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神様ゲーム -天罰を下すのは-  作者: TAKEMITI
ゼウス決定戦
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『決勝戦 シンキングタイム』

正午になり、僕の体を光が包んだ。

 あまりの眩しさに閉じた目を開くと、三回目になる裁判所を思わせる場所に立っていた。

 神使が目の前に5人と横に対戦者である志士上君がいる。

 これまでとは違い、後ろに傍聴席のようなものができており、見たこともある人から、始めてみる顔まで30人くらいが座っている。

 僕が見回していると、一番前の席で僕に向かって微笑んでいる人が見えた。よく見ようとしたところで、前に座っている神使が

「それでは、これよりゼウス決定戦の決勝戦を行います。」

 僕は前を向いたが、精悍そうな顔にがっしりとした体の男のことが気になった。そんなことは関係ないと言わんばかりに5人の真ん中に座った神使は、

「本日の事案は、決勝戦にともない特別なものとします。

 対象は国際的な犯罪グループの構成員すべてであり、そのすべてがそろう場所と時間を伝えますので、その時間、その場所にいるすべての人間に…………………………死を与えてください。」

 えっ?

 僕は内心だけでなく見た目的にもかなり驚いてしまった。

 人をたくさん殺す天罰を考えること自体がやったこともないし、それは更正の道を断ってしまうことであり、後悔することも何もないままこの世から消してしまうことに他ならない。

 何より、人を大量に殺す天罰は志士上君の得意とするものである。

 事案選びの基準はわからないが片方に有利な事案を選ぶことはさけるべきだと思う。

 そして、そう思ったのは僕だけではなかったようで後ろから大きな声で

「ちょっと待て!

 その事案では、死神一族の者が有利であろう。

 公平性のある事案でなければ、ゼウスという重要な役職を決めるこの場にふさわしくないと思うのだがどうだ?」

 僕が振り返ると先程の精悍な顔の男性だった。5人の神使の中で唯一話すことを認められている中央の神使が

「ムラクモ殿、この場を預かっているのは我々です。

 我々の裁定にはいくら最高神物のあなたであっても、異議を唱えることは許しません。

 見届け人としての役割はこちらとしても受け入れていますが、裁定に関しての異議にはお答えできない。

 例外を認めてしまえば、他の方からの意義にも耳を貸さねばならなくなるからです。

 ご理解頂けましたか?」

 『ムラクモ』と呼ばれた男は難しい顔で頭をかき、

「ああ、悪かった。

 忘れてくれ。」

 男は短く言って席に座った。

 難しい事案であっても天罰は下さなければならない。シンキングタイムに時間制限はないから、ミナモさんとの約束通り、時間をかけてゆっくりと考えようと思った。

 真ん中の神使が

「それでは両者に場所と時間をお伝えします。

 それではシンキングタイムを始めてください。」

 僕と志士上君の間にしきりが出てきて、目の前に机も現れた。机の上には天罰の記入用紙と小さなメモが置いてある。

 メモを手に取ると『一週間後の18時、◯◯埠頭の廃倉庫』と書かれていた。場所的には海の近くであり、浜風を吹かせることも、一週間もあれば台風を発生させて、直撃させても不審に思われることはないだろう。

 廃倉庫なのだから建物自体にガタが来ていることも予想できるから暴風や高波等で倒壊する可能性は十分にある。

 雷や竜巻でも方法はいくらでもある気がするが、例えば風で建物が倒壊しても、そこにいるすべての人を殺すことは難しいと思われる。

 雷が落ちて火災が発生しても全員を殺せるのかはわからない。

 僕の能力では直接的に人を殺すことは難しい。だからと言って志士上君も大量に人を殺すことができないと言っていたような気がする。

 何より、僕は全員を殺さなければいけないとは思わない。

 犯罪グループの主犯格が生きていると、その犯罪に巻き込まれる人のことを考えれば、殺した方がいいのかもしれないが、最下層の構成員が犯罪グループの全てを知っているのかというのにも疑問が残る。

 自分の能力の底がまだわからない僕には、今回の事案を要求通りにこなすことは難しかった。

 考えた結果、天罰の内容は『竜巻が集まっている場所に直撃して、建物が倒壊し主犯格は確実に倒れた建物で死ぬ』とした。

 やはり死ぬべき人間がいるのも理解できる一方で、死ななくてもいい人間もいる気がした僕の些細な抵抗であり、これで勝てなくても良いと思えるような事案だった。

 僕はミナモさんとの約束を守るために考えているフリをしていたが、真ん中の神使の人にはそんなこともわかっているだろうと思って見ると、真顔でどこか遠くを見つめているように見えた。

 責めてこないということは、なにか理由があるのかもしれないと思ったが、さすがに周りがザワつきだしたので、紙に記入して、提出用の箱に入れた。真ん中の神使が

「それでは両者の天罰が出揃いましたので、これより審議を始めます。今回は両者の接触を禁止するために個別に控え室を用意しています。それでは移動させます」

 神使が言い終えると光が僕を包み、ソファー等が置かれた部屋へと移動した。

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