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下級巫女です!!  作者: 池中織奈


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魔族が暴れているらしい ③




「マオよ、魔族の気配は探れているか?」

「探れている。しかし知った気配だ。……本当に我の配下が暴れているではないか。ご主人様とオノファノ様に怒られてしまう」

「きちんと対応をすれば問題がなかろう。……ただどれだけの被害が出ているかによっては躾をされそうだが」




 トリツィアから大人しくさせてと言われたマオとジンは早速動いている。

 二人は人の姿を取って、魔族の気配を探りながら進んでいる。



 早めに対応を進めなければならないと彼らは焦りを見せている。上手く対応が出来なければ飼い主であるトリツィアにどれだけの屈辱を味あわせられることになるかとそれを考えるだけで、マオなどは体を震わせている。



 トリツィアという規格外の少女を前にすれば、魔王であろうとも魔神であろうとも――ただのペットという扱いしか受けない。





「どのように対応をするつもりだ?」

「まずは平和的に進める。殺してしまってもいいけれど、ご主人様やオノファノ様はその方がいいと言うだろうから」

「……別に必要に応じてなら命を奪っても主たちは何も言わないと思うが」

「いや、だってそれで大丈夫だろうって行動して、叱られるのだけは我はごめんだ!!」




 これが人々を恐怖に陥らせるはずだった魔王と魔神の会話だなんて、誰も思わないだろう。

 ……寧ろ人型を取っているからこそ、大人の男が主に叱られることに怯えている様子に訝しむだろう。なんとも情けない姿は、強者には見えない。




 ……だからだろうか。




「おい、兄ちゃんたち、金目のものを置いて行きな」




 盗賊などという犯罪者たちに絡まれてしまっている始末である。

 マオもジンも当然、そのようなことを言われるのは初めての経験である。そもそも普通なら魔王と魔神が、こんな場所を歩いているのがおかしいのである。





「我らにいっておるのか?」

「今すぐ失せるなら許してやろう」



 マオとジンがそれぞれ答えても、彼らにとってはただの男二人組にしか見えないからかそのまま引く気はないらしい。

 相手が魔王と魔神であることを知っていれば、そんなことはしないだろう。



 彼らはそのまま襲い掛かり――、そして当然のように返り討ちに合う。

 マオとジンはその盗賊たちを殺すことはしなかった。人ならざるものである彼らからしてみれば、人の命などどうでもいいと思っている。

 それでも……殺さなかったのは彼らがトリツィアのペットであるという自覚を持っているからだろう。






「このような者達に絡まれてしまうとは……ご主人様とオノファノ様に笑われてしまう」

「……人の世ではこんな風な愚か者が溢れているのだな」



 盗賊たちを捕まえた後、彼らは街道に放置する。彼らをわざわざ街に連れて行き、賞金をもらうなどという考えには至らないのだろう。あとは彼らはそもそも人の世に関わる気がほとんどない。元から魔王や魔神という、人とは相いれないはずの存在なのだ。

 ……今は、トリツィアという例外の手によって人の世に強制的にかかわらされているわけだが。







「――この周辺に気配があるな」

「どうする気だ?」

「人気のない所でおびき寄せるのが一番楽だろう」




 マオはそう告げたかと思えば、自身の魔力を薄く周りへと流していく。……それはよっぽど魔力に長けている者などではないと気づけないようなものである。この魔力の放出により、望まぬ来訪者が訪れる可能性もあるがそれはそれである。

 三百年前に封印された魔王――それがマオである。

 そもそもの話、基本的に魔王と呼ばれる存在は勇者に討伐されるものである。神より力を与えられた勇者。その存在を前に魔王というのは破れるのが定石である。



 ……だけど、マオは勇者に倒されなかった魔王である。

 そう、その存在が倒されることなく封印されるに至ったのはそれだけマオの力が勇者に倒されないほどに強かったからだ。封印されたマオは、復活した後――世界を支配することを配下たちには望まれていたと言えるだろう。

 実際にトリツィアという規格外の存在が居なければ、人類は大変な事態にはなっていただろう。それこそ暗黒期と呼ばれてしまうような――そんな未来が待っていたはずだ。




 マオの魔力は独特で、強大で――だからこそ、元々魔王を信奉していた者達はそれに気づくはずだとそう理解していた。



(……ご主人様やオノファノ様に出会うことがなければ、このようなことになっていなければ我は人々を支配しようとしていただろう。それが今は大人しくペット生活をしているとは……本当に人生とは分からぬものだ)



 そんなことを考えながら、マオはその場に佇んでいる。

 その近くにはジンの姿もあるが、彼に関してはただ静観しているだけのつもりなのだろう。



 ジンは自分と同じようにトリツィアのペットであるマオに対して、特別な感情というのは抱いていない。ここで配下を御することが出来なければそれまでとさえ思っているようである。



 それからしばらくして、その場に複数名の人影が現れる。




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