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下級巫女です!!  作者: 池中織奈


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下級巫女と『ウテナ』 ③

 トリツィアが下級巫女であろうとも、力を持っていることは少しでも彼女を知っていれば理解出来ることである。過去に彼女を狙い、返り討ちにあったものたちはそれをよく理解している。


 ――だからこそ、幾ら下級巫女であろうとも手を出してはいけないと分かっているものは手を出そうとしない。


 しかし彼女がどういう存在か知らないものは、まだまだ沢山いる。




「んー」


 トリツィアはその日、刺客に襲われた。

 それらはトリツィアを人質にして、何かを起こそうとしていたようである。



 彼らのことを縛り付けた後、それをどうでもよさそうに見ている。





(こうやって刺客が来るなんてややこしいなぁ。折角『ウテナ』が遊びに来てくれるっていう楽しいことがあるのに、こんな風なことで煩わせたくはないなぁ。『ウテナ』も劇のことで忙しいだろうし)



 『ウテナ』の面々にこういう刺客のことを言えばすぐに対応はしてくれるだろう。それだけ彼らは修羅場を潜ってきている。

 とはいえ、トリツィアは劇の練習で忙しくしているであろう彼らの手を煩わせる必要はないとそう思っている。



 『ウテナ』の劇を見ることをなんだかんだ楽しみにしているので、刺客のこととかは告げずにおこうとトリツィアは思考する。






「ねぇ、私は幾ら狙われても屈しないよ?」



 にっこりと笑うトリツィアを見て、彼らは得体のしれないものを見るかのようにおびえた表情だ。



 実際に彼女は、彼らにとってみれば訳の分からない存在であることは確実だろう。

 ただの下級巫女、貴族の出でもなく力がないはずのか弱い少女。――それが自分のことを圧倒していることに驚いて仕方がないのだろう。





 刺客に襲われているという非常時であるにも関わらず、彼女はどこまでも笑顔である。

 こういう状況でも彼女が平然としているのは、刺客に狙われたとしてもそれは気にするべきことでは全くないことなのだろう。






 ――刺客たちは、ただの下級巫女だと聞いてきた。取るにも取らない存在。なぜ、『ウテナ』の面々が彼女を特別視しているのか分からない。


 それが依頼主と刺客たちにとっての本音だった。





「――お、お前は何なんだ」


 声をあげる刺客たちを見ても、彼女の表情は一つも変わらない。

 






「私はただの下級巫女だよ。それよりもこうやって狙ってくるのはやめて欲しいのだけど」



 簡単にそう言ってのける。



 刺客たちに対する恐れはそこにはない。

 笑ったまま告げる彼女は、そのまま続ける。





「あなたたちのことはどうにでも出来るけれど、あまりにも来られるとちょっと鬱陶しいかなと私は思っているの。だからね、今すぐ依頼主には止めた方がいいよって言ってもらっていい?」



 トリツィアにとっては面倒だから、手を出さないで欲しいとその程度のことである。

 



「あと『ウテナ』の皆にも手を出さないように言って欲しいかな。彼らの自由を阻害されるのは私にとっても面白くないの。だからね、彼らに手を出しても私はあなたたちに反撃する」



 彼女にとっては『ウテナ』の面々もすっかり身内な感覚になっている。それだけ関わりが深くなっているという証であろう。

 シャルジュ以外の面々とはそこまで会えてはいないが、自分のことを慕ってくれているのは理解している。だから余計に『ウテナ』を自分の好きなようにしようとする存在たちのことは良く思っていない。




(ここにやってきた刺客たちはあくまで実行犯でしかなく、命令されただけだろうけれど……。でも命令されたからといって『ウテナ』に言うことを聞かせるために私をどうにかしようとするなんておかしいよね。『ウテナ』の皆に直接接触して仲良くなればいいのに)



 『ウテナ』は何処にも属さず、誰かの下に付かないものだ。とはいえ、何かしら気に入った相手がいればその相手のことは特別視するだろう。

 こういう状況は、トリツィアだからこそ生み出されていると言えるのかもしれない。

 『ウテナ』は自分たちの影響力を理解している。彼らを手中におさめたい者たちが特別の存在を感知したらその存在がどうなるか分からないというのを分かっている。だから彼らは『ウテナ』内以外で誰かを特別に扱うことはあまりなかった。



 でもトリツィアならば自分たちよりも強く、守られる存在ではない。寧ろ『ウテナ』側の危機を救ってくれるようなそういう力を持った存在だ。


 だからこそ『ウテナ』の面々もトリツィアと交友を持ちやすいのだ。





「そ、そうはいっても――」

「口答え駄目。自分の立場分かっている? 私、あなたたちどうにでも出来る。私が答えて欲しい言葉は肯定の言葉しかない。拒否権がないの分かる?」



 刺客たちもあくまで依頼された側なので、決定権はない。

 トリツィアという規格外の化け物を前に混乱している彼らは答えを濁そうとしたが、それを彼女は許さない。




 軽い調子で告げるトリツィアを見て、さらに恐怖が増したのか彼らは結局こくこくと頷くのだった。




 ――その一件より、トリツィアの元へやってくる刺客の数は減った。

 とはいえ、別口から依頼がいくつかされているのか完全には無くなっていない。




 

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