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下級巫女です!!  作者: 池中織奈


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面倒な話が舞い込んできたようです ④



 トリツィアは大神殿内にある図書室を忙しく動き回っている。

 沢山の本を手に抱え、それぞれ本の整理をしている。埃をかぶっていれば、それを綺麗にする。

 この場にあるものは基本的に神に纏わる物ばかりである。それ以外にも巫女が学ぶための教材が沢山入れられている。歴史書なども多くある。


 トリツィアは両親から文字を教わっていたので、元々本を読むことが出来たが平民の出で文字を読めない巫女もいたりもする。そういう存在には、それぞれ昔から居る巫女や神官が教えるものである。





『大神殿には最近刊行された本もすぐ入るわよね』

(提携しているらしいですからねー。あと昔いた巫女の一人がとても本が好きだったみたいで、すぐに新しい本が入るようになっているみたいですよ。そうじゃなければここまで大神殿に本は増えなかっただろうから、感謝ですね)



 女神様はトリツィアが本の整理をしている様子を見るのをとても楽しんでいる様子である。彼女の頭に響く女神様の声は、何処までも軽く楽し気だ。



『これだけ本が沢山あるとワクワクするわよね』

(女神様も結構、本を読むのとか好きですよね。巷で人気の本の内容とかも知ってますし)

『ええ。興味深い本は読みたくなるものだもの。神界で刊行されたものも、面白いものがあるのよね。今度、女子会をする時に持っていくわ』

(はい。ありがとうございます。神様が関わって作られた本って、一見するとただの本なのに神気を纏っているから、あんまり外に出せませんし)

『そうね。トリツィアが持って歩いているだけで気づく人は気づくでしょうし』



 ただの本とはいえ、神様の関わって作られた物は特別なものだ。中身が当たり障りのないものだったとしても、見た目がただの本に見えなかったとしても――それでもそれが特別なものだと気づけば、要らぬ争いになる可能性が高い。

 トリツィアにとってはただ女神様から借りたものという認識でもそういうことが起こりうる可能性があるので、借りた時は扱いを慎重にしている。




(神様目線での女神様の様子を知れるから、神界出の本ってとても良いなと思うのですよね。私から見た女神様とも、皆から見た女神様とも違う視点ですし。そういう女神様の新たな一面を見れると私は嬉しくなります)

『ふふっ。少し恥ずかしいけれどあなたが楽しそうならば貸した甲斐があるわね』

(そういえばこの前の、私と女神様でちょっと遊んで変装した件、早速本に書かれているみたいですよ。刊行が速すぎて本当にびっくりでしたよ)

『それだけ周りにとって奇跡的で、残さなければならない光景だったのでしょうね』

(早く忘れてくれた方が嬉しいんですけどね!)

『きっと忘れないと思うわよ。寧ろこのまま姿を現さなければ色んな憶測が話されるでしょうね。それもそれで私の大切なトリツィアが周りから良い様に噂されるのは嬉しいけれども』



 トリツィアと女神様は、世間話を続けている。


 トリツィアが女神様と共にやらかした一件に関しては、早速記録として残されていた。女神様を信仰する者たちにとって、その身に女神様を下ろすことの出来る特別な存在というのはそれだけ神聖視されるものなのだろう。

 トリツィアはまだ刊行されたばかりのその本を読めていないが、大神殿の図書室にもその本は入っている。……神官や巫女、それに神殿騎士達もこぞってその本を読んでいる。



 彼らもトリツィアが特別で、規格外の少女だと知っていたとしてもそこまでの存在だと大多数は知らない。

 そもそも実際にトリツィアのやったことを正しく把握しているのは本当に一部だけである。神官長もなんとなく察してはいるが、正確に知っているわけでもない。そういう状況なので、まさか女神様を下ろした存在がトリツィアだと知らない者達はこぞってその本を読み、様々な噂をしているのである。


 ――正体が秘匿されているからこそ、その正体を知りたいと思うもののようだ。

 あの少女の正体を探らなければと動いている存在はそれなりにいる。



 ちなみにだが『ウテナ』のシャルジュはそれがトリツィアだと悟っていた。彼女のことをよく観察していたりするので、気づいてしまっているらしかった。そして家族達からは「何か大変な事態になったらいつでも受け入れるからこちらに来るように」と察しているような手紙も届いていた。






(ばれないようにしないとですねー。王子様の持ってきた面倒事をどうにかしないと、結局変わらない事態にはなりそうですから、その辺、早く巫女姫様達から返事来ないかなーって思います)

『そうね。トリツィアの平穏な生活のためにも早くしてほしいわ。あの子に早くトリツィアに返事を返すように促そうかしら』

(女神様、そんなことで神託使おうとしないでくさいよー。巫女姫様は忙しいですし、距離があるから少し遅れているだけだと思います! あとヒフリーも顔広そうなので、連絡しておきました)

『勇者ね。凄く頑張っているみたいよね』

(はい。活躍しているという噂は沢山聞きます)



 トリツィアは女神様の言葉に応えながら、勇者であるヒフリーのことを思い起こす。





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