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大神殿の上級巫女、昔を回顧する ②

 レッティは、トリツィアが巫女としてこの場所にやってきた時、同じように此処にやってきた。

 当初はレッティは、自分のことをお姫様のように思っていて、自分の言葉が絶対的だと思っていた。



 初めて会ったトリツィアは、



「初めまして、トリツィアです」


 といってにっこりと笑っていた。



 幼いころから、トリツィアはかわいらしい少女だった。最初の頃、レッティはトリツィアのことを自分の取り巻きのようにしようとしていた。見目が良かったからこそ、自分の取り巻きにふさわしいとそう思っていたから。



 そう言う環境でレッティは過ごしてきていて、誰もそれを訂正する人もいなかった。

 訂正する必要もきっとなかったのだろう。実際にレッティは産まれも特別であり、そのままでも問題ないはずだった。



 トリツィアは、昔から自由気ままである。

 巫女という存在に憧れていて、巫女として生き生きと過ごして居ていた。

 レッティたちが嫌がるような雑用も進んで行い、楽しそうに鼻歌を歌う。その様子に何人かの巫女が、トリツィアの事を見下していた。



 だけどその見下した考え方は、すぐになくなる。



 彼女は見た目に反して、気が強かった。

 なにか嫌がらせをされれば躊躇いもせずにやり返す。




(思えば昔のトリツィアさんはまだ今のように規格外ではなかった)



 昔から気が強かったトリツィアであるけれども、そこまで規格外ではなかった。まだ常識の範囲内にいた。だけれどもいつの間にかその力が日に日に増してきて、彼女はいつの間にか、強さを身に着けていった。


 レッティはトリツィアみたいな人間を初めて見たので、最初驚いたものである。なんだろう、トリツィアに文句を言うことも出来なかった。驚きすぎていたのである。それに神官たちもトリツィアのおかしさに「近づかないように」と言っていた。

 トリツィアに注意をしていた神官もいた。トリツィアは基本的に素直に言うことを聞いていたが、それでもトリツィアはやられたらやり返す思想はなくさなかった。寧ろ巧妙にバレないようにやらかしたりしていた。




(私が幾らトリツィアさんに取り巻きになるように言っても全然頷いてくれなかったのよね。今考えると昔の私は怖い者知らずだったのだと思う。トリツィアさんを取り巻きなんてものにしようとなんて今なら絶対に考えないのだけど。寧ろトリツィアさんが巫女としていう仕事に興味を持ってくれていて良かったと思う。トリツィアさんは十分に戦闘職でも生きていける。巫女の仕事が嫌ならば抜け出すことだって十分出来た。だけれども此処にいるのはトリツィアさんが巫女の仕事が好きだからこそなのだろう)




 レッティの目から見て、トリツィアは言ってしまえばどこでも生きていけるような存在だ。

 戦闘能力も高いので、騎士や冒険者にだってきっとなれるだろう。巫女としての力があったとしても、巫女が嫌ならば彼女は抜け出すことだって可能だった。

 多分、もう神官長たちもそれを理解しているので、トリツィアのことはそういうものと皆思っているのだ。




 あとトリツィアは自由に過ごしていたけれども、その自由が許されたのはトリツィアの巫女としての力が強かったからというのもあるだろう。最初の頃はまだ普通だったその能力も日に日に増して行っていた。




 レッティは紅茶を飲みながら、トリツィアのことを考えながら思わずふふっと笑う。



 レッティは自由で好き勝手にしているトリツィアのことを気に入っている。自由に生きている彼女への羨ましさもあるかもしれない。貴族の生まれであるレッティには色んな柵があり、結局のところ権利がある分、不自由な面も結構ある。

 レッティは上級巫女であるから、結婚相手を選ぶ権利は普通の令嬢よりはあるが、それでも家のためにならない相手を選べば家に色んな事を言われてしまうだろう。

 それも貴族として産まれたからには仕方がないとレッティは思っている。



 ――だからこそ何処までも自由で、自分の自由を妨げる相手に容赦がなさそうなトリツィアに好感を抱くのかもしれない。



 それに何だかんだトリツィアは、周りに優しい。自分を害する存在以外には穏やかである。同じ巫女の同僚としてトリツィアはレッティにそれなりに穏やかなに接してくれている。


 その同僚としての関係がレッティは気に入っている。






(――あとトリツィアさんのことといえば、あの件が一番思い出深いわねぇ)



 そう思いながら、レッティは大神殿内の破壊跡のことを考える。

 ドーマ大神殿には、何かに破壊された痕が一つある。ちなみにそれに関しては修復されずに、一つ残されている。



 なにかがぶつかったような破壊跡――その穴はトリツィアがある時刻んだ破壊跡である。残したままにされているのは、トリツィアに手を出してはいけないことを新しく来たものに知らしめるためでもあった。






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