『ゼウスの鎚』
「まぁ、そんなことは置いといて、これからどうするかだな。
例えば上層界の誰かがセイを邪魔だと思って、排除しようとしているならその理由は、セイが穏健派で人間を擁護する側であることを疎ましく思っているからだとも思えるな。
ミナモ、他に何かあるか?」
ムラクモさんは真剣な顔に戻って言った。
「セイの個人的な力を恐れているのかもしれません。
天の一族が共通して、天候を操れるのにプラスでセイは特に太陽の力を最も引き出すことができました。
それに、封印されているとはいえ、セイは『ゼウスの鎚』を持ってます。
二つの力が合わされば、上層界を破滅させることもできると考えた者がいたとしてもおかしくはないと思います。」
「あの…………何度もすみません。
ゼウスハンマーってなんですか?」
僕は申し訳ない思いを抱えながら聞いた。
「初代ゼウスが力を神々に分け与えた話は知ってるかい?」
ムラクモさんに聞かれ、
「前にミナモさんから聞きました。」
「そうか。
その話の続きになるんだが、力を与えられた神々はその中からゼウスの後継者を必要としたが、それぞれに分けられた力の優劣を決めることができずに、すべての神を牽引できるほどの力を求めたんだ。
その結果、神々が与えられた力を一つの神器にコピーすることによって、寄せ集めの『全知全能』の力を作ったんだ。
その神器が『ゼウスの鎚』となったわけだよ。」
ムラクモさんが言い終わると、あとを引き継ぐようにミナモさんが
「ゼウスになった者はゼウスハンマーを継承することで絶大な力を手にする反面、ハンマーに自分の力を半分吸収されてしまう。」
「何でですか?」
「本来なら、後付けの力を受け入れるのに問題はないが、長い年月とたくさんの前ゼウスの力を吸収したハンマーの力が強すぎて力を扱えないため、ゼウスハンマーの力と自分の力を交換することによって、大きすぎる力を制御できるようになるんだ。」
ミナモさんがいい、僕は
「それなら、そのゼウスハンマーを手に入れたい人が今回のことを仕組んでるんじゃないですか?」
「大きすぎる力は、その代償もある。
大きな力に耐え続けるから体に負担がかかり、他の者と比べて寿命がかなり縮んでしまう。
しかも、簡単に奪われないように体の中に保管するから離れることもできないので力の影響を受け続ける。」
ムラクモさんがいい、ミナモさんが何かに気づいたように
「それかもしれないですね……………。
ゼウスハンマーが姿を見せるのは、ゼウスが力を使うときか、あるいはゼウスの交代の儀式である継承式のみです。
今までのゼウスのように健在でありながら、継承式を行うなら奪う隙はないかもしれませんが、セイは封印されているので封印を解いて強制的にゼウスハンマーを開放するなら、セイも動けないし、不意をつけば奪える可能性が高いですよ。」
「だが、そんなことをして何の意味がある?
ゼウスの力を制御できるのは最低でもゼウス決定戦で決勝まで進んでいる者でなければならないぞ。
それ以外が力を使おうとすれば、身体が耐えられずに爆散するぞ?」
「もう一度反乱を起こすため……………ですか?」
僕が言うと二人とも一瞬凍りついて、ミナモさんが
「今日、この場所にいる者でゼウス決定戦の上位者を調べてきます。
もしも審議が終わったら………………」
ミナモさんが言い終わる前に僕の身体は光に包まれ元の法廷のような場所に戻されてしまった。




