愛いわよ」
ソーニミアはそう言いながらも、トリツィアの用意した座布団に腰かける。女神様が座布団に腰かけているなんてなんともまぁ、シュールな光景である。
「女神様、今日も色々持ってきたので、いっぱい食べて飲みましょう」
「ええ。今日は女子会だもの。沢山、お話しましょう」
女神様はにこにこと笑いながらそんなことを言う。トリツィアに楽しそうに話しかけるその姿は、女神には決して見えない。まるで対等の友人に話しかけるような感じである。
ちなみにソーニミアは、こうしてトリツィアと話すことを女子会と称している。
「ぷはー、ビールは美味しいわね!!」
「ふふ、女神様は美味しそうにお酒を飲みますよね」
「美味しいもの! 女神としての業務は結構色々あって疲れるのよねー。こういう時に酒を飲むのが一番なのよ!!」
神々の世界で主流であるというグラスにビールと呼ばれる飲み物を注いで、一気飲みしているソーニミア。
ちなみにビールという飲み物は、人々の住む世界ではそんなに広まっていない。一部の地域で飲まれているらしい。
トリツィアはまだお酒を飲んだことはないが、女神様がこんな風に美味しそうに飲んでいるのをみると俄然お酒というものに興味を抱いている。
「トリツィアは、ジュースを飲んでるのね」
「うん。そうです。それにしても女神様は本当にお酒好きですよねー」
「ふふ、私の故郷では疲れた時にビールを飲むものなのよ!! 仕事終わりとかに飲んで、ぷはぁってするの」
「女神様の故郷って、異世界って言いましたっけ? 私、女神様から異世界の話を聞くの好きなんですよね。面白いし」
「本当にトリツィアはいい子よねー。私が異世界から来たただの人間だったって知っても態度変わらないし、こんなにお酒飲みまくってる姿を見せても変わらないし」
「だって女神様は女神様じゃないですか」
トリツィアにとって、ソーニミアは友人で信仰する女神様である。それはどんな姿を見せられたとしても変わらない。
そもそもの話、トリツィアは人が自分の期待するものと違うからと言って責めるのは何だか違うと思っている。勝手に期待しておいて、勝手に失望するなんて身勝手な行為である。
トリツィアも巫女という肩書で、勝手に期待され、勝手に想像されることがあったため特にそう思っている。
だからというのもあるだろうが、トリツィアは女神様がどういう姿を見せたとしても失望などすることは全くなかった。寧ろ親しみやすいと思ったし、こういう女神様のことを好ましく思っている。
「ふふふ、トリツィアは良い子ねぇ」
「女神様、ちょっと酔ってます? また酔わないようにするの切っているんですか?」
「ええ。だってトリツィアの結界があれば間違いは起こらないだろうし~。何より、私はトリツィアの所では楽しく女子会したいもの~」
ソーニミアは女神様なので、お酒に酔わないようにすることも出来る。威厳を保たなければならない場面では、お酒を飲んでも女神としての威厳を保っているものである。
ただトリツィアとは親しい仲なので、そういうのを切っているらしい。
グラスを片手に、顔を赤くしている女神様は色っぽい。同じ同性であるトリツィアもドキリとするぐらいである。
「女神様、これ、食べます? 美味しいですよー。騎士に街で買ってきてもらったんですよ。最近流行ってるんですって。前に女神様から聞いた女神様の故郷で食べられたって料理と似てるなぁって思って。私も初めて食べるんです」
「ふふ、これは、肉じゃがっぽいわ! 美味しそう!!」
「女神様が喜んでくれてよかった。早速食べて……ってあつっ」
「あらあら、大丈夫? 口の中を冷やしましょう」
「うん。でもアツアツでも美味しい」
芋や肉などを煮込んだものを食べて、トリツィアは美味しいと笑う。
「美味しいわね。トリツィア、これ、食べる?」
「わー、ありがとうございます。私、これ好きです」
トリツィアは女神様から、神界で食べられている食べ物をもらってにこにこと笑っている。
「女神様は最近どうですか? クドン様は相変わらずですか?」
「ええ。クドンは相変わらずモテモテなのよ! 私の旦那なのに、きゃーきゃー騒がれるともーってなるわよねぇ。でもクドンって今日もね……」
少し酔っ払い気味の女神様の惚気の言葉を、トリツィアは穏やかな笑みで聞くのである。