『遭遇2』
僕は残り一週間となった辺りから、天罰を下すことをやめ、バイトに行って、終われば町中をふらふらと歩き回る生活を送っていた。
未だにぬぐえない不安とどうすればいいのかわからない焦燥が僕に立ち止まることを許さなかった。
駅前の広場でベンチに座り人の流れを目で追いながら何をするでもなく座っていた。
スーツ姿で電話しながら歩く人、子供と遊びながら歩く人、数人でかたまって話している人達。
楽しそうな人ばかりだなと思っていると若者のグループが騒ぎ出した。スケートボードを取り出して、広場を走り回っている。小さな子供からおじいちゃんやおばあちゃんもいるのに気にすることもなくスピードを出してはしゃいでいる。
周りの奴等もお菓子などを食べてごみをその辺にポイ捨てしたりなどやりたい放題している。
僕が天罰を下すべきかと悩んでいると、僕の横にひとりの人が座り、
「ああいう奴等って、どんな風に育ったんだと思いますか?」
僕は声をかけられると思っていなかったので驚いて声の方を見ると、青白い顔の十代くらいの男の子が座っていた。声は穏やかだったが若者のグループを見る目は憎悪、あるいは嫌悪といった感情のものだった。
「君はこの前の?」
僕はこの子に見覚えがあった。いつだったかは忘れたが、同じように若者のグループにぶつかられていて声をかけた子だ。
「死んだらいいですよね、あいつらは。」
「えっ?いや別にそこまでは思わないけど…………………」
僕が彼の意図を図れずにいると少年は
「若者のグループ、駅の広場でやりたい放題して多くの人に迷惑をかけた、スケボーの奴が車に轢かれて死んで駆け寄った仲間のやつらだけが後続車に轢かれてグループのやつら全員死ぬ。
実行」
少年は別に隠すこともなく言い切った。どこかで聞いたことがある言葉だなと思っていると少年が若者のグループを指差して、
「見逃しますよ。」
僕は少年の指差す先を見ると、スケートボードの奴が車道に飛び出し車に轢かれた。その後も駆け寄った仲間が車に轢かれ、あっという間にグループ全員が車に轢かれてしまった。
駅前の広場は騒然となった。僕が少年を見ると満足そうに笑いながら、「クズはみんな死ねばいいんだよ」と言った。
「君がやったのか?」
「何を不思議に思うことがあるんですか?
あなたは僕がどうやってあいつらを殺したのかを知ってるはずですよね、アマノ セイさん?」
「僕の名前をなんで?」
「神の使いからききました。協力的な補佐役は他の候補者の情報をくれるんですよ。」
「き、君は?」
「僕の名前は志士上 絶です。あなたなら僕の名前を知ってるんじゃないですか?」
「君が…………………シシガミ?」
「そうですよ。
ああ、ここはうるさくなって来たので、場所を変えましょうか。
僕はあなたと話してみたかったんです。」
そう言ってシシガミは立ち上がり歩き出した。
僕は黙ってその背中を追いかけた。




