プロローグ
四月。毎年、春を迎えると高校三年のあの年の事を思い出す。
暖かい気候が続く中、桃色に染まった桜が風と共に散ってゆく。
あの日誓った約束を果たすため、久々に戻って来た地元だが、昔と変わらない風景に安堵を漏らした。
桜の木々に覆われた道を進むと、上着のポケットからスマートフォンが鳴った。
上着からスマートフォンを取り出し、確認すると、ディスプレイに【着信 彩音】と表示されていた。
彩音からの久々の着信に心を弾ませ、俺は電話に出た。
「もしもし」
『もしもし…久しぶり。何年振りだっけ?』
「確か高校卒業以来だから2年振り。 そっちはもう着いた?」
『今着いたところ。 待ち合わせ場所は、高校の校門前だったよね』
「うん、そう。俺も、もうすぐで着くから」
『わかった。じゃ…あとで』
会話を終え、通話を終了すると、自動的に待ち受け画面に切り替った。
スマートフォンをスリープモードにし、上着のポケットに戻すと、桜の木々に覆われた道をあとにした。
待ち合わせをしている場所に着くと、彩音が俺の方を見ていた。
艶のある綺麗な銀髪は、胸部まで伸びていて、パッチリとした二重まぶたの下の瞳に、俺が映し出されていた。
「約束…憶えてる?」
昔と変わらない表情に心が揺らいでいると、彩音が頬を赤らめ、小さな声で訊いた。
「忘れるわけない、ちゃんと憶えてるよ」
俺は、堂々と言うと校舎に目を移し、あの年の事を思い出す。