下級巫女は、周りの人々の度肝を抜く ④
「ふんふんふ~ん」
女神様へのプレゼントを渡す目途がたったトリツィアはご機嫌である。
魔物を倒し終わり、大神殿でのんびりと過ごしている。
今日も元気に鼻歌を歌っている。ちなみに今、歌っているのは女神様の故郷の歌である。流行のアニソンである。
それを元気よく歌い、にこにこしている。
当然だが、トリツィアはアニソンというものを何かは理解していない。ただ女神様が好きな歌という認識しかない。
「トリツィア、なんか奇怪な歌を歌ってないか?」
「んー。オノファノ、これ、女神様の故郷の歌だよー」
オノファノはトリツィアの言葉を聞いて、驚いた顔をする。
「前に歌っていたものと大分違うなぁ……。女神様ってそんなに色んな歌を知っているのか?」
「うん。まぁ、あんまり聞いたことのないような歌なのは当然だよー。女神様の故郷って、異世界らしいから」
「へぇ……。異世界出身で神になったりするのか?」
「神様達の中でも女神様だけだっては聞いたよ! 女神様は、神様の中でも特別だって聞いたことある」
にこにこしながら、トリツィアはオノファノに語る。
女神様からはオノファノにはこういった女神様情報を喋っても問題ないとは言われているので、時折こうやってオノファノに話しているのであった。
といっても、オノファノに話すか話さないかはトリツィアの気まぐれなのでこういう会話の中でしかそういう会話はなされないが。
「そうなのか……」
「うん! 女神様の故郷の歌ってね、あんまり聞いたことがないようなものが沢山あるんだよ。そういうのを聞くとついつい歌いたくなっちゃうの。オノファノも一緒に歌う?」
無邪気な様子でトリツィアに問いかけられる。
オノファノは惚れた弱みもあるだろうが……、そういう笑顔を向けられるといつも逆らえない。というより、頷きたくなってしまうものである。
「少しだけだぞ」
「やったー。じゃあね、女神様から聞いた男性が歌うアニソン歌おう! なんかね、女神様が言うには女神様の世界だと沢山の歌手の人がいたんだって!!」
「へぇ。なんかイメージだと女性が多そうだけどな」
「うん。なんか歌姫とかはよく見るよね」
トリツィアはオノファノが承諾してくれたのが嬉しいのか、満面の笑みである。
この世界にも歌手と呼ばれる職業の者は多いが、有名なのは女性が多い。そういう女性は歌姫などと呼ばれていたりする。そういう芸術を愛する神から興味を持たれているような歌姫も世界にはいるらしい……彼女は女神様から聞いたことがある。
ちなみに女神様はトリツィアの歌を気に入っており、トリツィアが歌う度ににこにこしているものである。
「えっとね、どんなのだったかなぁ。ちょっと待ってね、思い出すから! 女神様がね、頑張って声を低くして歌ってくれたの」
彼女のそんな発言を聞きながら、オノファノはトリツィアは普段どんなふうに女神様と過ごしているのかと疑問を持った。
オノファノは当然、女子会には交ざったことはないので女神様ってもっと威厳があるものでは…?と少し思っていた。
とはいえ、トリツィアとこれだけ仲良くしている女神様なので、そういうものなのだろうとすぐに受け入れているが。
「んー……」
「そんなに思い出せないなら後ででいいぞ?」
「ちょっと待って」
中々、トリツィアはその歌が思い出せないらしく唸っていた。
そしてトリツィアはオノファノに少し待つようにいったかと思うと、突然黙り込む。
(女神様ー! 今、大丈夫です? 大丈夫だったら聞きたいことあります!)
あろうことか、いきなり彼女は心の中で女神様へと話しかけた。
普通なら一介の少女相手が話しかけたところで、返事が来ることはありえない。だが、彼女は普通ではない。
『あら、聞こえているわよ。どうしたの? 何かあった?』
(女神様、急にごめんなさい。前に女神様が教えてくれた男性が歌っているアニソン教えて欲しいです)
『あら? 何かするの?』
(オノファノが歌ってくれるって! 男性が歌っていたものだと、男性が歌ったのがいいなぁって。それにオノファノって良い声しているから、聞きたいなって)
『まぁ! それは良いわね。トリツィアはオノファノの声を気に入っていることは本人に言ってあげましょう』
(なんでですかー?)
『オノファノが喜ぶからよ。ほら、やる気を出してもらった方がいいでしょ。オノファノならトリツィアが声を褒めたら喜んで歌いそうだもの』
(そうですか?)
『そうよ。あとそうね……男性のみが歌うアニソンも聞きたいけれど、男女のデュオの歌がいいわ。私も聞きたいから、そうしましょ?』
(男女で一緒に歌うものですか?)
『ええ。これから教えるから、是非、歌って』
女神様は突然、声をかけられたにも関わらず物凄くノリノリであった。
女神様にとってはトリツィアはお気に入りの少女であり、その幼馴染のオノファノのことも気にかけている。
その二人が一緒に故郷の歌を歌ったら楽しそうだなとしか考えていない。




