プロローグ とある国、とある神殿の下級巫女
この世界には、理不尽なことが溢れている。
この世界には、奇跡を望むものが沢山いる。
その世界には、奇跡が時折起こる。
その代表的なものが、神が起こす奇跡である。
神と呼ばれる存在が、その世界には身近に存在する。その奇跡は必ず起きるわけではない。だけれども、時折神は世界で奇跡を起こし、その世界に痕跡を残していく。
神は実在する。
それをその世界の多くの人々が知っている。
だから人々は、神へと祈る。
神を信じ、神へ祈りを捧げる。
そしてここにも、神への祈りをささげる一人の少女がいる。
藍色の美しい髪を腰まで伸ばしている。その閉じられた瞳は、祈りを終えると開く。そこに見えるのは、美しい緋色の瞳である。
彼女は、巫女と呼ばれる存在である。
聖なる力を宿した乙女は、神に仕えるために神殿で暮らしている。
この少女もまた、神へ祈りを捧げながら神殿で暮らしているのだ。
その身に纏う巫女服から見るに、彼女の位は下級巫女と言えるだろう。
だけど、彼女は決して普通の下級巫女とは言えない。
それは彼女を知るものは誰もが知っている。
彼女の名は、トリツィア。
先祖は没落貴族であるただの平民の出の少女である。
――彼女は女神と友達で。
――彼女は敵対するものに容赦なく。
――彼女はただ自由に生きている。
これはそんな彼女の物語。
プロローグなので短めです
 




