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下級巫女です!!  作者: 池中織奈


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魔族が暴れているらしい ⑤

 マオはそれからジンと共に、様々な場所を訪れる。その間に、魔王と魔神の配下を名乗る者たちは多くいた。

 マオはその者たちに、後から連絡するから待てと平和的に解決していた。




 逆にジンはと言えば――、



「これ以上好き勝手するな。我は訳があって人を侵略することはやめた。支配など、我はせぬ。それを踏まえた上で行動せよ。我の名前を使って勝手をするようならば全員殺す」



 と、力づくで言うことを聞かせていた。


 ちなみに魔神であるジンに関しては、マオよりも長い間この世界に姿を現わしていない存在であったためその名を口にし、この世界で好き勝手している者はあまりいない。魔神という存在のことを知っていたとしても、それが実在するとは想像できない者の方がずっと多いのだ。

 





「……ジンは自分を慕う連中のことをどうするつもりなんだ? 全員のことを殺すつもりか? ご主人様は下手に人を殺すことも嫌がりそうだが」

「念のためそういうことが起こった時には主に聞いてから動くつもりではある。それに主は我らに対してはちゃんと言い聞かせるように言っていた。ならばその命を奪うよりは先に奪わずにどうにか出来た方がいいだろう」

「それはそうだとは思う。ご主人様は身内に甘そうだから、我らが少し何か起こしても許してはくれそうだが……。しかしそれに甘えて変なことをすれば問答無用で我らは一生外に出ることが叶わなくなるだろう」




 マオとジンはそんな会話を交わしている。

 彼らはトリツィアのペットとして過ごしているからこそ、彼女のことをそれなりに理解している。

 だからこそ、彼女がどれだけの力を持っていたとしてもまだ十代の少女であるということも頭に置いている。なんだかんだトリツィアは親しい者達には甘い一面はある。自分にとって許せない行為をされれば問答無用でどうにかするだろう。それでも――ペットという存在は彼女にとってはある意味家族のようなものなのだ。





 トリツィアという少女は、本気でマオとジンのことを永遠に閉じ込めてしまうことも可能だろう。

 例えばその寿命を全うした後でさえ、それは解けることはないだろう。彼女はそれだけ力を持つ存在なのだから。




 マオとジンの命はまさしく彼女に握られている。

 ペットにされることがなければ未来永劫閉じ込められたか、その命を奪われたのかのどちらかであったことは明白で、だからこそ彼らは彼女に逆らおうなどとは思っていない。いや、逆らっても意味がないというのが正しいだろうが。






「それにしても魔王という肩書をこれほど疎ましくなる日が来るとは思ってもいなかった」



 マオは何とも言えない表情でそう言い切る。

 それは紛れもない彼の本心であろう。マオはトリツィアにペットにされるまでは間違ってもこんなことは考えてはいなかった。


 自分が魔王であることに何の疑念も抱かずに、ただ自分の力を思うかままに使用し、そしてこの世界を支配しようなどとそういうことしか考えていなかった。寧ろそれこそが正常なことだとそうマオは思っていたわけである。自分こそが一番強く、自分の野望は達成されるはずだとそう思っていた。



 ……けれどそうではないのだというのをマオは分かっている。

 この世界は自分が思っているよりもずっと――様々な存在が居る。それこそ自分のことをどうにでも出来る存在はトリツィアもしかり、少なからず存在している。

 それに穏やかなペット生活に関して、マオは不満はない。寧ろこれまでにないぐらいの穏やかな感情を抱いている。その日々を邪魔されたくないと、そうも思ってしまっている。






「……我は魔神であることは疎ましくは思ってはいない。そもそも我の名を騙って好き勝手する連中などはどちらにしても我からしてみれば不必要な存在達だ。お前は魔王として配下の連中と関わっていたかもしれないが、我は違う。我は主のペットになろうが、なるまいが我である」



 はっきりとジンはそう言い切る。



 マオとジンは同じトリツィアのペットではあるが、その性格などはやはり異なる。

 ジンはどちらかと言えば孤高というか、我が道を行くタイプなのだろう。心から自分を慕う者などどうでもいいとさえ思っていそうだった。



 それだけ割り切っているからこそ、自分の名を使って好き勝手している連中がどうなろうと知ったことではないと思っているのだ。現状は排除した方が楽であろう存在達という認識しかない。大人しくしているならそれはそれで放置でいいが、煩わしいなら問答無用で排除するだろう。








「お前が結局奴らをどうするつもりかは知らないが、主に迷惑をかけることだけはしない方がいいだろう。主は身内には甘くても、敵対する者には容赦がないはずだ」

「それは分かっている。しかし……我に制御が出来るか不安になっている」

「はっ、仮にも魔王と言われていた存在が何を弱気になっている。もっとしゃきっとしろ」




 マオはジンからそんな風に言われて頷くのであった。

 ――そして二人は引き続き、自分たちの名前を使って行動を起こしている連中への対応に追われるのであった。

 

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