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白の無才  作者: kuroro
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第76話「夏休みについて(42)」

勉強会当日——



今朝は目覚めが良かった。


目覚まし時計が鳴る10分前に目が覚め、2度寝をすることなくベッドから起き上がることができた。


昨晩、自動で電源が切れるようにセットしておいた冷房のタイマーは既に切れており、部屋の中は少しばかりの熱気で満たされ、気がつけば着ているTシャツが汗ばんでいた。




今日はうちで勉強会もとい、課題未終了組の手伝いが行われることになっている。


昨日の夕方頃に、チャットを送った朝霧と榊原から連絡があった。


2人ともこの勉強会に参加するということだった。


どうやら俺の予想通り、朝霧も未だに課題が終わっていないらしく、秀一が俺に連絡して来たのとほぼ同じタイミングで、朝霧も榊原に助けを求めていたらしい。



そういうわけで、今日は4人で急遽勉強会を開くこととなった。



俺はリモコンで部屋の冷房をつけると、そのまま部屋を出てリビングへ向かった。


そして簡単な朝食を済ませると、体の汗を流すために軽くシャワーを浴び、服を着替えて3人が家に来るまで部屋にこもって残りの課題に手をつけることにした。



昼前には3人ともうちに来ることになっているため、それまでに出来れば課題を終わらせておきたい。


今日のメインは秀一と朝霧の課題をできる限り進めること。


それに専念するためにも、3人が来る前に俺も全ての課題を終わらせておく必要がある。



と言っても、あとはこのページの答え合わせをするだけなのだが。



俺はシャープペンシルから三色ボールペンに持ち替え、テキストに付属している解答・解説の冊子を開くと、テンポよく丸つけを始めた。



シャッ シャッと、リズミカルに赤丸がつけられていくのが堪らなく心地いい。


時折、チェックマークを入れるところもあるが、それはしっかりと解説を読み、赤ペンで答えを書き写す。



そういった作業が小1時間程続き、ようやく全ての答え合わせが終わった。


そして、学校から出された全ての夏休み課題が無事終了した。



「終わった……」



俺は安堵の溜息と共にグッと背伸びをし、達成感包まれるような感覚に陥った。



壁に掛けられているアナログ時計に目をやると、短針はもうすぐ10時に差し掛かるというところだった。



「そろそろか」



そう呟くと同時に玄関のインターホンが鳴り響いた。



俺は部屋を出て階段を駆け下りると、玄関の鍵を開け、扉を開いた。


すると外から、カラッと乾いた爽やかな夏の空気と陽射しが家の中に入り込んで来た。



「よっ、悠!」


「おう」


玄関の前にはグレーの半袖にカーキ色の短パン姿の秀一と、水色のオフショルダートップスにショートパンツ姿の朝霧、白のスキッパーシャツに紺のロングスカート姿の榊原が立っていた。



「おはよー、羽島!……羽島の家って、ここら辺にあったんだねー」


「そういえば、朝霧はうちに来たことなかったな」



朝霧とは中学時代から仲の良い方ではあったが、家が近所でも、互いの家に行き来するような関係でも無かったため、今まで家に呼んだことは一度もなかった。



そんな朝霧は「はぇ〜」だの「ほぇ〜」だのと声を発しながら、家の外観を眺めている。


別にジロジロと眺められるほど立派な家でもないんだが。



そんなどこにでもあるようなごく普通の2階建て住宅を、物珍しげに眺める朝霧の隣に立つ榊原が口を開く。



「おはよう、羽島君。……今日は頑張りましょうね!」


「あぁ。俺たちも気合い入れる必要があるな」



榊原は胸の前で小さくガッツポーズをする。


なんだか、課題未終了組の2人よりも気合いが入っている気がするのは気のせいだろうか。



「それじゃあ、まぁ、中入れよ」


俺は玄関の扉を大きく開き、外にいる3人を家の中に招き入れた。



3人は「おじゃましまーす」と声を揃えて玄関に入ると、靴を脱ぎ、家に上がった。



家に上がった3人を俺はダイニングルームへと案内する。



「あれ?悠の部屋でするんじゃないの?」


秀一が首を傾げて尋ねて来た。



「最初は俺の部屋で勉強会するつもりだったんだが、あいにく4人で使えるようなテーブルが部屋に無かったもんでな」


「なるほどなー。そういうことなら仕方ないか」


納得した様子の秀一はそそくさとダイニングテーブルに持ってきた荷物を置き、イスに腰掛ける。



「そういえば、今日はご両親、留守にしてるの?」


「あぁ。今日も仕事らしい」


「あら、大変ね」


「大人に夏休みはないからな」



ダイニングルームをぐるっと見回し、家に両親の姿がないことに疑問を覚えた榊原の問いかけに答える。


休日でも御構い無しに仕事が入るなんて、考えただけでも嫌気がさす。


そういった現実を知るたびに、早く大人になりたいと思う反面、ずっと子供のままでいたいとも思ってしまう。



「あれ?そういえば羽島、妹ちゃんいたよね?妹ちゃんも出かけてるの?」


俺と榊原の会話に耳を傾けていた朝霧が口を開く。



「あぁ、由紀は部活の友達と街まで遊びに出かけてる。昨日で夏休み中の部活は終了したらしく、残りの夏休みは遊びまくるんだそうだ」


「いいなぁ……私ももっと遊んでいたい……」


「課題が無事に終われば、可能なんじゃないか?」


暗い顔をする朝霧を鼓舞する意味を込めて、言葉をかける。



「……よし!今日中に出来るだけ進める!そして残りの夏休み、思いっきり満喫する!」


「その意気だ。秀一も気合い入れろよ」



テーブルに持ってきたテキストを並べる秀一に声をかける。



「おう!……莉緒、頑張ろうぜ!」


「うん!」




そうして朝霧は秀一の向かい側に、榊原は朝霧の隣に座り、俺は秀一の隣に腰掛けた。



「それじゃあ、始めるか」


「そうね。2人とも、頑張りましょうね」


俺の掛け声に合わせて榊原が2人に激励の言葉を送る。


2人はそれに答えるように返事をすると、右手にシャープペンシルを持って、それぞれテキストを開きだした。





こうして、夏休み中本当に最後のイベント、『真夏の勉強会』がスタートしたのだった——















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