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下級巫女です!!  作者: 池中織奈


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下級巫女は、久しぶりに家族に会う。③

 お肉を呼び出せないと聞いたトリツィアは、別の方法を試してみることにしたようである。

 マオとジンの力を借りて呼び出せないのならば、美味しい肉に向こうからきてもらうようにしてもらえばいいのである。



「というわけで、書庫でこんなものを見つけたよ!」

「……トリツィア、それ、過去の古い文献だろう。それで何を見つけたっていうんだ?」


 トリツィアが意気揚々とオノファノに見せているのは、一冊の古びた本である。それはどうやら過去の出来事をまとめた文献のようである。

 オノファノにはトリツィアがなぜ、それを持ってきたのか甚だ疑問であった。



「この中にドラゴンを呼び出す術が描かれるの! 貴重そうなドラゴンだから、美味しいのかなーって」

「待て! この文献、国難に見舞われた時の奴だろ! あとその呼び出す術に関してもざっくりしか書かれてないだろ。それにこれは国を亡ぼすような恐ろしいドラゴンのことが描かれてるんだぞ? なんでそれを美味しそうだとか言っているんだよ」


 オノファノはトリツィアの言葉に思わずと言った風に突っ込みを入れる。



 そう、トリツィアの持ってきた文献は国難に見舞われた際の記録が描かれているのである。それを見てどういう思考になれば貴重なドラゴンだから美味しそうという結論に至るのだろうか……と相変わらずオノファノにはトリツィアの思考は分からないのである。



「だって基本的に貴重な魔物って美味しいもの多くない?」

「そうかもだけど、そういう危険そうなものを肉にするために呼び出さない方がいいとは思うぞ」

「んー。そう?」

「トリツィアなら、問題なく対応が出来ることは分かっているが……それでもなるべくそういう危険なものは意図的に呼び出さない方がいい」

「駄目?」

「ああ。止めた方がいい。トリツィアがそういう意図がなかったとしても、危険だと判断されそうだからな」


 オノファノは当然、トリツィアがどういう存在なのか把握している。

 どれだけの力を持っていても悪意のある野望などないことも、人を害するつもりなども全くないことも――だけど、そうでなければトリツィアがなしてきたことだけを見て危険だと判断する者だってきっといるのだ。


 オノファノはトリツィアがそういう討伐対象のようになってしまうことをよしとしていない。例えばそういうことになれば、オノファノはトリツィアの味方をするであろう。おそらくどこでだってトリツィアとオノファノは生きていけるし、そういうことになったらどうにでもするから。



 とはいえ、トリツィアはそういう風に人と敵対することを望んではいない。周りの人々のことを好ましく思っていて、仲良く過ごしていきたいと思っているだろう。そのトリツィアの気持ちをオノファノは理解している。





「周りから嫌われたり、討伐すべきみたいな考え方をされると厄介だから、肉を手に入れるならもう少し安全な方法にした方がいい」

「まぁ、それもそうかー。となると、どうしよう? 折角だからとっておきのお肉を準備しておきたいのになぁ」

「……もうちょっとだけ安全な方法にしたらまだいいと思う。ドラゴンが好むような何かを準備して引き寄せるとか。お金をかけて買うよりも自分で狩りたいんだろう?」

「うん。出来れば」



 トリツィアはオノファノの言葉に笑顔で答える。



 その様子から見ても、彼女は家族を本当に大切に思っていることが見て取れるだろう。

 オノファノとしてみても彼女の家族のことを慕ってはいるし、トリツィアの望みはなるべく叶えたいのでどうやって彼女の望む肉を狩るかというのだけを思考している。




「まだ大神殿に来るまで時間あるんだよな? 情報集めて遠出して狩りにいくか?」

「それもありかも」

「危険な魔物が現れて困っている国とかあるなら、そこに突撃するとか」

「でもあんまり遠すぎると帰ってこれないかもだよね」

「まぁ、それはそうだが……。丁度良い距離で魔物が現れていればいいけど」

「そんなすぐに現れるかな? 神官長とか、あとはシャルジュとかにも聞いたらお肉手に入るかなー」



 トリツィアは終始楽しそうである。

 家族にどんなお肉を渡そうかと、それを考えただけでワクワクしているのだろう。



 そういうわけでトリツィアは、色んな人に美味しい肉を手に入れたいから貴重な魔物と戦いたいということを告げて回る。



 神官長は呆れた顔をした。そもそもトリツィアが望むような強大な力を持つ魔物というのは中々現れるものではない。彼女がそういう星の元に生まれているのか、魔王や魔神と対峙したりもしているが……それは本当にたまたまである。神官長からは「何かしらの情報があったら言うが、期待をしないように」と言われ、トリツィアは丁度良い魔物はいないかと少し落ち込んでいる。

 その後、やってきたシャルジュに問いかければ――なんと、「丁度良い魔物がいるよ、お姉さん」と笑われた。



 そういうわけでトリツィアはオノファノと共に、シャルジュから紹介された魔物を狩りにいくことにする。



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