『天罰』
ボヤッとした霧の中を歩いていた。
ああ、これは夢だなと思ったところで、霧は晴れていき、見たことない人とその人の子供らしき男の子がいた。男の子が
「ねぇ、お父さん。」
「どうしたんだい?」
「お父さんは人間に天罰を下すお仕事をしてるんだよね?」
お父さんは複雑な顔をしてから笑顔で
「そうだよ。それがどうかしたのかい?」
「ナミちゃんっていう娘がね、天罰を下すのは神様の身勝手だって言ってたよ。本当にそうなの?」
「ナギ、神様は人間を導くために存在しているんだ。
ナギが悪いことをしたら、お父さんやお母さんが叱るように、人間が悪いことをしたら、それを叱る必要がある。
人間同士で解決できる問題なら、神様が不用意に手を出すべきじゃないかも知れないけど、人間同士で解決できない問題なら強い力を使ってでも問題は解決されないといけない。
そうしないと新たな争いが起きて多くの人が死ぬことになってしまう。
でもね、ナギ。
勘違いしてはいけないよ、人間を導く立場にいるからと言って、神様が偉いわけじゃない。神様は人間に信じてもらえるからこそ力が発揮できるんだ。
そんなこともわからず力を乱暴に使ってしまう人達がいるのも確かで、そんな人達の天罰は身勝手なものに見えるかもしれないね。」
「でも、お父さん。
導く側の神様が基準を勝手に決めてるんだよね?
それなら、人間からしたら勝手に決められたルールで天罰を下されるんだからやっぱり身勝手なんじゃないかな?」
「………………ナギ、君は本当に頭の良い子だね。
そうだね、勝手に決めたルールに無理矢理に従わせているんだから、神様の身勝手かもしれない。
これから何百年・何千年と経った時、人間達にも導く立場に立つものが現れるかもしれない。
子が親の真似をして生きることがあるように、人間も神と同じことをするようになるかもしれない。
身勝手なルールを決めたり、力を乱暴に使ったり、導く立場に立ったことで偉そうにしたり。
天罰はもしかしたら人間に悪影響を及ぼすだけなのかもしれない。
でも、今の段階で道を外れようとしている人間に何もしなければ、未来の人間は外れた道を進み続けてしまうことのなる。
お父さんやお父さんの仲間の仕事は未来の人間を導くことにあるのかもしれないね。」
「でも、生きていることは誰かの邪魔になることの連続だよ?
それに天罰を下しても、意味なんてないんじゃないの?」
「ナギ、目標がいくら遠くても歩き出さずに諦めてはいけないよ。
お父さんが下した天罰が人間の未来を明るいものにできたのかはお父さんにはわからないけど、歩き出さなければ、動き出さなければ、考え続けなければ目標にはたどり着けないよ。
継続は力なり。お父さんや仲間の力は微力かも知れないけど、それが続いていけば、いつか大きな力になって人間を正しい方向に導いてくれるよ。」
「僕もお父さんみたいに天罰を下す仕事をするよ。
それでお父さん達の始めたことをずっと続けていくね。」
お父さんはナギ少年の頭を撫でて、ニコリと笑い、
「自分の信じた道を進みなさい。
誰に反対されても、自分が護りたいものと人のため生きれば良いんだよ。
ところでさっき言った『ナミ』ちゃんって、もしかして……………」
お父さんが言いかけたところで、子供の声が聞こえ、
「ナギ君、遊ぼー」
「うん、今いく。」
ナギ少年は走っていった。お父さんはナギ少年の走っていく方向をみた。5.6人の子供の中に黒髪のかわいい女の子がいる。
お父さんはため息をついて
「ナギとナミか。
彼らがこの先も仲良くいれれば良いのだろうけどな。」
僕はベッドから起き上がった、今のは夢か?
それとも…………………
あの少年とあの少女はもしかしたら………………
色々と思い当たるところがあったが、どれも確証はなく、僕はまた夢の中に戻っていった。




