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闇競売②



 闇競売が行われる大広間――。

 天井が高く、品物が出品される舞台より外に向かって扇状に椅子が並び、後方になるほど見やすく床が高くなっていた。

 この場で、希少な物から珍品な物まで競売にかけられる。もちろん違法と呼ばれる物ばかりだ。会場には、すでに多数の乗客が集まり歓談(かんだん)していた。


 会場に入る前に、身体検査があった。エレナは太股にナイフを隠し持っていたが、お(とが)めなし。検査員は気付いていたはずなのだが、見て見ぬふり――これが意味することは一つ。

 主催者側にとって、問題が起きることは大歓迎なのだ。金だけ奪い、商品を回収。無論、問題さえ起こさなければどんな輩でも取引できる。


 エレナは辺りを見渡しながら眉を寄せた。そして、会場の中腹辺りで椅子に腰をおろす。


 不味いなーー。

悪魔の目(イビルアイ)』が出品されても、この面子で競り勝つのは厳しいかもしれない。


 そうエレナに思わせるほど、闇の世界では有名な人物がちらほらと目についた。

 生身の『悪魔の目(イビルアイ)』が出品されるという情報。今回はかなり信頼できる筋からの情報な上に、この顔ぶれともなると期待が否応なしに高まる。


「エレナ姐さーん!」

 別行動をとっていたクロムが会場へと集まってくる人波を掻き分け、エレナに駆け寄ってきた。


「クロム……あまり船内をうろつくなと言ってあるだろう?」

 軽く苛つきながら、顔をあげるエレナ。



「わかってますよっ! ただあまりにも上物の客ばかりで、金目の物なんかちょいと拝借しようかと……って、痛いっスよ!」

 下品に笑いながら喋るクロムを見て、思わず手を出してしまうエレナ。


「姐さん! 急に何するんスかっ!」


「何も糞もあるかっ!」


「糞だなんて下品っスよ。ぐえっ……」

 鳩尾にエレナの右拳が埋まり、クロムの身体がくの字に曲がった。


 息ができないクロムに向かってエレナが口を開く。


「いいか? 何度も言うがこれから始まる競売で、生身の『悪魔の目(イビルアイ)』が売りに出されるという情報を手に入れたからこそ、私はこんなくだらない集まりに参加しているんだぞ?」


「『悪魔の目(イビルアイ)』ねぇ。前回も無駄足だったし、今回も無駄足にならなければいいんスけど……」


「だからこそ――だ。今回ガセじゃなかった場合に、おまえが問題を起こしていたら面倒だろ?」


「すいやせん……」


 消沈(しょうちん)とするクロム。

 そして次の瞬間、エレナに向きなおる。


「でも本当に出品されたら、オレら盗賊なんだし、掻っ攫っちゃえばいいじゃないスか!」


「ばかっ……! 声がでかいっ」

 エレナの右拳が、今度はクロムの頭を襲う。


 そう、私達は盗賊だ。それも一級の盗賊団である『ノルン』の団員だ。乗船する前に身分は隠すように言ってあるのに、本当にこいつは頭のできが悪い。エレナは心の中で舌打ちしながら、目を吊り上げた。



「す、すいやせん……」

 頭を押さえて、更に消沈としたクロム。その姿をみて高揚してるエレナはサド。本人にも自覚はある。

 この一部始終を見ていた乗客達は、不審げに二人の茶番を(うかが)っていた。


「くそっ……クロムが騒ぐから悪目立(わるめだ)ちしてしまったな。まあ、いざとなったら私らしく暴れるだけだがな。だが、掻っ攫う……か」エレナは同意の表情を顔に浮かべて、言葉を続ける。「それは最後の手段。金で済むならそれがいい。だろ? 無駄に危険を犯す必要はないさ」


「そうっスね。それに盗んだ金っスしね!」


「そういうことだ。それに無駄に騒ぎを起こしたくない理由もある。今までのもそうだったが、競売に参加しているのは私的な理由で、お(かしら)には内緒なんだ」


「そうなんスか? てっきり、お頭が『悪魔の目(イビルアイ)』を欲しがってるのかと思ってたっス」


「お前が勝手についてきているだけで、説明はしていなかったからな」


「およよっ! もしかして魔力を持った『悪魔の目(イビルアイ)』を捜してるとか? でも、あんなのはお伽話じゃないんスか? 姐さん、さっき言っていたじゃないスか」


「そうだな。そんなのはお伽話の中だけだ。仮に、魔力を持った『悪魔の目(イビルアイ)』を手に入れたら、売りになんか出さないだろう? そもそも、私は魔力だのなんだのに興味はない」

 ここで話は終わりとばかりに、エレナは右手をクロムに振った。

 その瞬間、辺りが暗くなり壇上に照明が灯る。

 開始の時間だ。

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