第3話
「か、頭ぁ…たす」
血塗れの団員は、最後まで言葉を発することなく力尽き、続いて家から出てきた全裸の大男は、草刈り鎌と馬鹿の首を手にぶら下げていた。
「なんだぁてめぇ!?」
「ボケが!早まんな!」
静止を振り切って団員のひとりが大男に襲いかかる。そいつは馬鹿とは付き合いも長く、よく村娘を並べて犯す仲だった。
団員の手斧は勢いよく大男へ振り下ろされる。しかし大男は微塵も慌てることなく、兜をかぶった馬鹿の頭で手斧を防ぐ。
「てめぇ変態野郎!よくも馬鹿の兄弟を!」
「……」
大男は反応することなく、その大きな手に不釣り合いに見える草刈り鎌を、無造作に振った。
素早い振り抜きで喉を切られた団員は、口をぱくぱくとさせながら、地面に倒れた。
今度は周りの団員が、大男を取り囲んで様子を窺う。すぐに飛び出さないのは、さっきの二の舞にならないためと、最初のひとりは確実に犠牲となることが明白だった。
「おい雑魚!おまえ突っ込め!」
「はぁぁっ!? 嫌ですよ頭ぁ!」
「いま殺されてぇか!おら突っ込め!」
手斧を振りかぶって脅すと、雑魚は恨めしそうな顔でせわしなく体を震わした。汗が滝のように流れ始める。
「ち、畜生!糞ったれめ!」
「……」
小柄な雑魚が無謀な踏み込みを見せると、大男はそれに合わせて腰を落とす。だが勢いよく腕を振る雑魚が飛ばしたのは、汗のつぶてだった。
無警戒だった大男の目に、汗は正確に当たった。突然のことに大男はたじろいだ。
「……!……!?」
「ひゃはははっ!どぉだ木偶の坊!オレさまの汗のお味はよぉ!」
叫びながら雑魚が間合いを詰めると、今度は一斉に他の団員達も襲いかかった。
手強い相手には有利な条件で戦うのが鉄則だ。卑怯だのは雑魚の台詞でしかない。たとえ敵が全裸であってもだ。
「恨むんじゃねぇぞ粗チン!」
「へへへ、そのハゲ頭を真っ赤にしてやるよ!」
「死ねやオラァ!」
「…!」
大男は盲打ちで馬鹿の頭を投げた。運悪く雑魚の顔面に当たり、そのまま崩れ落ちた。
ひとりは草刈り鎌で首を切られた。
ひとりは振り下ろした短剣ごと、拳で握り手をうち砕かれた。
ひとりは大男に刺した手斧が抜けず、引き寄せられて顔を握り潰された。
返り討ちにあった団員達を見捨てて、村の中央へ駆け出した。
あんな化け物と俺が直接戦う必要はない。まだまだ捨て駒はいる、いくらでも使い潰せばいい。
楽な小銭稼ぎのつもりだった。こんな命のやりとりをする予定じゃなかったはずだ。
息が切れる、激しい動悸とめまいがした。
後ろで投げつけられた草刈り鎌が背中に刺さったが、まだ逃げられる。
くそ、死んでたまるか糞が!