力があるというのは、それを使う義務があると言うことではない ⑦
「お姉さんたちって、何者なの……?」
「ん? ただの下級巫女と、護衛騎士だよ!」
「……トリツィア、ただのではないだろう。トリツィアは大分おかしい」
トリツィアとオノファノはシャルジュの案内の元、『ウテナ』の本拠地へと向かっていた。
オノファノが神官長に許可をもらい、こうして赴く事になったのである。
そもそもトリツィアはやると決めたら止まらない性格をしているので、神官長もトリツィアとオノファノのことを止める気はないようだった。
さて、一緒に向かっているわけだが……、トリツィアとオノファノは歩きにくい道でもすたすたと進んでいる。ほとんど走っているような状況である。
シャルジュも『ウテナ』の一員として身体を鍛えているものの、そのシャルジュ以上に運動能力があるトリツィアとオノファノが不思議らしい。
「あ、やっぱりお姉さんって、巫女の中でも中々おかしいんだ」
「おかしいぞ。トリツィアを巫女の基準にはしない方がいい。普通の巫女はこんな風に身軽ではないからな」
シャルジュの言葉にオノファノはそう答える。
「お兄さんも大分おかしいよね? おかしなお姉さんにすぐについていけているし」
「俺は鍛えているから」
一般人からしてみれば、トリツィアもオノファノも大分おかしいものである。本人達はまだまだだと思っている様子だが、普通に考えておかしい。
そんなおかしな二人は、これから『ウテナ』の本拠地に向かおうとしているのに相変わらずの様子である。
そして森や山などを越えて、『ウテナ』の本拠地へとたどり着いた。
『ウテナ』の本拠地は周りから隔離され、結界が張られている様子である。トリツィアは並外れた巫女としての力を持っているので、その閉ざされた場所もすぐに発見できる様子だ。
「ふーん。凄い技術使っているね。私は分かるけれど、見つけられない人は結構見つけられなさそう」
「お姉さん、此処もすぐわかっちゃうの? お姉さんって本当凄いね。お姉さんを敵には回したくないよ」
「私は敵対されなきゃ何もしないわよ」
トリツィアの規格外さにシャルジュは、少しだけ青ざめている。
疫病をどうにかするために、トリツィアの事をここまで連れてきたものの、トリツィアはこの『ウテナ』をどうにかするだけの力を持っていると思うと、色々思う所があるようである。
トリツィアはもちろん、『ウテナ』に危害を加える気は全くないのでシャルジュのことを全く気にしていない様子である。
「じゃあ、さっさと治しましょうか」
「えっと、お姉さん、巫女の力って使うの疲れることでしょ? すぐにやってくれるの?」
「私を甘く見ないでよね。私は疫病をどうにかするぐらい出来るわ! というわけで、さっさとやるわよ」
トリツィア、やると決めたことはさっさと終わらせたい性質である。
そういうわけで、トリツィアは疫病にかかっている人々のエリアへと足を踏み入れようとする。
「お、お姉さん!! 幾ら巫女でも、疫病のエリアに何も装備せずに行くのは危ないよ」
「私は大丈夫だよ。女神様が私に、そういうのは効かないって言ってたし。あ、でもオノファノはそのままだと危ないよね」
慌てた様子のシャルジュに軽い調子でそう言ったトリツィアは、オノファノに向かって手をかざす。そして疫病にかからないように何かしたのだろう。満足そうに頷く。
(え、これで疫病に耐性が出来たってこと? お姉さんが規格外すぎる。というか、何でこのお姉さんはこれで下級巫女なんだ……? おかしいと思う)
シャルジュは『ウテナ』の一員として様々な経験をしている。だからこそ、トリツィアがおかしいことが分かる。
下級巫女を名乗っているけれど、その名に収まるような存在ではトリツィアはない。
誰よりも巫女の力を持ち、誰よりも女神様と交流を深めている。それがトリツィアである。
「じゃあ、オノファノ、ついてきて」
「ああ」
そして疫病で苦しみ、自ら命を絶つことさえ考えていた『ウテナ』の面々の前にトリツィアは現れる。
彼らはシャルジュの連れてきた巫女であるトリツィアに驚いた顔をしていた。
まさか本当にシャルジュがこの『ウテナ』の問題を解決できる巫女を連れてこれると思っていなかったようだ。
まだ年若いトリツィアのことも、シャルジュに絆され無理をしてきたのではないかと心配した様子で声をかけていた。
けれどもトリツィアときたら、「じゃあ、さっさと治すわ」と簡単に言い切るのである。
『ウテナ』の面々は何を言っているんだと言う様子だったが、トリツィアは有言実行した。すぐにその場で、巫女としての神聖な力を行使して、その場に蔓延っていた疫病を払ってしまったのだった。
すぐに身体が元気になっていた『ウテナ』の面々は、その奇跡に驚愕し、そして現実を理解するとトリツィアに跪くのであった。




