表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
下級巫女です!!  作者: 池中織奈


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/230

王子様、来訪する ④


「貴様、あの愛らしい巫女を俺から隠していただろう!」

「はい?」

「王子である俺と会わせないようにするような嫌がらせをするなど、やっぱりこの大神殿は腐っている! 俺が成敗してくれよう!」

「……何をおっしゃっているのか分かりませんわ。その愛らしい巫女とは何方でしょうか?」



 そう口にしながらも、レッティはトリツィアのことかなと嫌な予感をひしひしと感じていた。

 あれだけ関わらないようにしていたにもかかわらずどこかで見かけてしまったのだろう。


 そのことが分かって、レッティは頭を抱えたくなった。



「あの藍色の髪の美しい少女だ! わざわざ夜に護衛を一人のみつれて移動しなければならないなど、彼女を迫害しているのだろう!」



 その言葉にレッティは、トリツィアのことであろうと遠い目になる。



(トリツィアさんは確かに可愛い見た目をしているけれど、まさか一目惚れでもしてしまったのかしら。やめてほしいわ。トリツィアさんにはオノファノさんがいるのに。そもそもトリツィアさんの異質さを考えれば一人でも問題はないというのに。とはいってもそれを言ってもどうしようもないわよね。いっそのこと、会わせるのがいいのかも。会わせないと殿下は暴走しそうな気がするわ。……それでトリツィアさんが無礼な真似をしてもそれはそれね)



 このままトリツィアに会わせないという選択肢をすれば、目の前の男が暴走することは目に見えていた。

 そしてその結果、もっとひどい結果になるのならば今すぐ会わせた方がいいのでは? とレッティは考えた。トリツィアと付き合いの長いレッティは、目の前の王子様のことはともかくとしてトリツィアのことはよくわかっている。



 トリツィアは嫌な事は嫌だとはっきり言い切る子である。幾ら権力でどうにかしようとしても、あれだけ力を持つ巫女が好きにされるわけはない。


「ではトリツィアさんを呼びましょう」


 正直トリツィアと王子様を会わせてどういう化学反応を起こすのか、レッティには想像もつかない。きっとろくでもない事にはなるだろうとは思っているが、それでもトリツィアを呼んだ。




 さてトリツィアがこの場に来ると知ったジャスタは胸を高鳴らせていた。

 それは昨夜見かけたトリツィアが、実際の本人はともかくとして神秘的だったからである。


 美しく可憐な巫女。

 ジャスタの中では、トリツィアは虐げられている巫女であった。

 王子である自分に会うことも許されずに、慎ましく生きている巫女。



 恐らく下級巫女であろう。

 そもそも神殿に仕えている巫女というのは、上級巫女以外はあまり良い扱いはされないものである。

 だからこそ、下級巫女であるトリツィアが酷い扱いをされていると思い込むのも、ある意味正しい常識である。




(下級巫女だからと、あんなに可憐なのにこんな所にずっといるなんて……。やはり貴族の前に出させてもらえなかったのだろう)


 トリツィアの力は本物だ。驚くべき程に巫女としての力が強く、女神に愛されている。

 だけれども、その力が弱い巫女の方が圧倒的に多い。力を持ちながらも、上級巫女になることを望んでいないトリツィアは大分珍しい分類である。




 ジャスタは、巫女はさっさと良い結婚相手を見つけた方が幸せになれると思っている。ある程度の力を持っているのは知っていても、本当に国を揺るがすほどの強い力を持つ巫女が実際にいるなどとジャスタは思っていない。

 そういう本当の力を持つものは少ないのだから、それも当然であると言えるだろう。





(あの子をこの腐った大神殿から救い出して、この腐った大神殿を断罪する。完璧な計画だ。まだこの大神殿がどんなふうに腐っているのかは調べられていないが、虐げられているあの子を証拠として……どうにでも出来るだろう!)



 ジャスタはトリツィアに一目惚れしてしまったのもあり、大分頭が緩くなっていた。

 元々結構考えなしに動く方だったのだが、今は特に変なテンションになっている。




 トリツィアは虐げられていて、それを証拠として大神殿を断罪するまで妄想している。そういうことは普通に考えて難しいが、頭が少しお花畑になっている。




 そんなことを考えているジャスタの元に、トリツィアが到着する。




「失礼しまーす」



 正直王子様に対しての好感度は全くないので、何で呼ばれたんだろうって思いながらトリツィアはレッティの後ろから出てくる。緩い感じである。


 脳内では、レッティ様を困らせる奴はどうにかする! と物騒なことを思っていたりするが、そういうのを理解しているのはオノファノとレッティぐらいだろう。





「君! こんな腐った大神殿で虐げられていて可愛そうに! 俺が助けてやるからな!」

「は?」




 ジャスタのそんな言葉に、トリツィアは理解出来ないとでもいうように冷たい声を上げた。

 そして何言っているのこいつ? とでもいう風にレッティを見る。レッティは溜息を吐いていた。



 そんな二人に何を思ったのか、ジャスタはトリツィアに告げる。



「この女にいじめられているのだろう! 俺が君をここから連れ出して助けるからな」


 そう言った瞬間、トリツィアの目が恐ろしい程に冷たく光った。








 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ