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神様ゲーム -天罰を下すのは-  作者: TAKEMITI
ゼウス決定戦
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『本選一回戦 ジャッジタイム』

 目を開くと裁判所のようなところに戻っていた。

 あの言葉がもしも戻すから準備をしろという意味だったなら、もう少し間を開ける必要があっただろう。あのタイミングなら飲み物を飲んでいればその状態でここに現れただろうし、物を食べていてもどうようになっただろう。そんなことを考えていると真ん中の神使が

「何か不満でも?」

「いえ。」

 僕はそう答えたが、もしかしたらあの神使は自分達の考えているのがわかったのかもしれない。

 天罰案を紙に書いた直後に投函用の箱が現れたのにも、神使の能力が関係していると考えると納得できた。

「それでは、結果を発表する前に今後の説明から行います。

 対戦結果次第であなた方が人間でいられる時間が変わるのだと理解してください。

 勝者は、この対戦後も人として生活できます。

ですが、敗者となった場合、その時点から神の世界の来ていただくことになります。

 つまり、人間界では敗者は事故死したことになります。

場合によっては、存在したこと自体をなかったことにされる場合もあります。」

 鉄井さんが手をあげ

「すみません、存在を消される場合ってどんな場合ですか?」

「人間界において実績を残し、必要不可欠な人間である場合、もしくは不正を行い勝利しようとした場合です。

 まぁ、あなた方にはどちらも当てはまりませんから心配する必要はありません。どちらが負けても事故死です。」

 僕は複雑な気持ちになった。僕は必要な人間ではないと言い切られてしまったこともだが、人間界に必要でなくても、必要としてくれる人はいるのではないかと思ったからだ。

 (かれら)の基準で必要と不必要に分けられるような人生を僕は、鉄井さんは送ってきた訳ではないと思う。

「あなた方の人生の価値を我々が判断するわけではない。

 別にあなた方がどんな人間かを話し合って、決めているわけでもないし、特に目立った行為がなければ可もなく不可もないと判断をしているだけだ。理解しましたか、天野星?」

「僕らの心が読めるんですか?」

「カンニング防止とでもいうのか、不正を働かさないため、監視権限が五人のなかで一人にだけ付与される。

 今回は私にその権限があった、それだけの話です。

他に何もなければ進行を続けます。よろしいですか?」

 神使は僕と鉄井さんを順に見てから頷いて

「それでは、先ほどの続きです。

 敗者は、神の世界に来ていただき、今後のための研修を始めてもらいます。本選に出場している時点であなた方は既に上級神ですから、仕事内容は会社でいうところの部長クラスだと思ってください。

 下級神に対して命令を行う立場ですので、色々と覚えてもらう必要があります。

 今後、勝ち進んでいくに連れて、仕事内容もゼウスを社長とするなら階級も上がっていくものだと思ってください。

 あと、これはあなた方、候補者がわかりやすいように例えているだけで、実際はもっと厳しい違いがあるものだと思ってください。」

 神使は、手元の紙に目を落としてから、

「それでは、勝者の発表です。

 勝者は天野星。

理由は、天罰対象者を特定できない中で、その対象者自体の行いに対して天罰が下せているところにあります。

 鉄井武彦の天罰では、その発言の軽重に関わらず、人を傷つけてしまう発言をしたコメンテーター及びその周囲にいた人に危害が及びます。

 一件なら騒ぎになりますが、不運な事故と処理されるでしょう。

しかし、今回の事案の場合、対象者は多数になる可能性があります。

 不運な事故も連続で多数起これば、それは何かしらの意図を持った誰かの工作であると考えられるでしょう。

 神の下した天罰だなどと誰が考えますか?

 そういう意味でそこから派生する問題が多く、適切ではないと判断しました。

 鉄井武彦が今後、天罰を下していくには、まず天罰が下されるのは身から出た錆が原因であり、それを改善するような天罰の行使を心がける必要があるでしょう。」

「はい、わかりました。」

 鉄井さんは真面目な顔でそう答えて、僕の方に向かって

「じゃあ、先に逝ってますよ。

 頑張ってくださいね、人類の未来は天野さんに託された。

なんてね。」

 鉄井さんは冗談ぽくそう言って笑って光に包まれてその姿が見えなくなった。

「それでは、天野星。

 また、二回戦があるまで人間界にいてもらいます。

あなたの事故死も突然訪れるでしょうから、お別れを言いたい人がいれば済ましておくことを推奨します。」

 神使の言葉に返そうとしたが、光に包まれ、そして佐藤くんの目の前に戻っていた。

 僕はあたりを見回し、佐藤君が

「どうかしたんですか?」

「えっ、いや、今のは、そのちょっとなんて説明したらいいのか………」

「落ち着いてくださいよ、話してたら急にあたりを見回したから、何かあったのかなくらいのことでしょ?

 なんでそんなに慌ててるんですか?」

「えっ?ああそうだね。」

 どうやら僕が光に包まれるところを見る前の時間軸に戻されたのか、佐藤君はいたって普通に転送される前にしていた雑談に戻った。

 いつもの日常に戻れたことの安堵と嬉しさを感じたがバイト終わりにニュースで鉄井武彦さんが自動車に轢かれて亡くなったというニュースが流れていたので、今日の対戦で負けていたらこのニュースは僕の名前だったのだと思うとゾッとした。

 そして、いつかは僕の名前がニュースになる日が来るのだと思うと恐怖と寂しさを感じざるを得なかった。

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