第1話
ありふれた悲鳴と絶叫だった。
「男から殺せ!」「待て新入り、ガキと女は殺すな!足の筋切って集めろ!」「犯すのは後にしろ、食糧と金目のモン積み込め!」「ぎゃあっ!やりやがったなこの糞アマ!」「やめとけ間抜け、もう死んでる」「あぁ最高だ、締まりがいい…」「爺ィ相手になにやってんだ?」「そりゃナニだろ」
「貴様らぶっ殺されてえか!お楽しみは後にしろ、やること済ましてずらかるぞ!」
「「「おう!!」」」
道端に転がる死体を踏み付けて、家屋に火を放っていく。肉の焦げる匂いと赤ん坊の鳴き声が聞こえるが、一晩もしないうちにどちらも消えるだろう。
殴りながら爺さんを犯してた馬鹿が、今度はまだ息のある農夫相手に腰を振っていた。あの悲鳴は農夫の女房だろう、旦那が目の前で女にされて正気を失ったか、興奮したのか?何人かが女房を輪姦そうとしてるが、ずらかるまで少し時間はある、丁度いい息抜きになるだろう。
ここは敵城に近い村だが、そっちは騎士団様が相手しているだろう。我々傭兵団には味方の後詰と、抵抗する気力を敵から奪うという崇高な使命が云々と、つまりは要領よく楽で美味しい仕事をしている。
普通なら前線に立たされて犬死にするのが世の常だか、城にちょっとした細工をしてやって騎士団様には恩を売った。
あとはよっぽどの盆暗でもない限りしくじらないはずだ。もし万が一失敗したとしても、これからずらかる俺らには関係ない話だった。おぉ我ら傭兵団に栄光あれかし!だ。
家屋から飛び出してきた火達磨の頭を手斧でカチ割ってから、抵抗らしきものはなくなった。あとはさっさとずらかるだけだった。
「かしら!こっちになんかあるぜ!」
「ああ?なんだ?!」
さっきまで農夫を犯してた馬鹿が、股間を血で真っ赤にして叫んできた。性癖は歪んでいるが、ガキのころから盗賊育ちのせいかこんな時は金目のモンをよく見つける。
「もうあらかた火ィつけてんだぞ!?どこだ!」
「ここだ!」
まだ火のまわってない家屋の中だったが、燃え移るまでに時間はそうかからないだろう。馬鹿が家屋に突っ込んでいく。
「おい馬鹿野郎!?もう諦めろ!」
「ふん!」
馬鹿が倒した箪笥の裏には隠し扉があった。しかもご丁寧に錠もついている、いかにもこじ開けて金目のモンを奪って下さいといっているようだ。
「へへ、赤ん坊でもいたら好きにしますぜ!」
「知らねぇよ馬鹿野郎、勝手しろ!」
手斧で錠を壊すと、女をひん剥くみたいに優しく扉を蹴破った。室内は埃っぽさと饐えたションベンの匂いが立ち込めていた。
「ガキはどこだぁ?!大人にしてやろうってんだよ!」
馬鹿が股間を真っ赤に怒張させながら、中へ飛び込んだ。