『case47 投げられた雪』
記録的な寒波の襲来は、多くの雪を地上にもたらした。
当然のように道には雪が溜まり、雪どけされていない道もたくさんある。少子高齢化の影響もあるかもしれないし、働き方の問題もあるかもしれないが、道で雪をどけている人の多くが高齢者な気がする。
そんなことを考えながら次のバイト先に向かっていた。目の前の歩道の雪をどけてくれている人に時おりお礼を言いながら進んでいると、明らかに不機嫌そうなおじいさんが雪かきをしていた。
僕の目の前を数人の若者が、何か話ながら歩いている。道にはシャーベット状になったものから、降ったばかりの白い雪もあった。
若者達がおじいさんの横を通り抜けようとしたときだった。おじいさんの持っていた雪かきが若者の一人に当たった。
おじいさんは自分が当てたのだから謝ろうとすると当てられた若者が
「何ぶつけてんだよ。だいたい、さっさとどけとけよ、ジジイ。」
そう言って、雪を手ですくいあげておじいさんに向けて投げつけて、そのまま行ってしまった。持ち物からしてどこかに出かけるところのようでかなり大きめの荷物を持っている。
中にはスノボでも入ってそうな大きなものを持っている人もいる。
大学の試験も終ったくらいの時期だから、みんなでスノボ旅行にでもいくところだったのかもしれない。
それでも、おじいさんが一生懸命に雪をどけていて軽く当たったくらいであそこまでする必要はない。
それに頑張ったどけている人がいるからこそ、普段と同じように歩けているのだということをわかっていない。断続的に降る雪ではどけたところから積もっていくのできりがないから、おじいさんはかなり長時間どけ続けてくれているのだと思う。
・対象
スノボ旅行に行く若者
・行為
おじいさんに雪を投げつける。
・天罰内容
スノボーをしようとしたら大雨で一度も滑れなくなる。
僕は『実行』と心のなかで言った。巻き込まれてしまう人もいることには後になって気がついたが、彼らの楽しみを奪うことの方が優先されるべきだと思って、おじいさんに駆け寄った。




