鮮血ずきん
ある街に周りから赤ずきんと呼ばれる、金髪碧眼の美しい少女がいました。少女はその美しさから男女種族問わず人気でした。
満面の笑顔を浮かべれば全員が見惚れる。
泣けば全員が心配する。
怒れば全員が怒ってくれる。
ある日の朝。
「お友達と遊ぶ約束しているかもしれないけど、おばあちゃんのところにお見舞いに行ってくれる?」
彼女の母親が彼女にお願いしました。
「お見舞い? どうして?」
「おばあちゃんがね。体調不良で寝込んでいるのよ。ホントはあたしが行かないといけないのだけど、あいにく今日は仕事なのよ」
「うん。わかった」
彼女は父親が昔に何者かに殺されて、母子家庭のため母親が休みをほぼ取らずに働いています。そのおかげで自分が生活できていることを知っている、彼女は快く引き受けました。
彼女が体を売ればお金には困らないけど、母親はそうならないように必死です。
「森の中には恐ろしい怪物がいるから気をつけてね」
「うん」
彼女の祖母は家は近くの森の中にあります。祖父との思い出の場所らしく、祖母は街に来ようとほぼしていません。
彼女はお気に入りの赤いフード付きのマントを着て、母親から受け取った、リンゴが入っているカゴを片手に森の中に入って行きました。
森の中はとても暗くて今にも何か出てきそうです。そんな場所なのに彼女は迷いなく前へ進んで行きます。
すると、道中にとても綺麗な花が咲いていました。そこで彼女は花を摘み、カゴの中に入れました。
少し進むと一つの家が見えてきました。そこが彼女の祖母の家です。
「おばあちゃん。大丈夫?」
彼女は扉を開けて、家の中に入りました。入ると盛り上がっている布団が目に入りました。
「おばあちゃん。起きてる?」
「赤ずきん?」
「うん。そうよ」
「そうかいそうかい。こっちへおいで」
「…………」
「どうしたんだい?」
しゃがれた声で彼女を呼ぶが、彼女は反応しません。そんな彼女の反応が不思議に思ったのか、しゃがれた声で聞いてきます。
「あなた……誰?」
「ワシは赤ずきんのおばあちゃんだよ」
「ううん、違う」
「どうしてそう思うんだい?」
「だって、おばあちゃんはわたしが来たら逃げるもの」
「……えっ?」
「わたしが用はあるのはおばあちゃんだけなんだよ。あなたには用はない」
「クククク。クハハハハ!! まさか孫娘から逃げる祖母がいるなんてな。さぁ、赤ずきん。今から、お前はどうなるか知っているか?」
しゃがれた声から、低くてハッキリとした声に変わりました。相手はとても祖母になりすましていた、とても大きなオオカミだったのです。
「どうなるのかしら?」
「今からオレ様の子供を孕むことになる!」
オオカミの言葉を聞いた瞬間に赤ずきんは口に手を当て、驚いた表情を浮かべる。
「まぁ! 獣姦なんて汚らわしい」
「へへ。そう言えるのも今のうちだ。すぐに気持ちよくなるさ」
オオカミはノソノソと赤ずきんに近づいていきます。そんなオオカミに彼女は一切物怖じしません。
「わたし、もう快楽に溺れてしまっているの!」
彼女は頬を手を当てながら、クネクネと体をうねらせています。
オオカミは勘違いして、彼女に近づこうとします。でも、できませんでした。なぜなら、オオカミの足はすでになかったからです。
赤ずきんの手には血塗られた鉈が握られていました。
赤ずきんは鉈についた血を舐めて、ぺっとすぐに吐き捨てました。
「獣の血ってまずーい。それならまだ、人間の方が需要があるよ」
「お、お前……何者だ?」
「何者って、みんな大好き。鮮血ずきんだよ!」
「ううう、嘘だ! お前があの赤ずきんなわけ」
「あぁーもう。うるさい!」
鮮血ずきんはオオカミの首に鉈を振り下ろしました。すると、首が吹き飛び、血が彼女の頬につきます。その血を汚らわしそうに拭いました。
「はぁぁ。オモチャもいなくなったしどうしようかな?」
ガタッ!
「うーん」
背後から物音が聞こえたので、そちらを見ました。すると、そこには猟師がいました。猟師は鮮血ずきんと目が合うと逃げ出しました。猟銃を置いて。
「待ってくださいよ!」
その猟銃を使い、彼女は猟師の足を撃ちます。片足だけではなく両足に撃ちます。猟師はその場で倒れ込みました。だけど、彼女の体だと彼は運べません。そのため鮮血ずきんは自ら、猟師に近づきます。
「ジッとしてくださいよ。そうしたら、わたしの子供を作らせてあげます」
「ヤダ! こっちに来ないでくれ!」
「まぁ、いいでしょう。あなたがおじさんですからね。もし、わたしに近い年齢でしたら、拒否されてもさせましたけど」
猟師は鮮血ずきんの言葉を聞き助かると思いました。しかし、世界はそんなに甘くないです。
「でしたら、もう用はないです!」
そう言ったかと思うと祖母の家に入っていきました。しかし、すぐに出てきました。その手には鉈が握られています。彼女は抵抗できない猟師の首に向かい、鉈を振り下ろしました。それで猟師の首は吹き飛びます。血も、もちろん吹き出します。鮮血ずきんはそれを浴びました。しかし、彼女は赤いフードを被っています。服も赤いです。
そのため彼女に付着した血は目立ちません。彼女は鉈を遠くに投げました。
十数分に彼女は自宅に帰りました。
「あら? おかえりなさい。早かったわね」
「お、おばあちゃんと猟師さんが何者かの手によって殺されてたよ!」
「っ!?」
彼女は涙を浮かべて母に訴えました。
そのあと母親と自警団の人が祖母の家に向かいました。そこには凄惨な光景が広がっていたと言われます。凶器の鉈が見つかりました。でも、この世界にはまだ指紋は犯罪の役に立ちません。
鮮血ずきん──赤ずきんは成長しても、猟奇殺人を繰り返しました。結局、捕まることはありませんでしたとさ。
めでたし(?)めでたし(?)