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下級巫女です!!  作者: 池中織奈


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異世界から何か来るそうですよ? ④




「ふんふんふ~ん」


 トリツィアは出張先へと向かい、ご機嫌である。

 ちなみに街に到着し、既に宿は取ってある。……これまで同じ部屋を気にもせずに取っていたのだが、これから結婚する身なので二人の間ではひと悶着あった。とはいえ、結局トリツィアに押し切られて、同じ部屋になっている。



 トリツィアからしてみれば、別に結婚する予定なので問題が起こっても良いとでも思ってそうである。

 オノファノは色々気にしていそうだが、トリツィアはこの調子である。





「朝からご機嫌だな?」

「うん。だって楽しそうじゃんか」



 にこにこと微笑む彼女はいつも通りである。その様子にオノファノは何とも言えない気持ちと、こうして一緒に出掛けられることを喜ぶ気持ちと両方でいっぱいである。



「オノファノは私とぶらつくの、楽しくない?」



 一瞬、顔を顰めたオノファノを見逃さなかったトリツィアである。その顔を見上げるように見つめている。




「楽しいに決まっているだろ」

「んー。じゃあ、なんでそんな顔?」

「トリツィアと同じ部屋で落ち着かなかったから」

「今までと一緒だよ?」

「恋人同士だと変わるだろ…。トリツィアは意識していないのかなって」

「そんなことないよー? 女神様から色々聞いているから恋人同士で何をするかとか分かるよ?」




 トリツィアは軽い調子でそう言い切ってにこにこと笑っている。

 無邪気だけれども、彼女は……滅多に嘘などつかない人間であるというのをオノファノはよく知っている。だからその言葉は本当だろうというのは分かる。




「そうか…」

「うん。私に手を出したいのー? それなら別に結婚するし、出してもいいよ?」

「……俺は、ちゃんと結婚してからがいいとは思っている。そういうのはちゃんとしておきたい」

「そっかー。オノファノは真面目だね?」

「トリツィアは……思ったよりもそういうことを軽くしようとするな……」

「まぁ、結婚するって決めた相手とそういう恋人同士で行うことをするのって普通のことでしょ? だからね、いいかなーって」



 面白そうに笑うトリツィアは、やっぱり軽かった。

 オノファノはこういうトリツィアの様子に呆れながらも、だけどそういう彼女が好きだとそんなことを改めて思う。


 彼はそう思うからこそ、にこにこしているトリツィアに向かって口を開く。




「とりあえず、結婚してからな」

「そっかー」

「残念そうな顔をするなよ。俺はトリツィアのことが好きだから、そういうのは大切にしたいんだよ」

「そっかー。なら、いいか。その時を楽しみにしてるね?」



 トリツィアは悪戯な笑みでそう言って、楽しそうな様子である。そんなトリツィアに向かって、オノファノは手を伸ばす。




「ほら、とりあえず今から街に行くんだろう」


 そう言って伸ばされた手に、彼女は当たり前のように手を重ねた。彼らの恰好はいつもの巫女服や騎士服とは異なり、完全にデートの服装である。

 今日の彼女はスカートとシャツを身に纏った、少しだけ大人っぽいコーデでまとめている。これらは大神殿で暮らす巫女達が選んでくれた。あとは女神様の意見も聞いているが。

 



「神官長から頼まれた異音については調べるとして」

「そうだな。そこはちゃんと調べないと。遊びに来たわけではないし」

「うん。そこはちゃんとするよ。でもやっぱりこういうときに楽しむのも大事だなって思っているよ。美味しいご飯のお店とか聞いたんだー。ちょっと高いところもあるけれど、こういう時ぐらいいいかな?」



 宿の一室から出て、手を繋いだまま彼女と彼はそうやって会話を交わす。

 宿の従業員の女性には「仲が良いわね」と微笑まれる。




「はい。仲良しなのですよー」



 そしてトリツィアは恥ずかし気もなく、そう言って笑った。その様子を見て益々、女性は笑みを深める。



 そして宿の外へと出れば、そこには沢山の人々がいる。

 彼と彼女が訪れたこの街はかなり栄えていると言えるだろう。あとは有名な観光スポットもあるのでそれを目当てに此処に来ているのだろう。



 異音騒動があるにも関わらずこれだけ人が沢山いることにトリツィア達は驚いた様子を見せていた。







「異音ってどのへんでするんだっけ?」

「えっとな、確か……」



 トリツィアの疑問に、オノファノは一瞬悩んだ様子を見せて神官長から聞いた異音の情報を口にする。




「時間的には明け方などが多いはずだ。だからこそ余計に不気味に思われているとは言っていたかな。後は昼間にも時々、そういうのが起きているとか」

「ふーん。確か広場とかの人がいるエリアと、あとは裏通りだっけ?」

「ああ。そうだな。広場だとちょっとした異音ぐらいは気のせいかなと気づきにくいけれど、裏通りは特に不気味だって話」

「人が居ない場所で音が鳴っただけでそんなに不気味?」

「トリツィアは逆に異音の原因なんだろうって楽しむタイプだろうけれど、そうじゃない人も当然居るからな」




 そう口にしながら、まず彼らが向かうことになったのは人が沢山集まっている広場であった。







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