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下級巫女です!!  作者: 池中織奈


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下級巫女と『ウテナ』 ⑤

 トリツィアはご機嫌だった。

 これから『ウテナ』の面々が、大神殿で劇を披露する。その場には既に嫁いでいるレッティもやってくる。それでいてその劇に関してはトリツィアの敬愛する女神様だって楽しみにしているのだ。

 そういう良い事尽くめの状況である。






「レッティ様、『ウテナ』の劇は見どころ満載だと思うので楽しみましょう!」

「ええ」


 レッティは相変わらずマイペースでにこにことほほ笑むトリツィアに迎え入れられ、笑みを浮かべる。

 大神殿も、トリツィアも変わらない。その事実はレッティにとっては嬉しいことだった。



 レッティはこの大神殿で長く過ごしてきた。だからこそこの場所はレッティにとってはある意味第二の故郷ともいえる特別な場所なのだ。





「トリツィアさんは相変わらず変わらないわね。あなたは何があったとしてもそのままだから、私はそれにほっとするわ」

「本当ですか? ならよかったです。レッティ様、結婚生活どうですか?」

「手紙でも書いているでしょう?」

「でも実際に聞いた方が楽しいです! レッティ様、女子会しましょう!!」

「それには女神様もいらっしゃるの?」

「そうですね。女神様も、劇を見に来るっていってましたし、おしゃべり出来るかなって思います」



 トリツィアは相変わらずにこにことしている。

 以前と変わらず女神様と仲良くしている様子を見て、レッティは微笑んだ。






「そこまで時間は取れないかもしれないけれど、お話はしたいわ」

「じゃあ『ウテナ』の劇を見た後にそうしましょう!」



 トリツィアはレッティのことを好ましく思っているので、沢山話したいというその気持ちでいっぱいのようである。


 トリツィアはあまり誰かを嫌いにはならない。自分の考えが確立しており、周りのことなどあまり気にしないマイペースだからであると言えるだろう。それでいて特別に好意を抱く相手もそんなに多いわけではない。

 ただレッティのことはトリツィアはとても気に入っているのである。





(『ウテナ』の劇を見ることも楽しいし、その後にレッティ様と女子会を出来るのも楽しい。手紙でのやり取りはしていてもやっぱり直接話すのは違うもんね)



 トリツィアはとてもご機嫌な様子を見せている。

 手紙のやり取りはしているものの、やはり直接話す方がなんというか特別感がある。それにレッティ側も、トリツィアと直接話すことを所望していた。というのもトリツィアにとっては些細なことでもレッティにとっては重要なことというのはいくつもある。彼女が話さないことをわざわざ手紙で聞くのも……と思っていたのもあり、レッティが大神殿を去った後のことは聞きたいなとただ思っているのである。


 そもそもおそらくトリツィアのしでかしていることは国家機密ともいえるような……周りからしてみれば信じられないようなことを平然と行っている節がある。だからこそ手紙においそれと書かない方がいいことが多い。

 それだけ彼女の日常は、他にとっての非日常なのだから。





「『ウテナ』の人たちも劇を披露するのに気合十分なので、レッティ様が絶対に楽しめるように仕上げているはずです」

「相変わらず『ウテナ』の方々とも仲良くしているのね」

「はい! 仲良しですよ」


 元気よくそう答える彼女はやっぱり普通という枠組みからは何処かずれている。




 『ウテナ』という旅芸人の一座は、特別な位置にいる。その特別と仲良くしているということは一種のステータスであるのだが、彼女からしてみれば本当にただ仲よくしているだけなのだろうということがよく分かる。

 



 ――レッティは『ウテナ』のことを正しく把握できているわけではないが、トリツィアという少女のことはよく知っている。だからこそ、寧ろ何処までも特別なのは彼女であり、そんな彼女と親しくしている『ウテナ』の方が幸運なのだろうとくすりと笑う。




 それでいて良い付き合いが出来ていなければこの大神殿に『ウテナ』を呼ぶことなどトリツィアはしなかっただろう。だからこそレッティはほっとして、嬉しくなっている。




「劇が始まるまでもう少しあるので、私のペットのことを紹介しますね!!」

「……ええ」



 その”ペット”については軽く聞いている。それがどういう存在かもレッティは把握している。

 それを本当にただのペットだとでもいう風に紹介しようとする彼女に思わず呆れてしまう。



 そして実際に対面したそのペットたちは、まさしく魔王と魔神と呼ばれるだけの威厳と力を持ち合わせており、レッティは彼女の異常さを改めて認識する。




「本当に、トリツィアさんは凄まじいわね」

「そうですか?」

「ええ」


 レッティはトリツィアに向かって微笑む。



 逆にマオとジンはトリツィアに様付けされており、なんだかんだ彼女の異常性を受け入れてほほ笑むレッティを「何者だろう?」と見ているのだった。


 レッティはトリツィアと長い付き合いだからこそ、その異常性をよく知っており、それにどうこう言ってもどうにもならないことを知っているのだ。



 


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