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下級巫女です!!  作者: 池中織奈


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188/230

下級巫女と、女神の寵愛を得ているという少女の話 ⑮



 笑っているようでどこか冷ややかで、その真意を探ろうとしている様子である。

 その存在は、自身を女神ソーニミアだと告げ、まっすぐに――女神の寵愛を受けていると豪語しているジュダディのことを見据えている。

 その場にいる者達は、それが女神だと本能で理解をしてしまっている。



 ――それでいてその女神のオーラを前に、彼らは動くことなど出来ない。その圧倒的な力を前にすれば、動くことなど出来ないのは当然である。



 ジュダディをこれまで擁護していた者達も、本物の女神降臨を前にすればぐうの音も出ない。

 神託を嘘だと声高らかに言っていた者達だって、女神がそれを肯定しているので顔色を青くしている。





「本当にこの程度で動くこともままならず、話すことも出来なくなるというのに私の寵愛を受けているなどと勝手に口にするなんてどうしようもない人間だわ。私に身体を貸してくれているこの子は凄いのよ。私を前にしても、いつも通りだもの」

「まぁ、女神様、私のことはいいのです。それよりもこちらの女神様の寵愛を得ていると自称していた方たちはどうしましょうか」

「あら、折角だから私の自慢の、大切な友人の存在をこの場に居る愚かな者達に刻み付けてやろうと思っているのよ。こうして私の存在をその身に下ろすことが出来ているだけでも素晴らしいことなのよ? この人間は……そうね、今回、私が下りてきたことで間違っても私の寵愛を得ているなんて自称することは許されなくなるわ」

「ふふっ、ありがとうございます。それもそうですね。偉大なる女神様の名を騙るなんて本当に許されない重罪ですもの。でもあれなのですよね、あの少女に関わっている悪しき存在がいるのでしょう? それに関してはどうするおつもりですか?」

「そうねぇ……。あの人間の少女を私が寵愛しているとそういう風に言わせていた理由も気になるもの。騙らせるというのならばもっと相応しい存在を見つけ出せばよかったのに」




 その場に現れた存在の口が、次々と異なる言葉を発する。同じ口からの声なのに、明らかに喋っている者が違うのが口調などからも分かる。

 それこそ、その身体に二つの存在が同居しているからこそのことである。




 女神と親しくしている少女と、そして女神。

 この場でその二つ存在だけが、ただただ声を発している。



 他の者達はその場で口を開くことも、立ち上がることも出来ない状況がただひたすら続いている。

 その状況は女神が居なくなるまで、延々と続くことだろうと――そう予想していたが、そんなことはなかった。




 


「女神ソーニミアっ!!」




 突如として、ジュダディの口から怨嗟の声が聞こえてきた。

 そこに何かしらの存在が、おり立ったことは確かだろう。ただしあくまでその依り代となっているのはジュダディである。……その身体を立ち上がらせることなど、出来ない。這いつくばったまま、女神の方を見据え、睨みつける。




「あら、女神様。何か来たようですわね」

「ええ。そうね。あの少女の身体では、あの存在を下ろすのは難しいわ」

「何か副作用でも?」

「ええ。身体が壊れることは間違いないわ。流石に……取り返しがつかないことは駄目ね。結界を張ってくれる? 私があの身体から引き離すから」

「共同作業ですね。よろこんで」



 何かしらの存在がジュダディの身体へと下り立ったのを見ても、全く動じた様子のない女神を下ろした少女と女神。



 二人は軽い調子で会話を交わすと、すぐさまそれぞれ行動を起こす。右手はジュダディの身体を囲うように、結界を張る。それは神の座から下りた存在を引き離した際に周りに迷惑が最低限しかかからないようにである。

 幾ら神の座を下ろされたとはいえ、それでも神に近い存在であることは変わりがないのである。



 そして左手はジュダディに手をかざしている。

 ジュダディの身体を使っているその存在は、這いつくばったまま身体を動かし、その身体で無理に神力を使おうとしている。




「やめなさい。あなたが利用したその少女が死に至るわ」

「はっ、それがどうしたという――」



 女神様が注意の言葉を口にすると、ジュダディの身体を使っている存在は反論をしようとする。

 そこに声をかけるのは、女神を下ろした少女である。



「それはいけませんわ。女神様、私がどうにかしても?」

「ふふっ、問題ないわ」




 神の座を下ろされた存在をどうにかすると事も無げに問いかけ、女神は了承する。

 そのようなやりとりが同じ口から発され、ジュダディの身体を使っている存在は反論と反抗をしようとして――そして、次の瞬間にはそれが出来なくなっていた。



 その女神を下ろした存在が、手をかざした。それだけでジュダディの身体を使っている存在は声さえも発せなくなった。反抗も出来ない。




「女神様が身体に下りてくださっているからこそ、力がみなぎってくる感覚がありますわ」

「ふふっ。そんな風に言えるのはあなただからよ」


 そう言った女神は、そのままジュダディの身体からその中に入っていた存在を引き離した。




「ではこの存在は一度他の神々と話し合いをした末に、どうにかしておくわ。さて……」



 そして女神は周りを見渡し、口を再度開く。




「この少女は悪しき存在に悪用されていたわ。とはいえ、自分の意思で私の寵愛を得ていることを騙っていたのは事実。きちんと、罰してはおくように。それが出来ないようなら、私の方から神罰を下すわ」

「女神様が見ておられなくても、私が目を光らせておきますのでくれぐれも甘い判断は下しませんように」




 ――女神とその身体に下ろしている存在がそう言い切る。



 そして次の瞬間には、その場からその存在は消えていた。まるでまやかしのように消えていった。とはいえ、その場で立ち上がることもできない人々と残っている神力からそれが夢ではないことは分かるだろう。




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― 新着の感想 ―
責任の押し付け合いが始まりそうな気がするけど、まぁ女神様は勿論ですがイツメンには関係ない事ですし問題は無いかなー
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