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下級巫女です!!  作者: 池中織奈


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上級巫女になんてなりません! ①




「トリツィア、巡礼の旅で何をやった?」

「何をって、普通に聖地巡礼しただけですよ!!」



 さて、トリツィアは巡礼の旅から戻ってきた後、いつも通り下級巫女としての日々を謳歌していた。

 

 トリツィアにとって久しぶりの巡礼の旅は大変楽しかったらしく、にこにこしながら帰ってきた。

 本来、巡礼の旅というのは厳しいものである。神殿の中でぬくぬくと守られながら暮らしている巫女が、多少の危険も伴う旅路を行く。そういう旅なのだが……、トリツィアにとっては危険など全くなく、楽しいものであったらしい。


 トリツィアは巡礼の旅から帰ってきた後、女神様にもどれだけ巡礼の旅が楽しかったかを報告している。女神様もトリツィアのことは結構見守っているため詳細はなんとなく把握しているが、トリツィアから話を聞くのが楽しいのか、相変わらずビールを飲みながら聞いていたものである。




 トリツィアは、この日、神官長であるイドブから呼び出しを受けていた。




「……トリツィアの言う普通は、皆の普通とは違う」

「考えてみても普通に巡礼しただけですけどねー」

「……はぁ」



 イドブは小さくため息を吐きながら、にこにこと笑うトリツィアを見る。




(何かやらかしていることは確実……。そうでなければこんな報せが届くはずがない)



 イドブはそんなことを思いながらちらりと手紙を見る。

 ――それはドーマ大神殿を含む神殿を統括する総本殿から届いた手紙である。





「……トリツィア、総本殿から呼び出しを受けている」

「どうしてですかー?」

「トリツィア……おそらく巡礼の旅で何かしらやらかしたことが耳に入ったのだろう。『純白の巫女姫』が会いたがっているらしい」

「巫女姫様って、神様の声を聞けるって人ですよねー?」

「そうだな。だから、トリツィア、大人しく一緒に向かってもらうぞ」

「わかりました! 巫女姫様に会うの楽しみです!!」

「……なるべく大人しくするんだぞ? くれぐれも失礼のないように」

「分かってます!」

「それとトリツィア、上級巫女へと昇格したくないなら大人しくしなさい」

「上級巫女になるのは嫌です」

「だったら本当に大人しくしなさい」



 イドブにはそれしか言えない。


 トリツィアは異常に力を持つ巫女である。普通とはかけ離れていて、不思議な雰囲気を持ち合わせ、それでいてどこでも生きていけるような少女である。


 だからこそその力が広まれば広まるほど、彼女が望むような下級巫女生活はおそらく遠ざかる。


 イドブからしてみても、トリツィアに暴れられるのは遠慮したい。

 



(……無理やり上級巫女になんてしたら、トリツィアは嫌がるだろう。トリツィアは此処での暮らしが嫌になれば、すぐに出ていくことが目に見えている。信仰深いからこそ、下級巫女の生活を気に入っているからこそトリツィアは此処にいるのだから。巫女姫の前でもトリツィアはおそらくいつも通りだろう。……丸く収まってくれればいいのだが)



 イドブはトリツィアの規格外さを理解しているので、トリツィアを刺激したくなかった。

 しかし巫女姫からの手紙を無視するわけにはいかない。


 幸いにもトリツィアは巫女姫に会うことに関しては前向きである。無理やり連れていくなど出来ないのでイドブはそのことはほっとしている。


 ……しかしその場で上級巫女になることを求められたらトリツィアはばっさりと断るだろう。

 そうすればどうなるのだろうか……とイドブは心配していた。




 ちなみに、トリツィアはといえばそんなイドブの心配など全く知らない。



(巫女姫様ってどれだけ綺麗な力を纏っているんだろう? 神様と対話ってどの神様と対話しているのかな? 女神様から話はあんまり聞いたことないから、女神様とじゃなさそう。でも上級巫女は面倒だから、言われたら断ればいいよね!)


 ……普通ならば、上からの申し出を断るなんて出来ないものである。

 下級巫女というのは神殿内でも身分が低く、発言力などない。しかしトリツィアは下級巫女という立場でも断るだけの力は持っている。



 そもそもの話、女神様はトリツィアがそういう柵のある立場に、本人が嫌がる立場におさまるのを望んでいない。

 トリツィアののびのびとした暮らしを、楽しそうに過ごす日々を見るのが女神様は好きである。


 なので、結局のところ上が幾らトリツィアを上級巫女にしようとしたところで、本人が望まなければその立場にトリツィアがおさまることがないことは確定事項である。




「楽しみだなぁ」



 トリツィアはなんで呼び出されたか? というのは不思議に思っているものの、巫女姫と呼ばれる存在に会えることが楽しみであった。


 そして当然、それにはトリツィアの護衛騎士であるオノファノも同行することになった。

 巡礼の旅での出来事から呼び出されたと聞くと、「そりゃそうだろう」とオノファノは納得していた。



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