修学旅行の片思いの話
「報われない片想いの話」のシリーズの学生時代のお話です。
学生時代に行った二泊三日の修学旅行。
俺は体調を崩して途中で帰った。あいつと風呂に入ることに緊張して火照る体を冷ますために水風呂に浸かりすぎたし、そのうえ隣で聞こえる寝息のせいで夜も眠れなければ体調を崩すのは当然だった。
もっと沢山一緒にまわりたかったけど、普段と違う背伸びした私服や几帳面そうな寝着もみれたし、何より非日常感のある旅行、一泊だけでも十分楽しかった。
親に迎えに来てもらって帰った家で布団に寝かされながら、俺がいなくてもちゃんとみんなと仲良くしているだろうかとか楽しんでいるかとか、少しは俺を心配しているだろうかと考えた。
そのうち妹が学校から帰ってきて部屋のドアを少し開けて、お兄ちゃん大丈夫と聞く。普段あいつとの時間を邪魔する憎らしい妹も、弱っているときに心配そうに声をかけられるとかわいく思える。俺達についてくるのが、ただ懐いているからだと理解しているから余計にそう思う。
素直に妹を可愛がってあげられない自分のあいつへの気持ちを少し煩わしく思い、罰でも与えられているかのような気持ちなった。途中で帰らなくては行けなくなった寂しさも手助けするようにして涙が出た。はやくよくなりたくて一生懸命目を瞑って眠った。
休みがあけて学校へいくと、何人かの友人が家用のお土産から少しずつお饅頭やら煎餅やらを買えなかっただろうからと持ってきてくれた。ありがとうと言うと照れたように妹にあげろよなんて言われた。
その日の帰り、やっとあいつと話した。帰りまではなぜか気まずそうに遠巻きに見られていた。他の奴と話しているとあまり声をかけてこないやつだが、今日はいつもと違い時々こちらをみていた。
どうしたのかと聞くと歯切れ悪い返事ともつかない声をだした。何を言ったのか分からず聞き返すとはいといって拳をだした。何かを渡す仕草だと理解しておそるおそるだした両手にぽとりと何かが落ちてきた。
キャラクターのご当地キーホルダーだった。訳が分からずにさらに質問した。
すると照れくさそうにお土産だと言った。なぜこれなのか分からなかった。俺は別にキャラクターなどは好きではないしキーホルダーを何かにつけているようなことも無い。たぶんあいつの趣味なのだろう。お揃いで買ってきたというずれた言葉と行動が今日もらったお土産の何より嬉しかった。
たぶんつけて欲しいのだろうなと思いつつ大事に部屋にしまうことにした。次の日、キーホルダーをつけてきたあいつががっかりしないように、無くさないように大事に家にしまってあると、自分でも浮かれているのがわかるくらい嬉しそうに言った。
今でもそのキーホルダーのキャラクターを街で見ると、その時のことを思い出して少しだけ嬉しくなる。そして時々、胸が締め付けられる。
ひたすら片思いのはなしですが読んでいただきありがとうございます。
一言でも酷評でも良いので感想頂けたら幸いです。