『case52 飛び出したヘッド』
バイト終わりの道は、もう真っ暗で見通しも悪くなっていた。
車の通りは帰宅するためなのかとても多いように感じる。だが、一ヶ所で急にテールランプが反対車線の方に動いていくのが見えた。遅い車を追い越しているわけではなく、すべての車が何かを避けるように通っているのだ。
僕が進んでいくと、歩道を遮るように一台の車が止まっていた。人は乗っているし、ライトもついているがウインカーは出ていないようだ。どちらに曲がりたいのかもわからないが、確実に車の前面部分が車道に飛び出している。
先程から車道の車が避けていたのはこの車だったのだ。
僕の歩いている歩道も狭くはないが車が一台停まっていると通るのは難しくなるくらいで、僕が車の近くに行っても動く気配すらない。
僕は後ろに回り込んで、通り抜けたあとで振り返ると運転手は電話をしていた。何やら楽しそうだが、お前が今やるべきことは電話で談笑することではなく、車を動かすことだと僕は思った。
確かに車の通りは多いが決して入ることができないほどでもないし、何より指示機も出さずに停まっている車にどう対応していいのか車で走っている運転手が即座に判断できるものではないので、みんな仕方なく避けているのだ。
大きな道で大型トラック等も通るのに、それを避けるために反対車線にふくらむのはとても危ない。
その原因である車の持ち主はそんなことも一切考えていないのだろう。車のハンドルから完全に手を離している。
僕は天罰を下すことにして、
・天罰対象
男性
・行為
車を車道にはみ出させた状態で放置する。
・天罰内容
雷が車に落ちて車が故障する。
僕は『実行』と心の中で思って歩き出した。
僕は思ってもいなかった。
今日は晴れていて雲もないきれいな星空だったのに、僕の真後ろで轟音と共に閃光が落ちた。
振り返ると、車から黒い煙が立ち上ぼり、赤い炎が上がりはじめた。
運転手は慌てて車から飛びだし、あたふたと携帯に向かって話している。そんなことをしているうちにも火は燃え広がり、周りを赤々と照らしている。この状態で次に起こることは予想できた。そして僕は大きな声で叫んだ。
「逃げろ!爆発するぞ!」
ガソリンに引火して爆発する可能性を考えていなかったのか、運転手は慌てて走り出したが間に合わなかった。走り出した背中に爆風を受けて運転手が倒れた。僕は様子をうかがいながら、車の近くを走り抜け、倒れた男性に近寄る。
「大丈夫ですか?」
「う………うーん、痛い……………」
「どこが痛いですか?
救急車呼びましょうか?」
「ああ、大丈夫です。すみませんが警察に連絡してもらえますか?
僕は、消防車を呼びますから。」
「…………………………わかりました。」
僕は警察に連絡して、車に急に雷が落ちて車が燃えているとだけ伝えた。僕が雷を落としましたなんて言っても、おそらく僕が頭のおかしいやつだと思われただけだろう。
警察と消防車が来て、運転手だった男性と起こったことを話した。
そして、男性が
「ありがとうございました。
あなたのおかげでこんな嘘みたいな話も信じてもらえましたよ。」
「い、いえ………………………僕は何もできなかったですから……………」
僕が下した天罰が原因でこの人は命が危なかったのに、お礼を言われても素直に受けとることができなかった。
男性はお礼をもう一度言って、事後処理に戻っていった。
僕はそのまま背を向けて静かにその場を離れた。




