下級巫女、出張に行く ⑨
11/12 二話目
蛇の串焼きを食べつくした後、トリツィアとオノファノはとある村を訪れていた。
その村の住民たちは大雨の中、一滴も濡れていない二人に驚いた様子だったが、あまり人の訪れないその村で二人は受け入れられた。
村の中の空いている一軒家を借りて、一夜だけその村で二人は眠った。
翌日になるとすっかり雨があがっていたので、トリツィアとオノファノはまた次の場所へと目指す。
「なんだか良い感じに神気を感じる気がする」
「……それって神が何か干渉しているってことか?」
「うん。北の方でその気配がびんびんする。何かちょっとした神様の奇跡があるのかもね」
トリツィアは北の方を見ながらそんなことを言う。
神様の奇跡というのが、この世界ではそれなりに身近にある。だからこそそういうちょっとした奇跡は起こりうる。ちなみにトリツィアは何気なく、女神様と一緒に会話を交わしたりしているがそれはとてつもない奇跡である。
「直近で起きた奇跡なら見に行きたいなぁ。いい?」
「ああ。問題ない」
「ふふふ~ん。どんな奇跡が起きたのかな? 凄くワクワクするね」
トリツィアはワクワクしている。そしてその奇跡の場にすぐに駆け付けたい様子だった。オノファノはトリツィアの頼みを断る気は全くないので、すぐに頷いていた。
そしてトリツィアとオノファノは、今いる場所から北――川が続く先へと駆けだした。
北へ行けばいくほど、血生臭い匂いがする。
……何らかの戦いがこの場であったのだろうか? というのがトリツィアとオノファノには想像が出来た。
人の死体が見えた。
服装は騎士ではない。どちらかというと、夜盗か何かだと言えるだろうか。
「夜盗が何かを襲ってから返り討ちにあったってところかな? それにしても徹底的にやられているね」
「そうだな。結構悲惨な最期を迎えているな」
「うん。神が気に入った子に力を貸したとかかな? 気に入った子の危機なら神だって何かしらしたくなるもんね」
人の死体が立ち並ぶ場所で、トリツィアとオノファノはひとまず進んだ。
ただ戦いの中心であった場所にはもう誰もいなかった。その場には神気が微かに残っているので、この場で何らかの神の奇跡が行われた。
「残念、もう去ったあとみたい」
「流石に夜盗たちの中心でゆったりはしないだろ。それより死体どうする?」
「そうだね。一応埋葬はしようか。このままだと魔物よってくるし」
そう言う会話を交わした後、トリツィアとオノファノは死体を埋葬しておいた。
(ここでの奇跡、何が起きたかどこかで知れたらいいなぁ)
トリツィアはそんなことを考えながら楽しそうである。ちなみにおそらく女神様に聞けば簡単にわかるだろうが、敢えてトリツィアは聞かなかった。
二人はその後、もう少し北へと向かう。その街は信仰の盛んな街のようだった。女神像のようなものがいくつも並べられていて、その像を見てトリツィアは嬉しそうに目をキラキラさせる。
「沢山の神様の像が並んでいると壮観だよね! 祈っておこう」
トリツィアは祈りをささげることも好きなので、祈りをささげておく。そのタイミングで女神様が声をかけてくる。
『トリツィア、出張は楽しい?』
(女神様、楽しいですよ。それにしてもこの街って凄く像が沢山ありますねー)
『そうね。とても信仰心の強い街の領主が続いているのよ。この街は。過去に神から助けられた逸話があるみたいだから』
(そうなんですねー。その領主様にも会ってみたいかも。会えるかな?)
『会えると思うわ。巡礼の巫女のことは受け入れる領主みたいだから。トリツィアは特に信仰深い巫女だから、気が合うんじゃない?』
(じゃあ、挨拶行きます!!)
これだけ街に入ってすぐに神像が沢山並んでいるのは領主一家が代々そういう家だかららしい。
トリツィアはぜひとも領主に会ってみたいなと思った。なので、女神様の言葉を聞いて領主のもとへ行ってみることにする。
オノファノに声をかけてから領主の館に行ってみる。
女神様の言うとおりに、領主の館に向かえばすぐに迎え入れられた。
トリツィアが若くして信仰深い巫女であること、巡礼を真摯にこなしていること――それらを見て受け入れてくれた。
「少人数での巡礼の旅は大変だろう。泊っていくといい」
その領主はそんな風にほがらかに笑ってそう言い切った。
寧ろたった二人で巡礼の旅をしている二人に同情しているらしい。……ただトリツィアがあっけからんとして「二人の方がやりやすいので問題ないです」と言い切ったので、何とも言えない表情を浮かべていたが。
あとトリツィアとオノファノが同じ部屋を希望したことも心配されたが、「俺はトリツィアの護衛ですから」とオノファノが言い切ったので、同じ部屋になった。
「領主の家って、ベッドふかふかだね!!」
トリツィアは嬉しそうににこにこと笑いながらベッドに寝転がる。その様子をオノファノは優しい目で見ているのだった。




