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神様ゲーム -天罰を下すのは-  作者: TAKEMITI
ゼウス決定戦
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『家族の絆』

 僕は葬式に出ていた。

 女の子の笑顔の写真の前で泣き崩れる家族の姿が見える。隣に立った母が

「優輝ちゃんは死んでないって、教えてあげたら?」

「もう会えないことに変わりはないんだよ?

 死んでなくても、悲しいことに変わりはないよ。」

 僕が言うと母は笑って

「星のお葬式は盛大にやってあげるね。」

「何も知らない人が聞いたら、かなり不謹慎な会話してると思うよ。」

「そうだね、でもこれから星は飾られる側になって、私は泣く側になるんだよね。」

 母はそう言って目を伏せた。優輝ちゃんのお葬式が行われていることが指すことは簡単だった。二回戦で志士上君と戦って負けたのだ。

 家族と一緒にいたいと願っていたあの娘は、家族にお別れを言っていたのだろうか?

 自分が神様になるからもうすぐいなくなるなんて、伝えても理解はされないのだろうな。

 その点で言うと母は全部をわかっているから葬式なんてしないと思っていた。僕に家族として見送られるだけのことを母にしてあげることはできたのだろうか?

 そんなことを考えているとおばさんが歩いてきて、

「ごめんなさいね、急なことだったのに来てもらって。」

「気にしないでください、義姉さん。

 お疲れなんじゃないですか?何かお手伝いしましょうか?」

「大丈夫よ。」

 おばさんは無理矢理作った笑顔で去っていった。おばさんとすれ違っておじさんが来て、母に向かって

「星を少し借りるぞ。」

 母は驚いた顔をしたが、黙って頷いた。

おじさんはこっちに来いと言わんばかりに手招きして歩き出した。


 葬式会場から出て、人のいないところまで来た。正直に言うと、僕はおじさんが苦手だった。おじいちゃんに顔が似ているところもそうだが雰囲気も似ていたからだ。

 おじさんは僕の方を向くと

「俺は………………親父の話なんて真面目に聞く気がなかった。頑固なくせにたまに夢見がちなことも言う。

 いつも俺じゃない俺を見て説教をしてくる親父にうんざりもしてた。でも、心に引っ掛かってる話がある。子供の頃に聞いた神様の話だ。」

 僕は何となく、おじさんの言いたいことがわかった気がして、

「優輝ちゃんは……………死んでないですよ。」

「星のお父さんの顔が思い出せなかったんだ。

 妹は、お前の母親は他所でかってに子供を作ってくるようなタイプじゃなかったし、そんな子供ならあの親父が産ませるはずもなかった。

 そう考えてみると、いつも笑いながら俺の悩みを聞いてくれた人がいたなと思った。妹と腕を組んで楽しそうに笑ってる男は年下のはずなのに俺よりずっと大人だった。

 ハルはこの世にいて、そして、消えてしまったんだろうな、俺や世間の人達の中から。

 そんなことに気がつかないなんて、まさに神業なんだろうな。

 つまり、ハルが消えたのと、優輝が急に死んだのは同じことなんだろ?」

「はい……………………」

 僕はどこから説明するべきなのかわからずにしばらく黙って考えているとおじさんが

「星は色々と知ってるんだよな?」

「あ、はい。でも、何から話せばいいのか…………」

「いいよ。俺は…………………優輝が元気でいられるならそれで良いんだ。

それに、お前が知ってるってことは、お前も同じようにいなくなるってことなんだろ?」

「そうですね………………」

 僕はどう言うべきかわからなかった。奴隷のように働かされるだけの世界に行ってしまったとは今は言えない。

おじさんが

「あれだろ、神様ゲームが引き金だったんだろ?」

「おじさんは知ってるんですか?」

「俺も2・3回くらいやったからな。

  でも、バカらしくなってやめたんだ。

俺は誰かに罰を与えられるような人間なのかって思ったら、不器用で人付き合いも苦手で、子供達にも愛情を伝えられてるのかもわからないようなそんな人間がなに上から罰とか下してんだって思ってな。

 今から思えば、あのまま続けてたら、あそこの写真は優輝じゃなくて、俺だったのかもしれないよな。

 そうだった方が良かったんじゃないかなとかな………………」

 おじさんは涙を流して泣いている。

「そんなことないですよ。どっちがいなくなっても、残った人が悲しんだのは変わらないと思います。」

「でも、友達もたくさんいたし、これから恋愛したり、気に入らないけど結婚したり、子供を産んで育てたり、そんな人としての楽しいこととか辛いこととかも経験させたかったじゃないか。」

 おじさんは本当に優輝ちゃんを愛していたのだと思う。少し親バカなことも言っているが、それが不器用なおじさんなりの愛情表現なのだと思う。

 優輝ちゃんが家族とずっと一緒にいたいと言っていた意味がわかったような気がした。

「優輝ちゃんが言ってましたよ。

 家族と少しでも長く一緒にいたいから勝ち続けてるんだって。

 おじさんの愛情は絶対に優輝ちゃんに届いてたんですよ。

 おじさんがいなくなっても優輝ちゃんもおばさんもおじさんみたいに泣いてたんだと思いますよ。」

 僕はそう言って笑って見せた。僕の励ましなんて何の役にもたたないかもしれない。でも、伝えておきたかった言葉でもあった。

 優輝ちゃんが一緒にご飯を食べていたあのときずっと家族の話をしていたことから、優輝ちゃんは本当に家族が大好きだったのだから。

おじさんはフッと笑って

「お前の笑顔はハルに似てるよ。

なんか心が暖かくなるようなそんな笑顔だ。

 星、優輝にあったら伝えてくれ。」

「何てですか?」

「父さんはお前をいつまでも愛してる。

 辛くても、離れていても家族の絆は消えないし、いつでもお前と繋がってるからって。」

 おじさんはそう言って照れくさそうに笑った。

 おじいちゃんも笑ったらこんな顔だった。知らないうちに家族は繋がっていて、言わなくても色々と伝わってて、そして、一緒に笑ってるうちに笑い方も似てくるのだろうと思った。

 僕が避けていて見えていなかっただけで僕ら家族は繋がっていたのだと実感した。

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