『本選二回戦 ジャッジタイム』
ウツセミさんは、僕と地井さんを交互に見てから、
「それでは、今回の事案に対する審議の結果を発表します。
勝者は天野星。
理由は、天罰を下す対象を限定していたからです。
地井陸道の天罰はA国全体に被害をもたらし、それに対して国際協力を得て復興をさせることによって、国際協力の重要性を理解させると言うものでした。
大震災による被害は多くの命と財産を奪い、利になることなど何もありません。
傷を負うことによって人は学ぶこともありますが、A国を動かしていた政治家の意識が国民の復興最優先になるとは思えません。
その点、天野星の天罰は神の能力の使い方は拙いにしても、国家元首を再帰不能にすることによって、国家の政治に改革のきっかけを与えました。
どちらの天罰も効果の確実性には疑問が残りますが、犠牲者が少ない方が良いというのが我らの共通意見です。
何かご意見はありますか?地井陸道?」
「犠牲者の数で決まったというのが少し納得いかないな。
別に負けたことに文句を言うつもりはないけどあんたらの基準が曖昧なんじゃないのか?」
「我々も神である以前は人間でした。
神になったからと言っていつも正しい判断ができる訳ではありません。我らも悩み、惑い、そして人間にとっての最善が何かを考えた上で出した答えだと受け入れていただくしかないですね。」
ウツセミさんはこんなにも堂々と話すことができたのかと僕が驚いていると地井さんが
「俺はどれくらいの地位になるんだ?」
「3位決定戦を行いますので、それによっても変わると思いますが、上級神の中でも高位に就くことは間違いないと思います。」
「そうか、まぁなんだ、天野君。
頑張ってな。」
地井さんはそう言って光に包まれた。ウツセミさんが
「それでは、天野星、決勝戦は志士上と星河の両者の勝者とになります。しばらく時間があきますので、自分の能力を磨いたり、自分がゼウスになる理由などしっかりと考えといてください。
あなたにとって、厳しい戦いになることは目に見えているのですから。」
ウツセミさんが今までとは別人のように見えた。眩しい光に目を閉じて、目を開けると自分の部屋に戻っていた。
色んなことを知ることができたが、結局、僕が何のためにゼウスになりたいのかがはっきりした訳でもなく、志士上に対抗する力を持てた自信がついたわけでもなく、いとこの優輝と戦えるのかという不安もぬぐい去ることはできなかった。
僕が手にした勝利に意味があったのかと自問しながら静かに目を閉じた。




