食べ歩きに勤しみます ①
「今年もお祭りの時期だね!! 女神様に沢山お土産話しないと~」
トリツィアはご機嫌な様子で、幼馴染の騎士であるオノファノにそう告げる。
何ともまぁ、満面の笑みである。トリツィアに惚れているオノファノはそんな無邪気な笑みを向けられ、いつもの如くドキリッとさせられていた。もちろん、トリツィアには全く他意はない。そもそも恋愛に今のところ関心のないトリツィアはただたんに幼馴染に笑みを向けているだけである。
――トリツィアたちのいるドーマ大神殿のある街では、毎年大規模な祭りがおこなわれる。
それは神への感謝を伝えるための感謝祭である。トリツィアはその感謝祭で毎年食べ歩きをしているものである。巫女は大神殿の中で完結した暮らしを基本的にはしているが、そういう時ぐらいは羽目を外しても許されている。
度を越えたことは許されていないが、トリツィアに関しては大神殿にやってきてからというもの、祭りでも大体食べ歩きなどしかしていない。神官長たちに関してもトリツィアがそのような行為をするはずがないと分かっているからこそ、それも許可されている。
あとそもそもの話、本気でトリツィアが何かをしようとしたところで止める力は誰にもない。そういうトリツィアの特異性を理解しているものは、下手にトリツィアに手を出そうとはしない。
「トリツィア、楽しむのはいいが、暴走はするなよ?」
「何それ。私に対して信頼ないなぁ。何もしないよ? あ、レッティ様も一緒に行きたい気もするなぁ。一日ぐらい私に時間使ってくれたりするかな? レッティ様ももうすぐ神殿からいなくなっちゃうし」
上級巫女のレッティは、もう少ししたらドーマ大神殿から出ていき、嫁ぐことになっている。
レッティが幸せになるのは嬉しいけれども、いなくなるのは寂しいなとトリツィアは思っていた。
レッティとは長い付き合いなので、それなりに情もあるし、トリツィアはレッティのことが好きだった。
「誘えばレッティ様なら頷いてくれるだろうな。でもレッティ様にも予定があるんだから、許可されない日ぐらいは俺で我慢しろ」
「ふふ、オノファノは私の食べ歩きに毎年付き合ってくれているものね。今年もよろしくね!」
毎年のようにトリツィアはオノファノを連れてお祭りでの食べ歩きを楽しんでいる。男女が二人で出かけるというので、周りからしてみればデートにしか見えないものあるが……トリツィアに関しては一切そういうことを気にしていない様子である。
オノファノ一人がトリツィアと二人で出かけられると喜んでいるだけだ。
オノファノの気持ちを知っているものたちは、オノファノのことを応援している。なので周りは周りで「どうにかトリツィアにオノファノの良さを理解してもらうにはどうしたらいいか」という話し合いがそれなりにされていたりする。
ちなみにオノファノの気持ちを知っている女神様もこそっとそういう会話を聞いていたりするわけだが、流石に女神様にまで応援されていることはオノファノも知らない。
トリツィアは巫女服のままいつも食べ歩きをしている。通常ならば危険があるからと護衛も多くつけられるが、そこはトリツィアなのでオノファノと二人でも許されているのだ。
「トリツィア、レッティ様も一緒に行くのならば護衛も多くつけられるぞ」
「私とオノファノが居れば、レッティ様は危険になんかきっとならないよ?」
「それでもだ。トリツィアは護衛が沢山いるの苦手だろう。レッティ様も一緒に行くなら護衛をふりきるなよ?」
「私を何だと思っているの? 流石にオノファノと二人の時じゃなきゃそこまで無茶しないよ。レッティ様は普通の上級巫女だし」
トリツィアは満面の笑みでそう言うが、トリツィアは色んなことに巻き込まれることが多いので本当に護衛を振り切ったりしないだろうかなどとオノファノは考える。
レッティはもうすぐ嫁ぐ身である。
そのレッティに何かがあったら大問題だ。特に女性というのは、何かしらの事件に巻き込まれれば尊厳を傷つけられる。レッティは貴族の令嬢なので、より一層である。
なのでレッティには多くの護衛がつけられるものだ。
「レッティ様、綺麗だし狙う男たちも多くいるかもしれないもんね! レッティ様が一緒にお祭りに行ってくれるなら私はレッティ様を守る騎士をするの!」
「なんか小説でもよんだか?」
「うん!! あのね、かっこいい騎士がお姫様を守る系の小説を読んだの。私もお祭りに行くならあの騎士みたいにレッティ様を守るわ」
自由気ままにドーマ大神殿で過ごしているトリツィアは時折小説などから影響を受けたりもする。
レッティは貴族の令嬢で、上級巫女という立場なので守り甲斐のあるお姫様に相応しいだろう。
その後、トリツィアが一緒にお祭りに行こうとレッティを誘えば、レッティは笑みを浮かべて「もちろん、ご一緒しますわ」と頷いてくれるのであった。




