レキジョの異動(1)
私は東大寺まつり。真田幸村が大好きな26歳だ。歴史を学ぶためT大に現役合格し、歴史に関する書籍を作るため大手出版社に入社した。しかしその夢は、いま途絶えようとしている……。
「休刊っ!?」
素っ頓狂な声をあげた私に、中年男性がしーっ、と指を立てる。
「声が大きいよ、東大寺さん」
「休刊だなんてひどいです! 明智光秀の手紙が見つかり、応仁の乱が大フィーバーして、運慶の展示会に加え、北斎の絵がパスポートに選ばれたりもしてるのに!」
「うーん、後半は歴史あんまり関係ないしねえ」
肩をコロコロでほぐしつつのんびりと言ったのは、井の頭編集長(五十六歳)だ。人のいい顔をしているし、実際彼と話していると気が抜ける。私は井の頭のデスクをばん、と叩いた。デスクに置かれた湯飲みの中、茶がかすかに揺れる。
「私はどうなるんですか! 歴史雑誌を作るために、必死の思いで編集者になったんですよ!」
「ああ、大丈夫。異動先はちゃんと決まってるからね」
井の頭はそう言って、私に辞令を差し出してきた。辞令には、聞いたことのない雑誌名が書かれている。
「……『月刊金瓶梅?』」
私は頭の中で単語帳をめくった。大学までに覚えた単語は、単元ごとに分けられている。これは、確か世界史で習った言葉だ。
「金瓶梅ってたしか、明代の長編小説で、四大奇書の一つですね」
「さすが日本史学専攻、よく知ってるねえ」
関心する井の頭に、私はすっ、と手のひらをかざしてみせた。
「いえ、こんなの常識ですから」
そう、T大出身の私にしてみたら、知っていて当然の単語だ。しかし金瓶梅がどんな書物だったかについては、綺麗に記憶が削除されている。おそらく、受験に関係ないのでデリートされたのだ。ちなみに四大奇書に含まれるあとの三つは、三国志、水滸伝、最遊記である。
「それで、なんの雑誌なんです? 中国の紀行誌とか?」
「ううん、漫画雑誌」
「漫画!?」
私は目を見開いた。
「私、漫画なんか毛ほどの興味もないんですが」
漫画を読む暇があったら、時代小説を読んでいたほうがずっと有意義だ。バイブルは池波正太郎先生の「真田太平記」である。井の頭はにこやかに、
「そう言わずに。この出版不況で唯一希望があるのが漫画雑誌なんだからさ」
そうなのか。
「部数は二十万だよ」
「うちの三倍以上ありますね」
それだけの人間が読む雑誌だったら、やりがいはあるのかもしれない。私は苦渋の思いで頷いた。会社が決めたことには逆らえない。私の反応を見た井の頭は、儚い笑みを浮かべる。ああ、なんだかうるっとしてしまう。私たちが感傷に浸っていたそのとき、編集部のドアがガチャリと開いた。
「失礼しゃーす」
怠いあいさつをしつつ、ダンボールを抱えた男たちがどやどやと入ってくる。みな一様に、前襟がはだけたホストみたいな格好をしているのは何故だ。井の頭編集長は疲れた顔で、
「彼らは新しく創刊されるちょい悪親父系雑誌、『タンザニア』の編集者だよ。発行部数は18万部」
「ちょい悪親父!?」
なにそれ、ださい。
井の頭いわく、ちょい悪オヤジのうちの一人が、私に向かってウインクしてきた。ブワッと鳥肌がたつ。
チャラチャラしちゃって……なんなの!?
「なにこれ。武将? 受けるわー」
ちょい悪オヤジのひとりが私のデスクに近寄ってきて、デスク横に貼られたポスターに触ろうとした。
「幸村さまに触らないでっ!」
私はオヤジの手を叩き落とし、声を荒げる。うー、と唸ると、彼が怯えたように身を引いた。ふん、ちょい悪なんて見かけ倒しではないか。大体、今の時代に気骨ある男がどれだけいるというのだ。
私のタイプは真田幸村。チャラい男は大嫌いなのだ。ちなみによく言われることだが、「幸村」という男は存在しない。幸村の本当の名は信繁なのだ。なぜ幸村と呼ばれるようになったかは謎である。語感だろうか。
ともかく、負け戦にも関わらず、のちに将軍となる徳川家康を苦戦させたその功績は、歴史ファンの大勢から讃えられている。彼こそ日の本一のツワモノ。男の中の男だ。
ちなみに、私は時代劇以外のフィクションには興味がない。ファンタジー漫画? 恋愛小説? そんなもの、所詮作り事。生身の人間が生きてきた歴史こそが、一番のドラマなのだ。
そしてたった今──徳川に逆らい土地を失った真田一族のごとく、私もいるべき場所を失ったのだ。
★
私が勤める白英社は、漫画誌や情報雑誌など、幅広いジャンルの雑誌を発刊している出版社だ。本屋に行けば、必ずうちの本が平積みされている。最近ドラマ化され大ヒットになった「私の恋は土留め色」、略して「こいどど」は、うちの少女漫画誌「マカロニサラダ」で掲載さていたものだし。
ただ、漫画に興味がない私はその作品を読んでいないのだけど。ヒットがある一方、斜陽の一途をたどるものもある。いかに素晴らしい雑誌だろうと、需要がなければ無意味。
雑誌や本を作るには最低限の儲けが必要で、そしてその数字が一定の数値を割ると──今回のようなことになる。
ちょい悪オヤジ軍団に追い出された私と井の頭は、荷物を詰めたダンボールを抱え、廊下に佇んでいた。
「まだ信じられません……」
ドアに貼られた部署名のシールは、すでに「タンザニア」に張り替えられている。何度も言うが雑誌名もコンセプトもダサい……。井の頭は私の隣でうつろな目をしている。
「僕は、釣り雑誌に行くんだ。発行部数は三万部」
「さ、三万?」
「僕の頭並みに風前の灯火だよ……」
彼はそのつるっとした頭──いや背中に哀愁を漂わせ、
「じゃあ、元気でね、東大寺さん」
「はい。編集長も」
「嬉しかったよ。君みたいな若い子が、歴史に興味をもってくれていて……」
「編集長……」
井の頭の目尻は、かすかに湿っている。彼はくるっと踵を返し、私に背を向けて歩いて行った。
私は深呼吸をし、エレベーターへ向かいボタンを押した。開いたエレベーターに乗り込み、4階へとあがる。フロアにつくと、ポーン、と音がした。
「ようっし、行くぞ」
私はダンボールをよいしょと抱え直し、
「月刊金瓶梅」と書かれたドアへと向かう。失礼します、と言いながらドアを開けようとすると──。
「なにが差し替えだこのクソバカ野郎!」
バン、とドアが開き、まろぶようにアロハシャツの男が出てきた。私は思わず後ずさる。
「ざけんなよてめえ! くそっ」
男は電話を胸ポケットにしまい、疾風のように去って行った。
「な、なんなの……」
私はドアにへばりついて、呆然と男を見送る。まるで真田家に仕えた忍者、猿飛佐助のようだ……。男の背から目を離した私は、フロアへ目を戻す。電話が鳴り響く音、ファックスの流れる音、通話をする声が響いていた。フロアにいるのは、死んだように机に突っ伏している者、必死に机にかじりついて作業をしている者と様々だ。ちなみにこちらへ目を向ける者は一人としていない。
「あの」
声を上げるが、電話が鳴る音で打ち消された。
「あの! 月刊歴史から来たものですがっ!」
私が叫ぶと、約一名が反応した。しょぼくれた顔をした青年が、デスクから顔をあげたのだ。なんとなく、某国民的猫型ロボットアニメに出てくる少年に似ていた。彼はしげしげと私をみて、
「え、君が? 新しいひと?」
「東大寺まつりです。よろしくお願いします」
私は挨拶し、一礼した。青年は頭の上に掲げていた眼鏡を装着し直し、
「女の子?」
私は眉を寄せた。女の子、だと? 私はもう26なんですけど。
「女だとなにか?」
思わず威圧的な声が出る。眼鏡はふい、と目をそらし、
「い、いや、別に。僕は副編の南澤です。よろしく」
「よろしくお願いします。編集長はどちらに?」
「今外してるんだ」
南澤は空いている席を指差し、ここ使って、と言った。
私はデスクにダンボールを置いて、六文銭が書かれたマグと、真田の家名入りシールが貼られたノートパソコンを取り出す。
「東大寺さんは漫画とか読むの?」
南澤は物珍しげな顔で私を見ている。
私は丸めてあった幸村のポスターを丁寧に伸ばしながら、
「家に漫画がなかったので、図書館で『良い子の歴史漫画100選』を読んでいました。おすすめ書籍は『真田太平記』です」
「なるほど。
東大寺さんは、歴女ってやつなんだね」
私は眉をあげた。
「その呼称はやめてほしいですね」
レキジョだのリケジョだの、頭が悪そうにもほどがある。南澤はえ、そう? と首を傾げ、
「あそこにうちの雑誌あるから。暇があるうちに読んでおいて」
壁際の棚を指差した。
私が雑誌を取りに行こうとしたら、備え付けの電話が鳴り響いた。死んだように寝ていた青年が起き上がり、デスクの天板に頭をぶつける。
「って〜!」
青年は頭を抱え、悶絶していた。実に痛そうだ。いつものことなのだろうか、南澤は気にした様子もなく受話器をとる。
「はい。ああ、先生。お世話になります」
電話口に耳を傾けていた彼がギョッとした。
「な、間に合わない? それは困ります。ええ……やる気?」
南澤がチラッと私を見た。
「ええ、じゃあ、いつものを持って行かせますので」
彼は受話器を置き、私を拝む。
「さっそくで悪いんだけど、今からおつかいに出てくれる?」
「おつかい?」
「そう。あいさつがてら頼むよ。あとね、先生のやる気を引き出してくること。できる?」
私は胸を張った。
「もちろん! T大ですから!」
そう、日本最高学府を卒業した私に、できないことなどない。真田幸村のように、この部署で再起をかけるのだ。南澤はここに向かうように、とメモを渡してきた。店へいたるための地図が描かれている。
「これは……」
「春海堂っていう和菓子屋さん。ユイチ先生にはこれって決まってるんだ」
「ユイチ先生?」
「漫画家さんの名前。自宅の住所も書いてあるから」
駅から徒歩五分にあるマンションだ。ユイチ先生とやらは、なかなかいい物件に住んでいるらしい。
「じゃあ、頼んだよ」
南澤は忙しなく腕時計をみて、どこかに電話をかけ始めた。私は漫画には毛ほどの興味もない。しかし、郷に入っては郷に従わねばならない。たらいまわしのごとく人質に取られた、真田幸村のように。私は地図を手に、編集部を出た。
★
「ここ……?」
私はひとり、そびえ立つマンションを見上げていた。足元に伸びたマンションの影が、私の身体をすっぽり覆っている。
想像していたより、ずっと立派な外観だ。しかも駅から徒歩五分ときている。漫画家って、意外と儲かるのだろうか。六畳のアパートでインクにまみれながら描いているイメージだが。きれいなエントランスを抜け、セキュリティのために設けられている機械で部屋番号を押すと、雑音の入り混じった声が聞こえてきた。
「はい」
「『月刊金瓶梅』の者です。ユイチ先生でいらっしゃいますか」
レスポンスまでに間が空いた。
「……女のひと?」
「はい、生物学的に」
ユイチはしばらく沈黙し、オートロックを解除した。私は自動ドアを抜け、エレベーターに乗り込む。エレベーターが8階についたので降りる。目指すは801号室だ。たどり着いた801号室には、「市川」という表札が出ていた。下に小さく「祐一」とあるので、市川祐一が本名なのだろう。当たり前だが、随分と普通の名前だ。インターホンを押すと、ドアが開いた。ドアの隙間から顔を覗かせた人物に、私はギョッとする。
こ、これが漫画家って生き物なの?
ボサボサ頭だし、前髪が長すぎて目元がよく見えない。
しかも、でかくてひょろくてのっそりしている。サンダルをつっかけた足もとは、ホワイトアスパラガスのように貧弱で真っ白だ。どこで売ってるんだかわからない、迷彩のつなぎを着ていた。しかも、顎にはまばらにヒゲが生えている。戦国武将がヒゲを生やしているのは時代的に当たり前だと思うが、現代人なのにヒゲを剃らない男は、ただの無精だとしか思えない。彼は長い前髪の向こうから私を見て、ぼそりと言った。
「……新しいひと?」
あ、喋った。当たり前だけど。私は引き気味に挨拶を返す。
「あ、新しく『金瓶梅』へ配属になりました、東大寺まつりです。名刺、まだ以前の物しかないのですが」
彼はドアの隙間から手を伸ばし、名刺を受け取った。視線を落とし、
「東大寺……変わった苗字」
ボソボソ喋るわね。はっきり話したら? 私はイライラしながら、
「ええ。名前のおかげか、T大に入れました」
「T大。すごいね」
まるで感心していない声で言った彼は、私が手にした紙袋へちらりと目をやる。
「それ……」
「はい。春海堂のカステラです。好きだとお聞きしたので」
「ありがとう」
ユイチは手を伸ばし、カステラの袋を取った。そのままドアを閉じようとする。
「ちょっ!」
私は慌ててドアをこじ開けた。
「待ってください! 原稿は?」
「データ入稿だから、メールで送る」
「それじゃ困ります! 持って帰りますので、できるまでお部屋で待たせていただければと」
「知らない人は家に入れない」
なに子供みたいなこと言ってるわけ。
「私は編集者ですよ!?」
「……西矢さんだから。俺の担当」
西矢さんって誰よ!
「とにかく開けてください~!」
こじ開けようとしたドアを、ユイチが思い切り閉めた。私は足をはさんで悶絶する。
「いったー!」
ユイチは一瞬動きを止めたが、私がにらむと、びくりとしてドアを閉めた。
それから30分後。私はむっつりした顔で編集部に戻ってきていた。ヒールを脱ぎ、足を氷で冷やしていると、南澤が近づいてくる。
「あれ? 東大寺さん。どうしたの?」
「どうもこうもないです」
私は先ほどの出来事を話した。南澤はあー、と声を漏らし、
「それは災難だったね……」
「なんなんです? あのユイチって人」
「編集長が連れてきた作家なんだけど、ちょっと変わってるんだよね」
「ちょっと? ちょっとですか、あれが?」
気勢を上げた私に、南澤が苦笑いした。
「僕が後で覗いてみるよ」
任務をこなせなかったふがいなさで歯噛みしていると、バン、とドアが開いた。
「ふざけんなよお、てめえよお」
声を荒げながら室内に入ってきたのは、アロハシャツの男だった。帽子にサングラス。スマホに向かって離している。私はびくりとして彼に目をやる。あ、先ほどすれ違った人だ。
「親が危篤だあ? 下手な嘘ついてんじゃねーよ、もし原稿落としたらテメーの○○を○○してやっからな。わかったかおらあ!」
男は叫んで、がんっ、とデスクを蹴り飛ばす。私は思わず悲鳴を上げた。なんなのよこのおやじ! やくざかっ!? 電話を切った男は、帽子を脱いで、髪をぐしゃぐしゃ掻きまわした。
「この部屋あちーっ。エアコン入ってねーのか、ミナちん」
「まだ五月ですから……」
「五月でもあちーもんはあちーっつうの」
彼はパタパタと扇子を仰ぎながら、ソファにどかりと腰掛けた。私に目をやって、
「あ? 誰?」
「あ、あなたこそ誰。組合の人ですか」
「組合? 労働組合には入ってっけど?」
男はサングラスをずらして、私をじろじろ見た。
「四十二点」
「は!?」
「色気ねーもん。どこの営業?」
「営業じゃないっ! ここの社員です!」
男はきょとんとした顔でこちらを見た。
★
あははは、という声が会議室に響く。西矢が腹を抱えて笑っていた。何がおかしいのだ、この男は。
「廃刊! いやー、受けるわ。まさかそんな理由で異動してくるやつがいるとは」
「辞令はそちらにも来ているはずですが?」
私は眉をひそめて、アロハシャツの男を見た。彼は南澤に目をやって、来てたっけ、と尋ねている。南澤は呆れて、
「来てましたよ……というか、ご自分で新人がくるって言ってましたよ、西矢編集長」
こいつが西矢か……こんなやくざみたいな男が編集長だなんて、この会社は大丈夫だろうか。
「ああ、言ったような気もするわ。で? 何ちゃんだっけ」
「東大寺まつりです」
「まつり? 変わった名前だな」
「楽しい人生を送れるようにと、祖母がつけてくれた名前で……」
西矢は私の言葉を遮り、
「まつりは漫画好きか?」
「呼び捨て!?」
「まーいいじゃんよ。で、好き?」
私は咳払いして、
「漫画には興味がありません」
西矢がへえ、と相槌を打った。
「人生損してんねえ」
勝手に決めないでほしい。大体、漫画なんてなんの役にも立たないではないか。私はつん、と顎をあげた。
「私は歴史が好きなんです。いつか、歴史雑誌を作る仕事に戻るつもりですから」
「ふーん」
「でも、仕事はきっちりやります。ここはどういう漫画を出してるところなんですか?」
西矢は目を瞬いて、南澤に視線をやった。
「ミナちん、説明してないの?」
「ええ……」
「ああ、じゃあ、アレやってもらったら?」
「アレ……ですか」
南澤がちらっと私を見た。私は先ほどの不手際を挽回しようと、勢い込んで言う。
「なんですか? 私、なんでもやりますよ!」
「あっ、今なんでもやるって言ったぞ」
嬉々とする西矢に、南澤が呆れ声を出した。
「大丈夫かなあ……」
数分後。私は視線を手元に落とし、顔をひきつらせていた。
「こ……れは」
目の前には生原稿があった。そこに描かれているのはいわゆる……エロシーン。南澤が言いにくそうに声をかけてくる。
「今からするのは修正作業。簡単に言えば、局部をぼかす作業。刑法175条って知ってる?」
私はぼそりと答えた。
「わいせつ物陳列罪」
「よく知ってるね」
「T大ですから」
南澤は原稿を手にし、
「露骨な性描写をすると発禁になってしまうんだ。特に男性向けの漫画は規制が厳しい」
「当たり前です。エロ本なんか完全に有害図書です」
「まつりって十年後PT〇とかにいそう」
「編集長、名前で呼ばないでもらえます?」
西矢はにやにやしながらこちらを見ている。こんなもの、セクハラではないか。
「温室育ちのエリートには無理かな~。バイトでもできるような作業だけどね~」
その言葉に、私は青筋を立てた。
「やらないなんて言ってません!」
西矢が扇子をぱちん、と鳴らした。
「えらい! じゃ、俺は競馬場行ってくるから。頑張れよ~」
彼はそう言って、さっさとブースを出て行った。競馬って。おかしいだろう、いろいろと。南澤がちらっと私を見た。
「えーと……できる?」
「やりますよ! これくらいどうってことないですから」
私はそう言って腕まくりをし、修正作業を開始した。
毎日20時投稿。