下級巫女、出張に行く ③
「うーん、良い天気だね」
「そうだな。日差しが強い」
「ふふ、ちゃんと日に焼けないようにしているから問題ないでしょ?」
「ああ」
トリツィアとオノファノは走っている。
天気は晴れ。上空には太陽が昇っている。普通にその状態で走っていれば疲労するだろうが、そこはトリツィアがガードしているので、その心配もない。
普通なら馬車で移動するところを、二人は走り回っている。トリツィアの走りについていけるだけでも、オノファノもなかなか異常である。
「街までどのくらいなんだっけ?」
「あともう少し走ればつくだろう。でも到着前にはいったん止まれよ」
「なんで?」
「そのまま街に突撃したら明らかにびびられるだろう」
「えー、そうかな?」
「そうだぞ。俺だったら、人がものすごいスピードで街に飛び込んできたら警戒する」
「そっかー。びっくりされない方がいいし、一旦止まる方がいいね」
「ああ。……俺が止めなきゃそのまま突っ込むつもりだったのか?」
「うん!」
「……本当に何かする時は、俺に言えよ? 勝手に何かやらかしたら困るからな」
オノファノは呆れたような表情でトリツィアを見ている。
トリツィアは久しぶりの出張の旅だと嬉しそうな顔をしている。
大神殿で過ごす日々も気に入っているが、こうやってのびのびと過ごすのもトリツィアは好きである。それに前の出張の時よりも、トリツィアは強くなっているので自由に動き回れるのだ。
オノファノはトリツィアの暴走を自分は止められるだろうかと……そんなことばかり考えている。
(トリツィアが生き生きしているのは可愛いし、見ていて嬉しい。けれど……俺が止められないだけ暴走されるのは困るんだよな。トリツィアが外の世界が楽しいと実感して、俺が手が届かないところに行ったら困るし……。まぁ、その辺はトリツィアがやると決めたら止められることはないからこの旅を楽しんだ方がいいか)
オノファノはそんなことを考えながらも、トリツィアについて走っている。途中で魔物を見つける。
「オノファノ、あれ、どっちが狩る?」
「じゃあ、俺が」
「じゃ、おねがい」
目の前にいた牛の魔物は、トリツィアとオノファノが走り回っているのを見て目を大きく見開いていた。魔物にまで驚かれている。その驚いている魔物に向かってオノファノはとびかかり、剣で一閃する。
「おー、オノファノはやっぱり剣技が結構凄いよね」
「トリツィアも武器使えるだろう?」
「ある程度は。でも、単純な剣技だと全然オノファノには勝てないと思うよ。全部合わせてならどうにでもするけど」
「まぁ、そうだな。この魔物の死骸どうする?」
「埋めるか、燃やすか、持ってくか」
「まぁ、売れはするもんな。神官長からお金もらっているけど」
「でも稼いでから、神殿に渡せばいい感じじゃない? 女神様への貢物として色々集めるとか」
「……トリツィアが本気出したらきっと、凄くやばいもの持ち帰るだろう。大神殿が大騒ぎになるぞ」
「それはあんまりいやかもー。こっそり女神様へのプレゼントにしようかな。あとレッティ様にも」
にこにこしながらトリツィアはオノファノにそういう。結局邪魔だということで、牛の魔物は燃やした。
トリツィアとオノファノは、その後も走っていた。
街の手前で一旦立ち止まる。そしてそこで一息つく。
「もう街見えるね」
「結構先だけどな。トリツィアは目もいいよな」
「私、結構遠くまで見えるよ! オノファノも視力よくない?」
「俺もいい方だと思う」
トリツィアとオノファノには見えているが、街はもう少し先である。
走って向かうと驚かせてしまうので、そこから二人は歩く。街道を歩いていると、馬車が後ろからやってきた。
「乗るかい?」
そう問いかけられて、トリツィアとオノファノはお言葉に甘えて馬車にのることにした。
トリツィアという聖職者と、護衛の騎士一人だけなので二人は大変心配された。神殿によくしてもらえてないのではないか、他の神殿に助けを求めるのはどうか……などといらぬ心配をされるものである。
これもトリツィアがか弱い見た目をしているからということだろう。そしてオノファノも若い騎士なので、神殿で弱い立場だと思われているらしい。
トリツィアを知るものたちは、トリツィアとオノファノのことをそういう風に心配することはあまりない。それだけ彼女たちを心配する必要はないという事実を知っているからである。
トリツィアが「自分の意思なので問題ないでーす」と軽い調子で笑うので馬車に乗っていた商人は驚いた顔をしていた。
そして商人たちの馬車と一緒に、トリツィアたちはその街へと足を踏み入れるのであった。
「まずは神殿に挨拶にいこー!」
「ああ」
トリツィアの元気な言葉にオノファノは頷くのであった。




