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神様ゲーム -天罰を下すのは-  作者: TAKEMITI
ゼウス決定戦
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『本選二回戦 ブレークタイム』

志士上君やミナモさんの話からすると、同じ部屋で二人きりになっている地井さんは僕を、というより僕の一族を目の敵にしているらしいので、少し気まずい雰囲気を感じていた。

「おい!」

 急に話しかけられ、ヤバイかなと思いおそるおそる地井さんの方を見る。地井さんは鋭い目でこちらを見ていた。

 真剣にヤバイかなと思ったところで、地井さんが

「まぁ、そう緊張するなよ。

 地井陸道だ。挨拶もなしに対戦が始まったからな。」

「あっ、そ、そうですね、天野星です。」

「で、あんたの雰囲気から俺について色々と聞いてそうだが、どの辺まで知ってるんだ?」

「あなたの一族と僕の一族になにか昔あったくらいの話までです。」

「へぇー、その程度なんだな。

 親に聞いたりとかはないのか?」

「母はあまり神の世界と関係のない人でしたし、父は僕が小さい頃にいなくなってしまったので。」

「ああ、今のゼウスなんだったな、お前の親父は。」

「知ってるんですか?」

「うちの家では、ゼウス決定戦が起こる度に記録を作ってる。

 ゼウスになれた人がいたなんて記録はなかったから所詮はその程度の一族なんだろうと俺は思ってるんだよ。」

「地井さんは2つの一族にどんな因縁があるかを知ってるんですか?」

「因縁ねぇー、俺からしたら2つの一族の関係は俺ら側の一方的な逆恨みでしかないと思うよ。」

 地井さんはあきれた感じで言った。

「どういうことですか?」

「元を正せば、日本で一番偉い神を決めるときに遡るらしい。

 今の日本の最高神は天照大神で、日本には多くの『天』がつく神がいる。天照は、太陽神と崇められるように太陽の力を最大限に発揮して天候を操ることができるらしい。

 その天照と最高神を争ったのが俺らの先祖の『地母神』だ。

 空の神と大地の神、両者はどこまで行っても交わることのない存在だった。結局、天照が勝ち最高神になったが、ここから因縁は始まったらしい。空は大地を見下しているなんて文句をつけてな。

 空が上で大地が下なのは変わらない関係なんだから仕方ないだろって俺は思ってるけどな。」

「その因縁だけで今もなんですか?」

 僕は信じられずに聞くと、地井さんも笑いながら

「馬鹿馬鹿しいよな。他にも色々とあるが、天照と地母の対立が子孫に続いたのは両方とも女だったからってのもあるかもしれないな。

 嫉妬深い関係だったんじゃないか。

それに、両者が争い始めた最大の要因は別にあるしな。」

「何があったんですか?」

「天野君はイザナギとイザナミを知ってるか?」

「名前くらいは聞いたことあります。」

 僕が答えると地井さんは面白そうに

「実はイザナギとイザナミは二人ずついたんだよ。

 日本を作った本物のイザナギとイザナミ、そして天野と地野の戦いを生んだイザナギとイザナミ。

 イザナギは天の父、イザナミは大地の母という別称がある。

天野の一族の優秀で将来は天照の本家に入ることも期待されていた息子と、地野の一族で地母神の再来と言われた優秀で美人な娘、この二人が恋に落ち、そして人間界へと駆け落ちをした。

 一族にとって期待されていた二人がいなくなったことと、因縁ある一族間の出来事だったこともあって、両一族の間で責任のなすりつけあいが始まり、戦争になった。

 そして、当時の天照大神によって両一族は神の世界から追放され人間になった。

神の力を封印されてな。

天野の一族は、親族である天照の怒りを受けて反省し、この件を後世に残すことを嫌い伝承することをしなかったが、地野一族は嫌っていた天照大神からの理不尽な処断に怒り、憎み、天照に復讐するために後世に伝承を残すことにした。

 これが俺らの一族の因縁だよ。

 どうだ?くだらないだろ?」

「地井さんはなんのためにこのゼウス決定戦に参加したんですか?」

「…………ああ、そういうことか。

 大丈夫だよ、天野へ危害を加えるつもりも、天照に復讐するためにでもないから。

 強いて言うなら、あのくそみたいな家からいなくなるためかな。

 神でもないのに人を見下し、力もないのに他者を威圧する。

 見事に天罰を受けるべき奴等だと俺は思うよ。」

地井さんは恐怖を感じるほどの顔をしていた。そして先程までの顔に戻って、

「今を生きてる地野一族はみんな神になれなかった落ちこぼれの集まりなんだよ。

 それなのに下らない伝承のせいで、無駄にプライドばかり高くてなんの意味もないんだ。

 子孫を残さないといけないからと16の時には結婚相手を決められ、少しでも多く候補者を出すために経済状況なんて無視してたくさん子供を作らされる。

 自由な恋愛も、子供の将来を夢見ることも許されず、ただひたすら一族のために生きるなんてカスみたいだと思わないか?

 色んな人を傷つけて、なんの功績もあげられていない地野一族こそ滅ぶべきだと俺は思ってるよ。」

「もしかしてゼウスになったら………………」

 僕がおそるおそる聞くと地井さんは笑いながら

「一族を消したりはしないよ。

 俺の妻も子供だっているんだ、できることなら俺の代でゼウスになって後の家族には、ゼウスも神のことも全部忘れて、人間として普通に生きて欲しいと思ってるよ。」

「そうですか……………」

 僕は内心ほっとしながら呟いた。地井さんが

「じゃあ、天野君は何のためにゼウスになりたいんだ?」

「志士上君がゼウスになると、人類全滅の可能性があるんです。母やバイト先の友人とか死なせたくない人がたくさんいますし、ゼウスになれたらもしかしたら……………」

 僕が言いかけたところで体が光り、地井さんが

「どうやら結論が出たみたいだな。まぁどっちが勝っても恨みっこなしってことで」

 地井さんの言葉が終わる少し前に光が強くなり、もとの場所に戻った。

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