表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
暗黒中世騎士道  作者: 甲斐性なし
6/16

第6話

「ううっ、顔が痛えよぉ…」


 気絶して難を逃れた雑魚は、目覚めると、馬鹿の頭と目が合った。


「うひゃあっ!気持ち悪りぃ!」


 曲がった鼻筋を無理やり戻して、詰まった鼻血を一気に吹き出してから、ようやく周りの光景がはっきりとした。


 燃え盛る村と、仲間の死体、全部真っ赤に染まっていた。単色の地獄絵図だ。昔盗んだ教会の絵画より迫力があった。

 ついでに犯した修道女の体を思い出して、愚息に元気が出てくる。


「動くな!」

「ひぃ!」


 股間を弄ろうとして、背後に気が回らなかった。

 首筋に当てられた刃物は、僅かに震えている。

 肌が切れて血が滲んだ。


「どっどど、どうかお助けくださいぃ……!」

「…両手を後ろにまわして!」


 幼さの抜けない声で制される。両手を縛り上げられても、相手が子供だと雑魚はまだ気付いていなかった。


「命だけは勘弁して下さい!なんでもしますんで!」

「うるさい!」


 思い切り背中を蹴られても、何故か怒張は収まることなく続いていた。


「股間が痛え!お願いです旦那ぁ、後生ですから縄を外して下さい!本当に痛えンです!

 これじゃ腐っちまう!ほんのちょっと血抜きするだけです!」

「…なら質問に答えて!どうして村を襲ったの!」

「どうしてって、そりゃあ…」


 首から流れた汗が、刃物に伝った。


「この愚図!はやく答えなさい!」

「し、知らねえ!本当に知らねえンです!大体村襲うのに深い理由なんてないンです!」




 しまった。最悪の返答をしたことに雑魚は気付いた。


 こいつらは、自分達が被害者だと思い込んでいる。だが普通なら襲撃に抵抗するだけの備えがあるはずだ。大男は予想外だったが、ほかに戦えるやつはいなかった。

 この時代にあるまじき、まるでお花畑の様な村だったのだ。そんなもの蹂躙されて当然だ、むしろ今まで無事なのがおかしい。


「……」

「ち、ちげぇんですよ旦那、いまのは言葉のアヤってんで…!」


 当てられた刃物に力が加わるのを、震えながら感じていた。なのに怒張は益々増す、まるで天を衝く神話の槍の様だ。


 せめて死ぬ前に一発でもいいから、マスを掻いて死にたいと、雑魚が涙を流した時、両手の縄が解かれた。


「…へ?」

「素直に答えた褒美です、好きになさい。ただし終わればお前の人生の最期です」


 雑魚にとっての、最後の審判が急に訪れた。

 後ろには幼い声をした、神か悪魔が立っている。

 神の如き悪魔は、思いついたように提案した。


「そうだわ、そこに落ちてる口を使いなさい」


 雑魚はぞっとした。馬鹿の首のことを言っているのか。悪魔の如き神の発想だった。


「はやくなさい!」

「ううっ、馬鹿、すまん」


 詫びの言葉とは裏腹に、かつてないほど怒張した愚息は、首の断面から穂先をちらつかせた。


「本当に浅ましい。あなた達は獣だわ、恥を知りなさい!」

「許してぐだぜぇ…! 許してぐだぜぇ…!」


 背後からの罵倒とともに、激しさは一層増していく。


「もうダメよ、きっと神はおゆるしにならないわ!」

「神さまぁ、許してぐだぜぇ!もっと罰をぐだぜぇ!」


 早漏ぎみの雑魚が小刻みに震えだした。最期が近づいていく。


「代わりにわたしが許してあげるわ、さあ逝きなさい!」

「ゔうっ!聖女さまァ!逝かしてぐだぜぇっ!」


 雑魚の放った命は、単色だった地獄に、色を加えた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ