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下級巫女です!!  作者: 池中織奈


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異世界から何か来るそうですよ? ⑧



「何も分からなかったー」


 そう言いながらトリツィアはオノファノと合流した。別行動をして、異音について調べてみたわけだが彼女は全く解明することなど出来なかった。

 それもあって少しだけがっかりした様子で、彼女は甘えるようにオノファノの肩に自分の頭を乗せた。



 ……彼女は結婚すると決めてから、こういう風に自分からスキンシップを取ることも多くなった。彼の反応を楽しんでいるというのもあるが、女神様から結婚するならこの位の触れ合いは当たり前だと言われたからもある。

 それにトリツィア自身、こうやってオノファノと接することが嫌ではなかった。寧ろ楽しいとさえ思っていた。



 べったりとくっついたトリツィアを前にオノファノは当然緊張したりしているが、なんとか平然を保ちながら答える。



「そうか。俺の方も詳しいところは分からないな」


 そう言いながらオノファノはトリツィアの頭を撫でる。彼女からはいつでも頭は撫でていいと言われているので、よく頭を撫でるようになっていた。



 人気のない宿屋の前で、そんな風に彼らは仲良く会話を交わしていた。周りに誰も居ない状況なので特に視線も感じていない。独り身の人からしてみればさぞ、羨ましい光景ではあろう。




「オノファノにも分からなかったの?」

「そうだな。一回ぶらぶらしただけだと正直何が原因かぴんと来ない。ただ俺が気づかなくて、トリツィアが気づいたこともあるだろうしどういう風に感じたかとか教えてほしい」

「んーとねぇ、やっぱり空から音が鳴っているんじゃないかと思ったよ。でも私が巫女の力ぶつけても何も起こらなかったんだよね。私が力を向けるよりもずっと先とかなのかなぁ? でも空の先ってなんなんだろうって分からなくて」



 トリツィアはオノファノに身体をくっつけたまま、疑問を口にする。その視線は空へと向けられている。



 まだ朝は訪れていない。空は少しずつ明るさを取り戻そうとしているが、まだまだ暗い。そんな空からは相変わらず時折、音が聞こえてくる。






「ずっと先の空の向こうか……」

「オノファノは何か思いついている?」

「……一般的に空の向こうに何があるかというと、神様達だなと思っただけだ」

「んー? 神界のこと?」



 オノファノの言葉を聞いて、トリツィアは考え込むような仕草をする。



 彼女は他でもない女神様ととても親しくしている。彼女自身は神界に実際に足を踏み入れたことはないものの、その話についてはよく女神様から聞いている。特に女子会の時などは、そんなことも話していいのかと不安に思うような神界の話でさえも聞かされているぐらいである。


 ただこのような異音を人々に聞かせるような話は聞いたこともない。本当に神界が関わりがあるのだろうか? とそんな疑問でいっぱいのトリツィアである。




「そうだな。俺みたいにこういう音の原因が神なのではないかと思っている者はおそらく少なからずいるだろう。それもあって神官長は調べて欲しいといっていたんだろうし」

「んー? 女神様に聞いてみるのが早そう? お忙しいだろうから、すぐに呼びかけに答えてはくれないかもしれないけれどちょっと話しかけてみる!」



 トリツィアはオノファノにくっついていたまま、そんなことを言ったかと思えば心の中で女神様へと話しかける。。






(女神様ー! ちょっとだけ聞きたいことがあるのですけれど、もし時間があったら私と話してくれませんかー?)



 女神様はいつだって気軽に彼女に話しかけ、彼女に会いに来る存在であるが神として忙しくしていることをトリツィアは知っている。



 最近の女神様は神界でやるべきことがあるのか、そこまで多く彼女と会話をしているわけではなかった。








「すぐには女神様から返事がないかも? それにしてももし神が関わっていることなら、どういった理由でこんなことをしているんだろう?」

「さぁ? でもこれだけ何度も音が鳴り響いているということは意図的なものもありそうに俺は思うけれど」

「神の一柱がわざわざ私達にそういう音を聞かせているなら問題だよ? でも基本的に神様ってそういうことをしないはずなんだよね。神託とかの形で私達に関わることはあるだろうけれど、ただ音を聞かせるだけって意味が分からないもん。それに神様が私達の事を思って接触しているならもっと不快にならない音を鳴らそうとしているはずだし、こんな音にはしないよ!」



 トリツィアは女神様を一番信仰しているが、他の神々に関しても巫女としてきちんとした信仰心を持っている。

 それでいて女神様からも神々の話は聞いているので、まともな神様ならこんなことをしないはずという信頼感があるようだ。



 第一神であるというのならば、ただ下界に不快な音を響かせるなどというしょうもないことはしないはずであるとそう思っているのだ。




「俺もそう思っている。わざわざ神様達がこんな音を鳴らす意味はないし。ただ何か関係はあるのかもなと思っただけだ」

「そっかぁ。神様に関係があって、音を鳴らすって場合だと、なんだろうね? 全然想像出来ない」



 にこにこしながらそう口にして、そのままオノファノにくっついたままのトリツィア。



 そんな彼女の心に、直接一つの声が響いた。



『まぁ! こんなにくっついていてとても良いわね。あなたが幸せそうだと私は嬉しいわ』



 それは、女神様の心からの嬉しそうな声であった。




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