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神様ゲーム -天罰を下すのは-  作者: TAKEMITI
ゼウス決定戦
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『星河源三』

星河源三、享年84歳。天野星の祖父であった男。

 第二次世界対戦にも兵隊として参加。終戦後は自動車関係の仕事につき、結婚して二人の子供を授かる。

 それが僕の知っているおじいちゃんだった。いとこの『星河優輝』が今回のゼウス決定戦に参加していた驚きが僕を打ちのめしている間にも、母がした話とミナモさんの話の矛盾が解けていく気がした。

『私もおじいちゃんも知ってたの。』、『神は人間の世界からいなくなればその存在はなかったことになる。』、二人の言葉はおかしかったのだと今になって思う。

 母がミナモさんに記憶を消されなかったからお父さんのことを覚えているのは何となく理解できていたが、あれほど父親はいないと言い張っていたおじいちゃんまでもお父さんのことを知っていたというのは納得できなかった。

 だが、その答えは『星河』の一族がゼウス決定戦に出ていることと、前回のゼウス決定戦が第二次世界大戦の時に行われていたことから導かれていく気がした。

「おじいちゃんも前回のゼウス決定戦に出てた人なの?」

 僕の問いに母は黙って頷いた。そして、

「おじいちゃんはね、ハルさんやミナモさん達と同じ部隊にいたの。

その部隊は、ゼウス決定戦の候補者が数人集められていて、その中で隊長と副隊長が本選に出場できるルールだったの。

 ハルさんが隊長で、ミナモさんが副隊長で二人が本選に進んだあとも、おじいちゃんは戦争で戦い続けたんだって。」

「おじいちゃんは、神様ではなかったの?」

「今回のゼウス決定戦がどういうルールかは知らないけど、神様になれたのは部隊の二人ずつでそれ以上はなれなかったらしいよ。」

 僕が不思議そうにしていると、女性の神使が

「前回のゼウス決定戦の後、私たちの世界では大きな反乱があったんです。

 人の神と純粋種の神による戦いで、多くの人の神が消されたので人手不足になり、それの補充のために多くの候補者を神にすることになったみたいです。」

「反乱?」

母が聞き、女性の神使が、

「純粋種の神達による、奴隷的な扱いに反発して改善を求めた人達がいました。最初は現ゼウスも静観されていたのですが、次第に反発は激化して、このまま行けば反発している人達の命が危ないと思われたゼウスは仲裁に入ろうとされました。

 残念ながら、上手くは行かず、結果として多くの人の神が消されてしまいました。

 それにも抗議を続けたゼウスは、次第に純粋種の神達と険悪な状態になりました。

 そして、ある日、ゼウスはいなくなりました。

暗殺されたとか色々と憶測が流れ、そしてゼウスは…………」

「人間界で人に恋して、家族と幸せに暮らして、囚われの身になった。」

 僕が言ったことに、女性の神使は頷いた。

「ハルさんは、人間界に来たとき、行くあてがなくてうちに来たの。

おじいちゃんがハルさんを見てとっても驚いてたのを覚えてるわ。」

 母が言い、僕が

「おじいちゃんは、なんで僕にお父さんがいないって言い続けたの?」

「例えば、学校で『僕のお父さんは神様です。』って言ってる人がいたら周りはどんな反応をすると思う?」

「なんだこいつってなるよ。

 あるいは頭のおかしいやつだ……………そういうことか。」

 いじめられたり、友達がいなくなったりするだろうし、子供が理解できずに口走ったことが取り返しのつかないことになることは今なら簡単に理解できた。その様子を見て母が

「あとは、あれかな。

 次のゼウス決定戦があることも予想できてたから、関わらせたくなかったのかも知れないね」

「僕………………おじいちゃんにひどいことしたよね?」

「不器用な人だったからね。

 周りの人みんなに好かれるような人ではなかったからね。

心配はしてたかもしれないけど、ひどいことをされたなんて思ってなかったと思うよ。」

 母はそう言って笑った。


 母と別れて歩きながら考えていた。

おじいちゃんは神様になりたかったのだろうか?

お父さんが現れたときうれしかったのだろうか?

自分の娘とお父さんが恋をしていると知ったときの気持ちは?

僕が生まれたときは?

 僕が苦手だからと避けてしまった人は、きっと僕にとって重要な存在だったのだろう。

 どっちつかずで、逃げてばかりいる僕を行くべきところに導いてくれる存在だったのかもしれない。

 お父さんがいないものだと受け入れていたら、僕は今の悩みを抱くことがあったのだろうか?

 あの時こうしていれば、ああしていればと思っても無駄なことはわかっている。

 でも、自分の選択に対して、その是非を問い続けることがこれから天罰を下し続ける僕には必要な気がする。

 僕は空を見上げて誰にも聞こえないような小さな声で

「おじいちゃんはすごいな。」と言った。

 その頬には涙が流れていた。

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