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chapter1-2(前半)

 クロルとカレンは、神殿にたどり着く。その学校ほどではないが大きく、白を基調としたその建物は、厳かな雰囲気を放っている。とは言ってもやはり国の首都からかなり外れた街の神殿、かなりの歴史を持ち、金を持ってる訳では無い。つまるところボロくて大きな建物、それが町の子供たちの認識だった。


 そんな場所で行われる儀式は、【未来決定の儀式】。街で16歳になった少年少女の一人一人に儀式を行い、【天職】を決める。この儀式で選ばれる職は決して絶対服従ではないが、『天職以外の職につけば神に見放される』と神父はおろか町中の大人がいうのだから、実質絶対なのだ。

そしてさらに、数年に一人だけ、【冒険者】を天職に選ばれた人間に神の力をもって創られたという武器【宝具】が与えられる。

 この宝具は神の力が加わり、当然とてつもない力を持つ。さらに数年に1人の割合なので、宝具持ちの冒険者は絶対に有名になると言っていい。

 そして天職に選ばれる仕事の中で最も危険なのが冒険者であるため、町は学校を運営しているがその主な教育内容は対魔物の武術だった。


 二人は、神殿の前の広場を抜け、入り口付近に移動した。受付のためだ。受付をしていたのはきちんと礼装をした女だった。


「おはようございます。自分のお名前を書きましたら、学生証をお見せ下さい。」


「おはようございます!これでいいですか?」


先にカレンが終わらせる。次は俺だ。

ぱっと名前を書いたらわりと綺麗に書けて、少し上機嫌に学生証を取り出そうとする。


「クロルってば字の中潰れてなんて書いてるのかわかんないよ」


「は?何いってん目の代わりにガラス玉入ってない?」


「それはあんたの目でしょ!ほら見なよ」


しぶしぶ見ると確かに潰れてた。


「やっぱ字を左で書くのは難しいって」


「たしかに字を考えた人は右利きだったって話だけど!さっきのガラス玉の件、撤回しなさいよ!」


うん、今度は上手くかけた。本当に。


「ちょ、サラッと書き直してなかったことにするな!そんで無視して学生証見せるなぁ!」


その様子を見ていた受付の女の人がクスッと笑い、


「ふふ、あなた達仲いいのねぇ」

「「絶対ない」です!」


被らせてきたカレンを睨むと、あちらも睨み返してきた。それでまた女の人に笑われるのだった。


 儀式開始まであと15分ほどある。カレンは受付終了後、彼女の友達に連れられてどこかへ行った。うるさいのがいなくて何よりだ。

 ただとにかく暇なのだが、暇を潰せるような友好関係さえ築かなかった俺は人気のない裏手の方の神殿の壁によりかかる形で座った。


「...もうすぐだ。もうすぐで父さんとは違う道を歩ける。」


そう、口から出たか出てないかわからないほどの声で呟いた。

 俺は冒険者の職を求めない。というかなれるわけが無い。これを冒険者にする神はただの無能だ。いくら学校で学んだことが無駄になっても、だ。学校で冒険者になった時のための教育のせいで冒険者が最優の天職なんてみんな思ってるが、そんなことはないと思う。

 いくら魔物から人間を救えるからといって、彼らが彼らだけで生きれるわけがない。彼らをサポートする人間が必要だ。それでいいならそんな天職がいい、そう思っている。


 1人でボーっとしているうちに時間が経ったようだ。そろそろ神殿の中に入っていい頃だろう。

 立ち上がり、神殿の入口を目指す。同じ思考に至ったのか、多くの人がゾロゾロと中へ入っている。俺もその流れに従って、入った。

 中は薄暗く、高いところにつけられた窓から朝の横日が優しく差し込み、皆を包んでいる。その窓のステンドガラスは何を表現しようとしているか分からないが、少なくともこの場にそれがなにかわかっている者はいないと思われる。

正面には他の面とは異なって縦に大きな窓がついになっており、中心には高さのある箱のような机、その上には十字架が掲げられている。その反対の壁には女神らしき人物の彫刻が施され、それを眺めているものは少なくない。

ホールのようなその空間には2列、長椅子がズラリと揃えられ、中心には先程の机の方から彫像の真下まで赤絨毯が敷かれている。

俺はその長椅子の列のうち、真ん中ほどの列の端に座った。俺の隣には最後まで誰も座らなかった。


 儀式の始まる前に、神父から軽く説教があったが興味が無いので聞いていなかった。冒険者になるための心持ち的な話しだったと思う。大人でさえそうなのだ。いろんな天職が決まる場で話すのは冒険者のことだけ。でもそれで俺が陰になれるのならそれでいい。


「では、只今から儀式を始めます。名前を呼ばれた者は前へ来て、神に祈りを捧げること。」


その言葉が聞こえて、俺はやっと前を向いた。はやく自分の名を呼んでほしい。呼んで、早く羽をもいでほしい。今日から地を這うのだ、と宣言してほしい。


 一人目が呼ばれ、無事に冒険者と告げられる。二人目はあまり体が強くなさそうな男で、商人と告げられ胸をなでおろしていた。

 この街で冒険者に選ばれるのは年に20人ほど。約5分の1だ。ただ家業をそのまま継ごうと考えている者や、大抵冒険者にはならないし、冒険者になりたくなかった者たちもいる。冒険者にならなかったうちのさらに半分が、冒険者になれず落胆する者達である。

 20人ほど終わった頃だろうか。


「次、ブラッド・リーガン」


「は!やっと来やがったな」


「お、ブラッドだ!さっさと冒険者に選ばれてこい!」


「任せとけ」


そんな会話が聞こえる。俺もその男を知っていた。うちの学校で戦闘部門首席の男だ。だが何を使っていたかは覚えていない。


 ブラッドが前に出て、手を組んで目を瞑る。すると突如、橙色の風がブラッドの周りで吹き出した。周りがざわめく。俺の見ていた1番目の男ではこんなことは無かった。

 神父も驚きの表情を出しながらも、祝詞を歌い上げる。すると、風になっていた橙色の光の粒子がもう目を開いていたブラッドの少し上で纏まり始め、形を織り成していく。

 徐々に出来上がっていくそれは、黒を基調にした大剣。全長はブラッドの身長と同じほどの大きさを誇った。その長くて幅広い刀身には先程の光の粒子とほぼ同じ色で輝き、古代文字のようなものが彫り込まれている。鍔の中心にも、同じ色の結晶が埋め込まれている。そして完成した大剣は、ゆっくりと降下し、ブラッドの目の前で留まった。それに反射するようにして、ブラッドがその剣を握った。

その刹那、その剣について知らなかったはずの俺の頭の中に、その大剣の名前が浮かんでくる。その名はーー


「...【重力剣・グラムニクス】」


そう、ブラッドが呟いた。俺の頭の中に浮かんできた名と同じだ。

今起こった非現実的な現象に、皆一同固まっていたが、ブラッドのその呟きでやっと理解した。

 そしてーー歓声。この場の人間一人一人があらん限りの歓声を上げた。ブラッドは、何故自分がこの名を知っているのか、そしてそもそも武器が降りてきたことにただただ驚き、その大剣を目を見開いてみていた。が、一泊おいて彼自身も目の前の事象を理解し、神殿中から歓声が上がっていることに気がついた。


「俺が...選ばれたんだ!そう、俺は選ばれし者!この力をもってこの宝具を振るい、この国を守る!!!」


ブラッドの言葉に、さらに神殿中が湧いた。揺れてるのではないかと思われるほどだ。そして、ブラッドの名前を叫ぶものが現れ、コールが始まる。それは神父が席に戻るよう促すまで続いた。


 それからは皆、普通に天職を告げられていった。

そして、60人ほど終わったあたりだろうか、


「次、カレン・ウィンズ」


カレンが呼ばれた。カレンは後ろの方に座っていたようで、俺の後ろから歩いてきた。目が合うと、に、と笑ってみせたが、その直後には険しい顔に戻った。それほど緊張しているようだ。

 それもそう。彼女は学問部門首席、戦闘部門3位の優秀者だ。男と一緒に行われる戦闘部門の序列に、女であるカレンが3位というのはとても凄いことだ。

それが先程、戦闘部門首席のブラッドに宝具がでたのだ。当然、彼女もそれに影響されていた。


 カレンは前に立つと、ガチッと両手を組んで、目を閉じた。

 神父の祈りが始まる。

 その場の皆が、カレンに少しの哀れみの感情を持っていた。あのように優秀な子にも、宝具が渡らない現実。宝具がこの街で出たのさえ珍しいのだ、もう彼女にはないだろうと。



ーーしかし、皆のその思いを、一陣の風がかき消した。

 エメラルドグリーンの光を放つ風が、カレンの周りで巻き上がった。かなり大規模のその風は竜巻を思わせたが、不思議なことに周りにはなんの影響も与えていない。

そしてそのエメラルドグリーンの光の粒子と風は1点に集中し、カッと激しい光を放った。

 思わず閉じた目を開くと、彼女の上空に、エメラルドグリーンの結晶に綺麗な装飾が施されたペンダントが浮かんでいた。それは降下を始め、カレンの手に収まる。そしてまた、記憶が改竄されるような感覚に襲われ、その名前が頭に浮かんできてーー


「【精霊の契約・アラファウス】」


そう、カレンが呟いた。

どうも、結城 青です。

どこで切ろうか、どこで切ろうかと思い、ここで切りました。

この話でクロルの番まで行きたかったんですけど、僕自身ちょっと打つの飽きてきて...(笑)

次回もなるべく早く上げます。そこまでいかないと話始まらないので(笑)

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