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神様ゲーム -天罰を下すのは-  作者: TAKEMITI
ゼウス決定戦
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『本選一回戦 シンキングタイム』

説明会から3日経ってもいつもと変わらない生活が続いていた。

 だが、その時は突然に訪れた。バイト中に佐藤君と雑談をしているときだった。僕の体を光が包み、佐藤君の驚いた顔が見えた次の瞬間、裁判の法廷を思わせる場所が目の前に広がった。

 目の前には証言台のような物が、正面には裁判官のように5人の神使が並んでいる。横を見ると僕と同じように戸惑った感じの男の人がいた。5人の神使の中で真ん中に座っていた神使が

「それでは予選5位天野星と予選8位鉄井武彦の対戦を始めます。

 説明会でも言われたと思いますが、天罰を下す事案は人間界に多大な影響を及ぼすことを心得てください。

 事案発表後、天罰の内容を考えていただき、出来上がったら紙に書いて提出してください。

 検討を行っている間は控え室に移動して待機してください。

 それでは事案を発表します。


case1ー4

マスメディアと呼ばれる情報媒体の発達により、多くの情報がテレビ、新聞、雑誌、インターネットで伝えられるようになってきました。

 その中で特にテレビによって伝わる情報は信用度が高く、テレビでやっていた情報だから、という理由で何の考察もなく信じる人も多い。

 今回の対象は、情報番組において無責任なコメントを行う、コメンテーターと呼ばれる人達です。

 自分の専門分野に関して意見をしたり、わかりやすく解説できる人も見受けられます。

 しかし中には、世間に対しての反発や文句を言うだけで真実でもない憶測で制度や人物を批判するだけになっている者もいます。

 問題提起を行うのは番組の制作者であり、コメンテーターは視聴者に答え、あるいは視聴者が自ら答えを出すためのヒントを与えるのが役目なのであり、更なる問題提起を行うこと自体が間違っています。

 あなたならこのような人達にどのような天罰を下しますか?

 なお、天罰を下すうえで自分の力を必ずしも使う必要はありません。何度も言いますが、人間界に多大な影響を及ぼすことがあるので、天罰の内容はしっかりと精査してください。

 それではシンキングタイムです。」

 神使の言葉とともに衝立のような物が現れ、対戦相手の姿が見えなくなった。そして目の前に机が現れ、紙とペンが置かれている。

 天罰の内容を考えたら紙で提出と言っていたのがこれなのだろう。


 まず、自分がテレビを見ていて思ったことから判断するべきだろうと思った。テレビを見ていても、その内容が本当に正しいのかはわからない。不適切な内容や表現があった場合は、番組が謝罪することもあるしBPOが判断して是正や訂正を求めることがあるが、そうなってみないと視聴者には間違った内容や不適切だったかの判断も難しいのではないかと思われる。

 たまに過激な発言をして注目を集める社会学者や芸能人がいることも確かで、自分を売り込むためには仕方のない商法なのかもしれない。

 ただ、それがポジティブなニュースであれば問題ないが、犯罪や政治の問題、社会・国際問題になってくれば話は違ってくる。

 悲しい思いや辛い思いをしている人達がいるなかで、自分のためにその様な人達を攻撃するような発言をしてはいけない。

 自分の専門分野についての見解を述べることも仕事なのだから必要だし、そのためにテレビに出演しているのだから文句を言われる筋合いがないと考えるのも普通の事だろう。

 だが、専門知識にはすべての専門家が共通認識としている事とその人が独自に解釈している事があるということも伝えなくてはいけない。

 政治に改革派と保守派があり、さらに中道的な立場の者がいるように一括りに『専門家』としてはいけないと思われる。

 それに司会者から話を振られたからと言って自分のわからないことに発言するときは、あまりわからないことを伝えた上で、『私見ですが』の一言を入れてから話すべきだろう。

 人は万能ではなく、何もかもを知っている人など存在しないのだから。


ここで迷うのがどんな天罰を下せば、自分の発言に責任を持てるような人ばかりになるのかということである。

 予選の時のように『その人』が特定されていれば、個別に対応できたかもしれないが、誰かもわからない状態で天罰を下すとなると難しい気がする。


天罰案1

 不適切な発言を繰り返すコメンテーターの、人には知られてはいけない情報が表に出てテレビに出れなくなる。

 テレビ等のメディアと関われなくなれば、その人の発言で傷ついたり、苦しんだりする人はいなくなるだろうという考えからである。


天罰案2 

 コメントが失言・暴言だと判断されて、テレビに出れなくなる。

天罰案1と同じ理由からである。


天罰案3

 出演予定日に悪天候で交通網がマヒして、出演時間に間に合わなくなる。

 本人の問題ではなく、天候が悪くてテレビ局に行けなかったとすれば、そのコメンテーターにも非がなく、同時にテレビにも出さなくて済むと思ったが、交通網をマヒさせると他の人にも迷惑がかかるから、ダメだなと思い、天罰案3は即却下とした。


 天罰案1と天罰案2で迷ったが、天罰案1は違う意味で、その人に注目が集まってしまい、メディアにたいする露出は減るどころか増えてしまう可能性もあるので、天罰案2を紙に書いた。

 すると目の前に箱が現れ、『投函用』と書かれていた。

 僕は天罰を書いた紙を箱に入れた。次の瞬間、僕と対戦者の間にあった衝立がなくなり、先ほど話していた神使が

「それでは両者の天罰案の提出を確認しましたので、これから我々は審査に入ります。

 対戦者の両者は、我々が審査をしている間は別室で待機していただきます。

 何か質問はありますか?」

 神使の問いかけに対戦相手の鉄井という人が

「審査にはどれくらい時間がかかるんですか?」

 神使はめんどくさそうに

「あなた方の考えた天罰の質によります。

 両者の天罰案が優れていて甲乙つけがたければ長時間かかりますし、どちらもクズ過ぎればそれはそれで時間がかかります。

 どちらか一方のマシな方を選ぶだけであればそんなに時間はかかりません。

 天野星、君はなにかあるか?」

 僕に話が振られたが、特になかったので「ありません。」と答えた。

神使は黙って頷いてから、

「よろしい。

 それでは二人を移動させます。

 会話は自由ですが、ケンカなどのいざこざを起こせば両者を敗退としますので大人しくしていてください。」

 神使の言葉とともに僕は光に包まれた。


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