魔王の復活。巫女を攫いにきた魔王の運命は……②
「ふふふ~ん」
「トリツィア、今日も元気そうだな」
「元気ですよー」
「……『巫女姫』様には失礼がないようにな」
「失礼なことはしないですよー」
神官長であるイドブは、今日もご機嫌な様子で鼻歌を歌うトリツィアを見て一言だけ注意をする。
トリツィアがアドレンダと手紙のやり取りをするようになってから、イドブは益々心配していた。
総本殿で何があったかもわからないまま、トリツィアは巫女姫と仲良くなり、手紙のやり取りまでしている。
……その手紙の中身は流石に読んでいないが、イドブはどういうやり取りをトリツィアがしているのかとハラハラしていた。
トリツィアがなぜご機嫌だったかと言えば、今朝の朝食が好きなものが多かったからである。
巫女姫からの手紙を読み、魔王がこの地にやってくるかもしれないことは理解している。ただそのことはトリツィアにとってどうでもいいと言えることだった。
正直魔王が来ようが、来たら対応するだけのことである。
幸い、巫女姫から好きにしていいという免罪符はもらっているので本当に好きにするつもりだ。
(女神様、魔王がやってきたらぶっ飛ばしますよ!)
『ふふっ、トリツィアがどんなふうに魔王を相手にするか楽しみだわ』
(でも魔王って呼ばれるぐらいなので、とっても強かったりするんですかね?)
『トリツィアが本当にどうにもできない相手だったら私を降ろしていいわよ。そしたらこっちでどうにかするもの。流石に私が倒すのは駄目だけど、追い返すぐらいはいいもの』
(駄目なんですか?)
『まぁ、神の世界にもルールがあるのよ。魔王が現れた時には基本的に勇者に神が力を貸して倒してもらうのが定石ね。ただ長い歴史の中にはトリツィアのような例外もいるから、勇者以外が魔王を倒すこともあるけれど』
(へぇー。そうなんですね)
トリツィアと女神様は今日も楽しそうに会話を交わしている。
割と好き勝手しているように見えるソーニミアだが、一応神の世界のルールは守るつもりらしい。
『とはいってもトリツィアに勝てる魔王なんて居ないと思うわ。トリツィアがどうにもできない魔王なら勇者だってどうにも出来ないと思うわ。勇者といえど、トリツィアのように力はないと思うもの』
(それなら安心ですねー。魔王が世界を支配するみたいなのは嫌なので、ぶっ飛ばしますよー。女神様も、魔王がのさばるのは嫌ですよね?)
『そうね。面白くないわ』
(なら、やってきたら頑張ります! 仮に私の方に来なくて、巫女姫様を攫うなんて自体になったら勇者任せでいいですかね?)
『いいんじゃないかしら。でもトリツィアが助けに行きたいなら行くのもいいと思うけど』
(魔王が私の方に来るなら邪神の時と一緒で誰にもばれずにぱぱってどうにか出来るけれど、巫女姫様が攫われたら大事ですよねー。でも流石にあれだけの騎士が周りにいれば魔王が来ても攫われないものですかね?)
『いいえ、トリツィア。こういうのはね、どれだけ守りを固めていても攫われるときは攫われるのよ。そして攫われた存在を勇者が助けてラブロマンスが生まれるとかもよくあるのよ』
(それって職務を全うできてないってことですよね。守れなかった騎士は処罰が凄そうですね)
『確かにそうね……』
(それにしても勇者って攫われた存在と恋仲とかなるものなんですか?)
『そうね。吊り橋効果というやつだと思うわ。危険な状態で芽生える恋的なものよ』
トリツィアは女神様と魔王と勇者についての話をしている。
女神様のためにも魔王が来たらぶっ飛ばそうと、トリツィアはやる気満々である。ちなみに魔王のことはオノファノにも伝えていない。トリツィアにとって魔王が来るかもしれないことは、些細なことである。
『魔王はトリツィアが封印した邪神を復活させたいと思っているかもしれないわね』
(結構力弱まってますよね?)
『そうね。大分力が弱まっているし、トリツィアの封印は魔王じゃとけないと思うわ』
(それにしてもなんで力が強い巫女を魔王は攫おうとするんですか?)
『魔王にとって力の強い巫女は強敵だもの。早めに攫っておこうとしているのよ。あとは力を取り込むため』
(取り込めるんですか?)
『そうね。魔王は周りの力を取り込む能力を持っていたりするもの。……ただトリツィアの力を取り込もうとしたら流石に魔王も大変だと思うわ』
(そうなんですか?)
『ええ。トリツィアの力は本当に強いもの。流石にこれだけ強い巫女の力を取り込めば、魔王は浄化でもされそうだわ』
(じゃあ取り込ませるのもありですか?)
『いえ、一応万が一取り込めた場合を考えるとやめた方がいいと思うわ。何が起こるかわからないし、トリツィアの力を取り込めたらとてつもない魔王になってしまうもの。取り込まれた際にトリツィアがどうなるか分からないもの』
(じゃあ実力行使した方がいいですね!!)
そんな会話を楽し気にするトリツィアと女神様。
――魔王が実際にやってきたのは、その二日後の夜だった。
魔王を実力行使でどうにかしようとしている巫女がいるとは知らない魔王は、大神殿の中へと忍び込んだ。




