誰も知らないゲーム
case5の天罰を下した翌日、飲食店のバイトで、仲のいい友達の佐藤君と休憩時間にゲームの話をしていた。
佐藤君が
「天野さん、最近はまってるゲームなんですか?」
「そうだな、最近は『神様ゲーム』っていうパソコンゲームかな。」
「なんですか、それ?
聞いたこと無いんですけど。」
「あ、そうなの?マイナーなゲームなのかな。
神様になって、迷惑な行為とかしてる人に天罰を下すゲームなんだけど、そのcaseが町中とかでよく見かけるやつでさ。
なかなか面白いよ。
天罰を下したあとに、その天罰についての評価とかもしてくれて、新しい発見みたいなのもあるしね。」
「へえ、なんか面白そうですね。
どこの会社ですか?」
「えっ?ああ、どこだろ。
ゲーム買う時とか、会社で選ばない派だからさ、気にしてなかったよ。」
「えー、気を付けた方がいいですよ。有名じゃない会社のだと、クソゲーだったりしますし、パソコンゲームだったらウイルスとか仕掛けてあるかもしれないですしね。」
「ま、まあそうだね。また確認しとくよ。」
「何々?ゲームの話?」
そう言って、バイト仲間で僕よりひとつ年上の鈴木さんが会話に入ってきた。佐藤君が
「ちょうど良いじゃないですか。
鈴木さんは、『神様ゲーム』っていうゲーム知ってますか?」
「『神様ゲーム』なんて、よくある名前じゃない?
どんなゲーム?」
「神様になって天罰を下すゲームなんですけど。」
僕が言うと鈴木さんは考えてから、
「ごめん、聞いたことないやつだな。」
「そうですか・・・・」
僕ががっかりして言うと、鈴木さんが、
「誰かから紹介してもらったの?」
「いえ、適当に検索してて、でてきたやつなんですけど。」
「じゃあ、スマホからでも検索できるよね。」
鈴木さんはスマホを取り出して、検索しているようだった。
「天野のいうようなゲームは出てこないよ」
「本当ですか?」
「何か問題があって、関連するの全部削除したかもしれないね。」
「そんなー・・・」
僕が言うと佐藤君が、
「じゃあ、今日帰ったらパソコンで探してみますよ。」
「ほんとに?じゃあ僕もそのゲーム写真撮って送るよ。」
「3人共、そろそろ入ってね。」
店長が入ってきて言ったので、僕らは話をやめて、仕事へと向かった。
家に帰ってから、『神様ゲーム』の存在を確認して、佐藤君に写真を送り、ゲーム仲間のコミュニティにアクセスして、
「『神様ゲーム』という、天罰を下すゲームをご存じの方おられますか?」
いつものこの時間なら、何か質問するとすぐに答えが来るのに、2・3分経っても何も返答がなく、それから1分くらいしてから、佐藤君のアカウントから
「調べてみましたけど、どこのサイトにもそのようなゲームはなかったですし、SEIさんと同じゲームをしているという人も見つかりませんでした。」
『SEI』とは僕のアカウント名であり、佐藤君の後にはいつも僕の質問に直ぐ答えてくれる人たちが、「同上」と答えてきた。僕は先ほど撮った写真をアップして、
「このゲームですが、本当にわかりませんか?」
「新作ゲームのテスターなのかもしれないですよ。」
「非公開で、テストしてる新作ならお得ですねぇー」
「パッケージ自作ですか?」
等いろいろな反応があった。とりあえず、話題作りのでっち上げを疑われたため、それは否定してからお礼を書き込んで、コミュニティから退室した。
どういうことだろう。かなり仕上がってる感じがあるから、個人的に作られたものではなさそうだし、会社で作られたものだとして、テスターに選ばれたのなら、それなりの通知があるはずなのに、このゲームに関してはそんなものはなかった。
いたって普通に見つけてプレーしているだけだから、特別な感じではなかった気がした。
ただ、非公開でのテスターに選ばれているなら悪い気もしなかったので、今後も続けてみて、発表があったら自慢しようと思って、その日は『神様ゲーム』をせずに休んだ。