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やや底辺ギルド物語

作者: RYUTEN



ここはヴァンダーム国の冒険者ギルドの一角。



一人の女性がある男を見ていた。


大国ヴァンダームは人口がこの世界で最も多い国。この国でのギルドは支部が多数あり、それぞれが独立しているいわば競争相手の関係なのである。支部は売り上げの何%かを大本のギルドに払う仕組みでギルドと名乗れる。

そしてここのギルドは国内の中でも、もうちょっとで中堅レベルになるやや底辺ギルド支部である。


その女性の視線の先にいる男、ハーデスという男。

1年前にこの街にひょんと現れた男だ。


見た目は黒髪、身長は160cmぐらい、顔つきはのほほんとしていて糸目で童顔。


性格は見た目と変わらないのほほんとした性格・・・らしい。


そんな男、ハーデスはGランク冒険者1年前からずっとランクが変わらない状態で日々を過ごしている。


Gランクの指標はいわば信用ができるかどうかのレベル。

真面目に雑用的なクエストをこなしていけば次のランクアップクエストの許可が降り、自己判断で次のランクへ1、2ヶ月でステップアップするのが大体の冒険者。

素行の悪い冒険者はギルド判断で契約を解除させられるので必然このランクにいるのはステップアップの前段階の者のみなのである。

しかしハーデスは素行も悪くなく(むしろ良い)契約解除もされないままこのランクで1年を過ごしているのである。

大抵の冒険者になろうとする人らはGランクに留まること無く次を目指す。

ギルド社員は首を捻りながらも個人のプライバシーに関わる事はコンプライアンス上、詮索出来ないので何とも言えないのである。


ハーデスはギルドに入ってクエストを受注しようとすると毎回Sランク冒険者に話しかけられる。


曰く「後輩の面倒を見る」らしい。


それを毎回監視しているのがリクを物陰から覗いている最近このギルドに移籍してきたSランク冒険者エリス・ランヴァータなのだった。


そして今日も後輩の面倒を見る冒険者が・・・。


「いよぉー!ハーデス君!今日は何を受注するのだね?」

「こんにちわ!ダンドさん!今日はポーションの素材の薬草を納品しようかと思うんです!えへへ。」


このダンドという男はここの支部でSランク冒険者。

あだ名が影縫いのダンド。

職業はアサシン。化物冒険者だ。

正直ここの支部に収まる冒険者ではないが、3ヶ月前から上位ギルドからひょっこり移籍してきた変わり者である。


彼曰く「面白いもの見つけたから」らしい。


その面白いものとは間違いなくハーデスなのだろう。移籍してからというもの、ハーデスと多々つるんでいる。


そんな渦中のハーデスは大体決まって受注するのが、薬草の採取、引っ越しの手伝い、下水道のどぶさらい、犬の散歩・・etc.


凡そ、冒険者に憧れで加入する新人冒険者がやりたくない仕事を率先して行うのだ。


周りのすれた冒険者からは「雑用のハーデス」「腰抜けのハーデス」と陰で叩かれている。


ギルド社員からは「ありがたやハーデス」「神の遣いしハーデス」などと崇められている。


まぁ、前者はバックに影縫いのダンドがいるので絶対に目の前では言えないでいるのだが。


「ハーデス君が持って帰ってくる薬草は上質だからCランク以上の冒険者からは定評があってね。本当に助かるってるよ!」

「そんなこと・・まぁ、はい、えへへ、ありがとうございます」


ハーデスはダンドの言葉に照れながら頭をかいている。


(く、可愛いではないか)


二人がいるクエストボードのちょっと手前にある柱から覗き見ているエリスはハーデスの挙動に頬を染める。


その3人の光景を一望できるギルドカウンターの社員たちは

「出たよ今日もストーカーエリスが・・・」

「ああ。最近変態になったクルセイダーか・・・」


どうやらエリス本人は見守っているだけと思っているらしいが周りからはただの変態ストーカー呼ばわりをされているのは本人は知らないらしい。


エリス・ランヴァータ。


この支部のSランク冒険者。

身長は170cm

銀髪のポニーテール。ちょっとタレ目だが、その目からは慈愛が溢れる美人さんだ。

ちなみに胸はかなり大きいし引き締まっている所は引き締まっているがちょっとお尻が大きいのがコンプレックスらしい。


職業はクルセイダー。

攻撃と守りに特化した最強前衛職。

更にユニークモンスター

炎王フレイアを従える国内トップのクルセイダーだ。


あだ名は炎神エリス。


エリスもここの支部にいるようなレベルの冒険者ではないのだが、エリスも上位ギルドから移籍してきたのだ。


本人曰く


「ちょっとした野暮様でね。いや、野暮ではないか旦那を見守るりたいのだ」


らしい。


その旦那とやらが・・・


(く、くそー。可愛い・・いや!違う!私はハーデスに邪な手が伸びないようにしているのだ!!)


ヨダレを足らしながら目がハートになっているエリス。

周りの冒険者は「またか」と溜め息を吐いている。

旦那と言っているのは本人のみだと周りは知っている。


ギルド社員は


「なにしにうちのギルドにきたんすか」


過去の凛々しかったエリスと今のエリスを重ねて溜め息を吐く。


そしてここの支部に性格に強烈なクセのある冒険者が後々集まる事を彼らは知らない。


どこの世界でも本当に大変なのは、サポートをする側なのである。


ーーーーーーーーーーーー


さて、なぜエリスはここまでハーデスを旦那と呼び始めたのか。


それはエリスがこのギルドに移籍する、3ヶ月程前。

炎王フレイアを従えた時に遡る。


エリスはこの時、悩んでいた。


『なぜ自分以外は全力を尽くさないのか』


Aランクパーティー

「円卓の騎士」

12人からなるこのパーティーはおとぎ話に出てくる伝説の騎士たちから頂いたチーム名。おとぎ話の騎士達は結託して民を守り、邪悪な龍や化け物達を倒していった。

しかしこのパーティーはどうだ。

実力は確かにある。周りは自分よりも実力は劣るがスキルは高い。

しかし、自分が入ってからの彼らは明らかに自分頼りの戦術。

誰かに必要とされるのは構わない。生来の性からか私は何かと面倒を見たがりな部分がある。

しかし、彼らは自分を向上させる事に怠け始めている。

本当にこのパーティーはこれでいいのか。

エリスは悩んだまま依頼を受けていた。


霊峰イズガルド。


B~Aランクの魔物が住み着く難易度は上級の場所で()()()起きた。


「くうッ!!」


炎王フレイア


灼熱の業火に身を包む幻馬の幻想種の王。

ランクSS級のユニークモンスター。


エリス達は依頼でイズカルドに特殊なポーションを作るための霊草を採取しに来た。


頂上に着いたとき目の前にいたのが100年に1度出るか出ないか定かではないこのモンスターだったのだ。


(・・・まずいッ!)


仲間はフレイアの初撃で瀕死状態。

確かに目の前の敵は圧倒的な強さだ。

しかし、Aランクの地位にありながらこの体たらくに、自然と舌打ちが出てしまいそうになる。


辛うじてクルセイダーのエリスは自己の防御力とスキルで自分と仲間を守っている。


しかし


(・・打つ手がない)


攻撃と防御が最強クラスのクルセイダーでも倒れている仲間を守りながら攻撃のスキルを使う隙は炎王は与えてくれない。


このまま数分後には仲間共々灰になるだけだろう。


そう考えていた矢先・・


「珍しい、フレイアが出てる」


背後からのんびりした声が聞こえた。


見ると黒に紫に呪術的な模様を施したコートに身を包んだ男が立っていた。頭はフードを被っていて分からないが声は男性。男性にしては小柄だった。


「だ、誰か分からぬが逃げろ!無駄死にするだけだぞ!」


エリスは必死に叫ぶが


「え、嫌です」


そして男は顎に手をあて、ぶつぶつ喋りながら

「フレイアが、出ているってことは何時もの霊草より上質な霊草が手に入るか・・。よし、日頃の行いだな!」


全くこちらの意図を介してくれなかった。


「な、何を言っている!状況が分からないのか?!今、私がスキルを使っているから攻撃がこちら側に届いていないだけで突破されたら終わるんだぞ!」


「あ。すみません、失礼しました。ちょっとフレイア見てビックリしてて自分の世界でした。えへへ」


手で頭を掻きながら場違いなことを言っている。


「分かった!早く逃げろ!出来れば倒れている私のチームのメンバーを誰でもいいから連れて行ってくれると助かる!早く、早く連れて逃げてくれ!」


「あー、瀕死ですね皆さん」


というと男は

「とりあえず、回復してこのフィールドにいなければフレイアと戦い易くなりますね」


空間に手を突っ込みポーションを、取り出した。


「え?」


エリスは驚いた。

空間からアイテムを出す。

つまり空間魔法かアイテムボックス。

どちらにしても一般の冒険者ではお目に掛からないものだ。

「では、ぶわーっと」


そのまま男は倒れた仲間にポーションを庭の水まきのように振りかけると仲間はみるみるうちに傷が癒されていく。


「あとは荒業で申し訳ないのですが、えいッ」


手から魔力が迸る。


「ふえ?!」


エリスの目の前から仲間が消えたのだった。

「き、貴様!皆をどうした‼」

「あー、安心してください。国の近くの街道に送りました。あそこなら誰かしら通ると思いますので保護されますよ。あとは貴女ですね、えい」


男がポーションを、エリスにかける。

「う、あッ!」


エリスの傷が瞬く間に回復し、魔力も回復していく。


「貴女は頑張ったと思いますのでエリクシルにしてみました。えへへ。これ良い香りですし体も元気になりましたか?」


な、なんなんだこの男は・・・。

仲間を回復してくれたと思ったら、魔法で仲間を飛ばし、そしてエリクシル?とかいう凄いポーションで私を回復してくれるし・・・。


エリスは緊急事態でありながらも、男から受けた事に対してフレイア以上の衝撃をうけ、思わず男を凝視する。


その時


「あ」


男がエリスの背後に目を向けて


「始まっちゃたかー」


と発言して


頂上の周りが赤い結界に囲まれた。


「な、なんだこれは!?」


エリスはこの現象に思わず男に掴み掛かった。それでも何故かフードはずれないのであるが。

「あー、落ち着いて下さい。これはフレイアが戦闘モードに移行してしまったので、この頂上から出られなくなってしまったんですよー。その証拠がこの結界ですねー。ちなみにこの結界はフレイアを倒すか私達が死ぬかで解除されます。ちなみにさっきの逃げるためのスキルは無効になります。」


つまり、生きるか死ぬか。


エリスは目を大きく見開き、掴んでいた男のコートを手放した。そして背後のフレイアをみる。


さっきまでの赤い業火に身を包んでいた体は今や、青い業火になっている。


これがフレイアの戦闘モード。


それを見たエリスがフレイアを見ながら話し掛ける。


「・・・そうだったのか。すまない事をした。どうあれ私のせいで貴方を巻き込んでしまった。勝てるかどうかで言えば多分勝てないだろう。ただ、もしかしたら私が死ねばフレイアは結界を解除してくれるかもしれない。先に私が仕掛けるから貴方は何時でも逃げれるようにしていてくれ。本当にに済まなかった。」


エリスは男に向かって言い放つ。


笑ってしまう。自分が死ねばこの結界は解除されるかもしれないという甘い考え。そしてそれを男に言えば自分の罪悪感が少しだけ軽くなった自分の心に。


「だから貴方はいまか「大丈夫ですよ?そんなに無理はしなくても」ふへ?」


男が自分の隣に立つ。


「貴方は私の後ろにいてください。僕がやります」


その発言に思わず隣の男の胸ぐらを掴む。


「な、何を言っている!確かに魔法の腕は凄いだろうが相手は炎王フレイアだぞ!貴方一人で太刀打ちができるわけなッ」


男は胸ぐらを掴んでいるエリスの腕を掴み、エリスの顔に自分の顔を近づけながらフードを取り、優しく微笑みかけた。


「まぁまぁ」


すると。


ドンッッ


男からとんでもない魔力の奔流と黒やら紫やら禍々しいオーラが迸る。


男はそのままエリスを背後に放りなげた。


「ーーッ!!?」


フードを取った男は国では珍しい黒髪で童顔といえば童顔に見えた。しかし瞳は人間とは思えないような赤色。そして眼には紋章のようなものが浮かんでいた。後から思えばこの目が幼いような顔立ちをガラリと変える不思議な印象があった。


エリスはずざーっと体を地面に投げ出されたが、受け身をとりながら体勢を建て直し男とその先にいるフレイアを見据える。

その瞬間、男がこちらを見ずに指を鳴らしたと思うと、エリスの周りに淡い蒼い結界が発生した。


「それは、あらゆる外敵から守る結界で万能です。その代わり僕が解除しない限りは対象者はその結界から出られないので。ゆっくりそこで見てて下さい」


そういうと男は空間に手を突っこんだ。


すると男の周りの空間が歪みだす。


「起きてくださーい、デネちゃーん」


男の目の前に炎王フレイアよりもさらに()()()()()がゆっくりと出てきた。


炎王フレイアは目の前のモンスターを見て後ずさる。

エリスは目を見開き


(なんだあれは!?)

おとぎ話に出てくるような魔龍、龍のようで龍でない禍々しさを醸し出している。


デネちゃんと呼ばれたものを炎王フレイアは見て、明らかに狼狽していた。


このデネちゃん、正式名称はデネブ。

この世界には存在しない魔龍である。


デネブはフレイアを見据えると雄叫びを上げた。


それはこの霊峰が崩れ去るのではないかという雄叫び。それだけで炎王フレイアは後ろに吹き飛ばされた。

エリスもあまりの咆哮に耳を塞ぎ、涙目で目を瞑る。


「あー、デネちゃん」


男はデネブを撫でながら横に立つ。

フレイアはもう、生まれたての小鹿のように足をガクガクさせながら立ち上がろうとする。


その目には凛々しさなどは無く、ただただ恐怖を感じていた。


「デネちゃん、ちょこっとあの子を説得して。消滅しなければやり方は任せるから」


そういうとデネブの口に桁違いの魔力が集まり始める。

男は指を鳴らし


「お疲れ様でした」


デネブの口から魔力の奔流というなのビームがフレイアを貫き、貫通し、赤い結界すらも破壊してそのまま天を貫いた。


ビームを受けた、フレイアは倒れて体からはプスプスと音が出るように焦げているが辛うじて生きていた。


「よし!」


男はフレイアに近づき、空間から分厚い本を取りだした。


「よし、登録」


するとフレイアは煙と共に消えた。

後には赤い指輪が残された。

そして辺りはフレイアが出てくる前の頂上に戻った。


「デネちゃん偉い。今回はしっかり魔力を天に向けたね!昔みたいに地上に向けてないのは良いことだよね!そのまま天界の堅物どもに当たればいいのに・・・。」


なでなで


男はデネブを撫でながら嬉しそうにしている。


デネブも誉められたことが嬉しいのか、巨体を頑張って男に擦り付けている。


エリスは今の光景を呆然としながら見ている他なかった。


ーーーーーーーー


その後、デネブが空間の中に戻り男は霊草を採取した。

ニコニコしながらやった上質だーとか叫んでいた。


エリスはペタッとあひる座りでボーッと男を見ていた。


今まで生きていた中で一番の衝撃を受けたからだ。


炎王フレイア、男、魔龍?


それよりも一番は


守られてしまった。


エリスは今まで守られた事など無かったのだ。

幼少より鍛練を行い、常に先陣を切って闘い続けてきた。

同世代の中でも群を抜いて強かった。

その自信が今の自分の力と地位があると自負していた。

もちろん自分が最強だとか、そういった驕りは一切持っていないが私が皆を守る側の人間だと思っていた。


だから なすがままに助けられ、エリスは守られるなど、こんなこと無かったのだ。


「・・・・・」


ボーッと霊草を採取している男を見ていると男は満足したのかニコニコしながらエリスに歩み寄った。


「あー先程は投げ飛ばして申し訳ございませんでした。ちょっと緊急事態だったのでついバーッとやってしまって。えへへ」


頭を掻きながら男は座っているエリスの前に座り、スッと何かを取り出した。


「こちらが多分、貴女のお目当ての霊草です。僕は自分の分を採取しましたので、こちらを受け取って下さい。あともうひとつが・・・」


懐からごそごそして赤い指輪を取り出した。

「さっき倒した炎王フレイアの指輪です。僕はデネちゃんがいるので使わないですし、指輪の中のフレイアはデネちゃんが怖くて怖くて仕方ないのか貴女と契約しますと訴えていたのでどうか貴女がお使い下さい。あ、あと今回の事は二人の内緒ですよ?バレると面倒なので」


「・・・・・・」


エリスは男の話を聞いているのか聞いていないのか、顔をぽーっとさせている。


「・・・・・・??どうしました?」


男は目の前のエリスの顔をサッサと手を振っていると


「エリスだ」


エリスはガッとその手を掴んで詰め寄る。


男はビクッとして後ろに後ずさる。が手を捕まれているので離れられない。


「貴方のお名前を教えてくれ!」

「いえ、名乗る程の者では「教えてくれ!!!!」」


男はエリスのがっつき具合にビクッとなり、鬼気迫る表情を見て、サーっと何か不穏な空気を感じていた。


目の前のエリスは顔を赤くしながら涙目でちょっとよだれが垂れている。その顔は悦が入っている。


「えと、すみません、あの」


「この指輪は私との婚約か!?いいぞ!私はお前の為なら何でもするぞ!ええい!いいか、国に戻ったら役所に婚姻届けだ!大丈夫!会ってすぐだが時間は関係無い!私はこの拾われた命をお前に捧げよう!お前好みの女になろうではないか!クルセイダーに誓って!」


エリスは今まで戦いの時は先陣を務め、仲間に指示を出し

、仲間の矛と盾となる生き方をしていた。

それが今日全てが覆った結果・・・ときめきを知ってしまったのだ。


「 」


男は目が点になっていた。


「よし!まずはハネムーンだが東の国のリゾートを「えい」」

男はそのままエリスを仲間の下に送ったのであった。

ーーーーーー

その後。


エリスが転移された場所は国の近くの街道。そこには意識を取り戻した仲間がいた。

エリスを見て駆け寄ろうとしたが、突然エリスの手に持つ指輪が光り炎王フレイアが現れた。

仲間達は自分達をボロボロにしたフレイアを見て腰を抜かしたがエリスがとっさに仲間の前に立ちフレイアと対峙した。

するとフレイアはフンっと鼻息を吐きエリスの前に座り、巨大な頭をエリスに擦りつけ始めた。

不思議と炎に包まれている筈の頭なのにエリスは一切熱さを感じず、おずおずと頭を撫でた。するとフレイアは満足したのか、光を放ち、頭に乗る大きさになりエリスの頭の上に移動して寝息を立て始めた。


それを見た仲間達は「エリスが炎王フレイアを従えた!!!」と騒ぎ、それは数日後には国中に広がってしまった。

エリスは終始、勘違いだと述べたがフレイアを従えている姿を見て誰も信じてもらえず、そのままSランク冒険者に昇進した。


円卓の騎士は時の人達となり、そのままSランクパーティーになるかと思われた。

しかし、フレイアを従えた1月後あろうことかエリスが所属ギルドに「移籍申し込み」を申請した。

これには円卓の騎士のメンバーもギルドも大いに慌て、エリスを説得したが、この申し込みは最終的に受理されてしまった。

ギルドは冒険者を束縛をする権利は無く(依頼成功の報酬を冒険者よりも多目に手にしている為)、泣く泣く受理するしかなかった。


そして円卓のメンバーは大いに慌て、怒り、懇願した。フレイアがいてこそパーティーは強かったが、フレイアがいなければBランクに落ちる程の危機感があったからだ。説得をし始めた時に、エリスの頭上のフレイアが威圧をし始め、結局円卓のメンバーは何もする事は出来なかった。


エリスは済まないと思いながらも、移籍申し込みをする1ヶ月の間に各個人の長所と短所、どのような鍛練を詰めば強くなるのかを書いた鍛練書を置き土産として残した。


円卓のメンバーは最終的には納得し「これで自分達が強くなればまた円卓に戻ってきてくれ!」と円卓の部屋を出ていくエリスに向かって叫んだ。


エリスは最高の笑顔で


「それはない♪」


と返し、扉を閉めて出ていった。


----------


エリスさんのストーキング凄いなー。


ハーデスは今日も薬草を取りに国を出て近くの森を探索していた。


後方にはバレていると知っているのか、知っていないのか定かでは無いがエリスが完全武装でストーキングしていた。

その左手の薬指にはフレイアの指輪が。

フレイアはハーデスの近くに行くと、ビビって指輪に戻ってしまう。


「おーい、ハーデス君!この薬草はどうだね??」


一緒に来ているダンドがハーデスに聞いてくる。


「あー、これはですね。。」


ダンドもハーデスがお気に入りで、彼の依頼が無い日は大体ついてくる。


そして、エリスもこの後「偶然だな、旦那様!一緒に薬草を探そうか!」と明らかにありえない偶然を装おって現れるだろう。


ハーデスの飽きない日常が今日も平常運行してるのであった。

作者の妄想話。

でも美人にストーキングってちょっと憧れますよね。

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